レポート●編集部 岡部 撮影●大森聖也
1980年創刊以来初のホラー特集となる「いま、恐怖を映す」と題した特集号『ビデオサロン8月号』を本日発売し、最近、何かとホラー付いているビデオサロン編集部。特集を通じて、映像表現として、ホラーというジャンルの広がりと引力を感じ続け、編集部はますますその深淵な魅力にやられています。
今回は、本特集のウェビナーと誌面にご登壇いただいたテレビ東京の大森時生プロデューサーと、ホラー作家の梨、株式会社闇が企画した展覧会『恐怖心展』のプレス向け内覧会に伺ったので、その様子をレポートします。
“存在”に対する恐怖心
受付を入ると、まずは、「そこにあるもの」が怖いと感じる“存在”に対する恐怖心のエリアに。なんらかの姿・かたちを目に見えるものへの恐怖を題材にした展示が並びます。
そのなかでも、一際インパクトがあっ他のは多様な鋭利なものがこちらを向いている「先端に対する恐怖心」。アクリルに囲われて、安全を担保されているのにも関わらず、こちらに向いているだけで、肌の表面がゾワっとするような感覚に襲われます。


ほかにも集合体についての恐怖心や、人形に対する恐怖心など、ものに対する恐怖心の展示が続きます。


“社会”に対する恐怖心
続いてのエリアは、社会的なつながりが生まれる、目に見えない恐怖心を題材とした展示。「視線」「老化」など人との関わりから生まれる恐怖心が表現されています。
電話に対する恐怖心では、一定の間隔で電話の音が実際に鳴り響きます。電話をかけたり、受けたりする時に感じる恐怖心が、ジリリンジリリンという音とともに再現されてます。



笑い声に対する対する恐怖心では、人々の冷ややかな笑いの音声とともに、人に笑われている感覚がするという女性のインタビューが流れます。そのほかにも忘却を恐れる人が書いた執拗に細かく書かれた日記や、老化に対する恐怖を表現した大量の薬瓶の展示などが置かれます。
“空間”に対する恐怖心
次のエリアは、記憶と空間を繋ぐあらゆる「場」への恐怖をモチーフにした“空間”に対する恐怖心。細長い道の中に、さまざまな展示が設置されています。閉所や高所などのある場所について想起させる映像や写真などが並び、さらに「汚れに対する恐怖心」として黒ずんだ畳が通路に敷き詰められている箇所も。

展示映像の演出は、『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』『〇〇式』の近藤亮太監督が手掛けており、流し見することができないものばかりです。

“概念”に対する恐怖心
最後のエリアは、「死」「幸せ」など人間の根源にある、あらゆるナラティブを超越した概念それ自体の恐怖をテーマにした“概念”に対する恐怖心。中でも「廃棄に対する恐怖心」では、廃棄物の山が展示され、その強烈な匂いまでが表現されています。

展覧会全体を通して自分は怖いけれど他の人は恐怖を感じない、反対に、誰かは怖いけれど自分は全く怖くないものも多々あるようにも感じます。なぜそれを怖いと思うのか、分かるものもあれば理由がつけ難いもの、つけた理由がどこか嘘っぽく感じてしまうものまでさまざまで、展示を見ながら段々と、自分の過去や記憶と対峙しているような気分になる特別な展覧会でした。
それぞれの恐怖と向き合う展覧会『恐怖心展』。展覧会は、一部はフィクションですという意味深な注釈付き。渋谷BEAMギャラリーにて、8月31日まで開催中です。
恐怖心展
会期: 7/18(金)〜8/31(日)
会場:BEAMギャラリー 東京都渋谷区宇田川町31-2 渋谷BEAM 4F ※渋谷駅徒歩5分
開催時間:11:00〜20:00 ※最終入場は閉館30分前まで ※観覧の所要時間は約90分となります
料金:2,300円(税込) ※小学生以上は有料
主催:株式会社闇、株式会社テレビ東京、株式会社ローソンエンタテインメント
会場協力:東急不動産株式会社
企画:梨、株式会社闇、大森時生(テレビ東京)
医学監修:池内龍太郎(精神科医)
公式HP:https://kyoufushin.com