オープンソースの無料3DCGツールとして高度な進化を遂げ続け、いまや有料ソフトにも引けを取らない機能を兼ね備えたBlender。本記事では、モーションデザイナーのニワダイスケさんを講師として迎え、Blenderカメラの基本操作から応用テクニック、After Effectsとの連携、カメラ制御に使えるアドオン紹介など、実践的なカメラワークのノウハウを解説してもらった。

講師 ニワダイスケ Daisuke Niwa

名古屋在住のフリーランスのモーションデザイナー。企業PVなどモーションデザインに特化して制作を行う。業務範囲はディレクションから映像および写真の撮影、編集まで広くカバー。After EffectsやBlenderのプラグインやスクリプトの散財家でもある。Vook school モーショングラフィックスコースのメンターとして後進の育成にも力を入れている。2022年からAdobe Prerelease Advisor、2024年からAdobe Community Expert、2024年8月から定期的にAfter EffectsやBlender、そして映像全般に関するオンラインセミナーを主催している。

X ● https://twitter.com/terje28

YouTube ● https://youtube.com/@MotionDesignStudioJp

Behance ● https://www.behance.net/MotionDesignStudio






Blenderでカメラをコントロールしよう

Blenderのカメラを活用することで After Effectsもより使いやすくなる

ニワダイスケと申します。主に企業のプロモーションに携わりつつ、モーションデザイナー、ビデオグラファーとして活動しています。また、After Effectsのオンラインイベントや「Motion Design Studio」というオンラインセミナーなども主宰しています。Motion Design StudioはAfter EffectsやBlenderの映像に関する内容のセミナーになっておりますので、興味がありましたらぜひともご参加いただければ幸いです。加えて、Vook schoolモーショングラフィックスコースメンター、Adobe Community Expertとしても活動をしています。

今回の記事では、Blenderでのカメラ操作や制御方法、After Effectsとの連携などについて解説していきます。Blenderのカメラを活用することでAfter Effectsもより使いやすくなりますし、基礎的な知識がベースにあることでカメラともより仲良くなれるんじゃないかと考えています。読者の皆さんもこの機会にカメラ制御を怖がらず、ぜひ活用してみてください。



Motion Design Studio

After Effects、Blender、Cinema 4Dなど、さまざまなツールやテクニックを深掘りし、クリエイティブな視点や価値観を共有する場として設計されているオンラインセミナー。月に2〜3回の頻度で、水曜21時から定期的に開催されている。








基礎編

Blenderを使った簡単なカメラワーク

Blenderのカメラ基本操作

BlenderでカメラワークをつけてからAEへ

前提として、After Effectsのカメラ操作ってかなり難しいんですよね。基本的にはヌル(中身のないオブジェクト)をカメラに紐づけて制御を行うというケースが多いんですが、それでも3D空間上の物体に対して、After Effects上で複雑なカメラワークをつけることは容易ではありません。

なので、基本的にはBlenderやCinema 4Dなど、別の3DCGソフトでカメラワークをつけてからAfter Effectsに持っていくという手段を取るほうが格段に楽なんです。そういった背景をもとに、まずはBlenderで行うカメラの基本操作について説明していきます。



オブジェクト・カメラの設置方法






Blenderを起動し、[shift+A]キーでオブジェクトを追加するためのショートカットを表示。[メッシュ]>[モンキー]を選択する。





Blenderの基本モデルである「スザンヌ」のオブジェクトが生成される。





[shift+A]キーを押し、ショートカットから[カメラ]>[カメラ]を選択。カメラを設置する。





[option+command+0]で現在のビューにカメラを移動することができる。





[N]キーを押し、出現したメニューから[ビュー]を選択。[カメラをビューに]の欄にチェックを入れることで、カメラ画角の画面から自由にカメラ位置を動かすことができる。



カメラワークのつけ方



[N]キーを押し、出現したメニューから[アイテム]を選択。[位置]・[回転]欄にカーソルを合わせ、[I]キーを押すことでタイムラインの1フレーム目にカメラの現在位置がキーフレームとして打たれる。





タイムラインから先のフレーム(作例では110フレーム)をクリック。カメラの[位置]・[回転]の値を任意の数値に変更し、[I]キーを押すことでカメラの現在位置が110フレーム目にキーフレームとして打たれる。再生ボタンを押すとカメラワークのついたアニメーションが再生される。






ダミーオブジェクトを使ったカメラの制御

画角から外れないカメラワークが可能に

前述の基本操作でカメラワークをつけていくと、間のフレームでオブジェクトが画角から外れてしまうため別途対処が必要になります。そういった際に便利なのが「ダミーオブジェクトを活用したカメラの制御」です。ダミーオブジェクトを使うことでカメラが常にオブジェクトを捉え、画角から外れないカメラワークが可能となります。



オブジェクトを常にカメラの中心で制御したい際に有効






[shift+A]キーを押し、ショートカットから[ブランク]>[立方体]を選択。ダミーとなる立方体のオブジェクトを生成する。





[shift+D]キーでダミーを複製し、[S]キーで少しだけ拡大。内側と外側のダミーができあがる。





[shift]キーを押しながらカメラと外側のダミーを選択。その状態で[command+P]キーを押し、[オブジェクト(トランスフォーム維持)]を選択。カメラと外側のダミーを紐づける。





[shift]キーを押しながら外側のダミーと内側のダミーを選択。その状態で[command+P]キーを押し、[オブジェクト(トランスフォーム維持)]を選択。外側のダミーと内側のダミーが紐づけられる。



各オブジェクトにキーフレームを打っていく。



外側のダミーオブジェクトの制御



外側のダミーをクリックし、[回転]の欄にカーソルを合わせて[I]キーを押すことで、1フレーム目にキーフレームが打たれる。タイムラインから任意のフレーム(作例では100フレーム目)をクリックし、[回転]のX・Z軸の値を変更。[I]キーを押すことで、100フレーム目にキーフレームが打たれる。



内側のダミーオブジェクトの制御



次に、内側のダミーをクリックし、[回転]の欄にカーソルを合わせて[I]キーを押すことで、1フレーム目にキーフレームが打たれる。タイムラインから100フレーム目をクリックし、[回転]のY軸の値を変更。[I]キーを押すことで100フレーム目にキーフレームが打たれる。



カメラの制御



最後に、カメラをクリックし、[位置]の欄にカーソルを合わせて[I]キーを押すことで、1フレーム目にキーフレームが打たれる。タイムラインから100フレーム目をクリックし、[位置]のY軸の値をマイナスに変更することで引いていくカメラワークをつける。[I]キーを押すことで100フレーム目にキーフレームが打たれる。





オブジェクトがフレームから外れないカメラワークになっていることが分かる。



制御後の動画を見る