TikTokやYouTubeで人気を集める縦型ショートドラマコンテンツでも、若者を中心にホラージャンルへの需要が高まりつつある。本記事では、TikTokホラードラマアカウントとして国内一のフォロワー数を誇り、総再生数3億回を超えるコワゾーチャンネルのディレクター佐藤 周さん、秦 敏樹さんを講師として招き、「眼球POV」の撮影方法、制作の裏側を解説してもらった。

「コワゾー@怖くてゾッとする体験型ホラー」

2020年より現在に至るまで、「眼球POV」という撮影手法を用いたホラーショートドラマを制作し、SNSで配信しているコンテンツ型アカウント。TikTokでは、ホラードラマアカウントとして国内最多のフォロワー数を誇り、InstagramやYouTubeを含めた総フォロワー数は130万人を超える。総再生数は3億回以上にのぼる。世界的に人気のあるJホラーであることから、海外フォロワーも多数。また、TikTok Awards Japanでは「Short Drama Creator of the Year」に2022年・2024年と2度ノミネートされ、TikTok TOHO Film Festival 2021では観客賞を受賞、2023年にはファイナリストにも選出されるなど、高い注目を集めている。

HP ● https://angirz.com/service/kowazo


講師 佐藤 周 Amane Sato

映画監督/コワゾーメインディレクター。大分県出身。立命館大学映像学部在学中、短編ホラー『へんたい』が学生残酷映画祭にてグランプリ、観客賞をW受賞。その後、『怪談新耳袋Gメン』シリーズを多数手がけ、2020年にPOVホラー『橘アヤコは見られたい』にてロッテルダム国際映画祭に正式招待。



 講師 秦 敏樹 Toshiki Shin

クリエイティブプロデューサー/SNSコンサルタント/コワゾーディレクター。大分県出身・アンギルズ合同会社代表。日本大学芸術学部卒。CM・CGアニメ・映画・ドラマ・WEB広告・YouTubeコンサル制作などを渡り歩く。 演出作「ウルトラマンアーク特別総集編シリーズ」等。






コワゾー@怖くてゾッとする体験型ホラーとは?

年に一度くらいしか映画を見に行かない人たちをどう振り向かせるか

 『コワゾー@怖くてゾッとする体験型ホラー』とは、2021年から配信を開始した縦型ショートドラマコンテンツアカウントです。もともとは、2020年に僕と齋藤というスタッフで映像業界の勉強会を始めたのがきっかけでした。CMや映画、テレビの現場などで繋がり、コロナなどで悩みを抱えていたスタッフたちと「これからの時代における映像制作ってなんだろう?」ということを話し続けていたんです。そういった中、チームとして企画や映像を作っていくうちに、「年に一度くらいしか映画を見に行かないような人たちをどう振り向かせるか?」を目標に定めることにしました。そのためのクリエイティブ面をどうしようかと考えていたタイミングでちょうど佐藤に参加してもらえたので、彼の専門分野であるホラージャンルで2021年正月にスタートさせたのがコワゾーになります。

佐藤 僕はコロナの直前まで低予算映画の監督をずっと続けていました。そのときは偶然コロナの時期とは被らなかったので仕事がなくなるということはなかったんですが、今後いつ自分の現場が止まるかもわからないし、「このまま低予算映画だけをやっていて大丈夫だろうか?」という危機感もあったので、何か新しいことを始めたいと思っていました。そんな矢先にタイミングよく秦に声をかけてもらえたというのが、僕がチーム参加に至った経緯になります。






コワゾーが手掛ける映像の種類と制作体制

“眼球POV”ホラーショートドラマとは?

怪奇現象に遭遇する数秒前の内容を切り取った主人公視点の映像作品

 「POV」とは「Point of View」の略で、登場人物の視点から撮影された主観映像のことを指します。つまり、その人物の体験を映像化したものであり、主人公の目がカメラになっている映像のことですね。この目の役割を僕らは”眼球POV”という造語で呼んでいます。

佐藤 ハンディカメラで誰かが撮っているホームビデオなんかもPOVと言われるんですが、我々の場合はゲームで言うところのFPS(First Person Shooter)に近くて。ただ、FPSと呼ぶとゲームの印象が強いこともあり、以前に撮っていた映画の頃から眼球POVと僕が勝手に呼んでいたところ、メンバーが気に入ってくれて採用されました。

 ショートドラマと言っても怪奇現象に遭遇する数秒前という内容なので、ドラマの中で最も美味しいところを切り取っている作品になります。なので、スッキリと見せるために尺は60〜90秒のものをメインに作っています。



眼球POV=カメラのレンズが体験者(主人公)の「目」の役割

※POVとは?

Point of Viewの略。登場人物の視点から撮影された、主観映像のこと。



眼球POVホラーショートドラマの特徴

・怪奇現象に遭遇する瞬間を描くストーリー。

・尺は1本につき約60〜90秒。






“眼球POV”ホラーショートドラマの作品例

『オートロックなんですけど?』




『この日の失敗ずっと後悔してる』




『どうすればいい?しつこい彼女Lv100』




『※14秒目に注目!』




『エレベーターでの体験談』




その他の作品

ホラーショートドラマ(非POV)

PRショートドラマ制作

・映画『見える子ちゃん』(KADOKAWA)

・映画『ドールハウス』(東宝)

・映画『あのコはだぁれ?』(松竹)

・映画『テリファー 聖夜の悪夢』(エクストリーム)



フェイクドキュメンタリー

・『緊急で回してます!』(コワゾーYouTubeチャンネル)

・『アンダーグラウンド〜弥美町オカルト界隈〜』(テレビ東京「be terror be bad」YouTube)






制作体制について

基本的には監督がすべてを担当もしくは複数の役割を兼任する

 制作体制は、ジャンルによってそれぞれ異なります。眼球POVホラーショートドラマに関しては、基本的に監督がすべてを担当します。スタッフは平均3〜4名ですが、やろうと思えば監督ひとりとキャストひとりでも可能です。

ショートドラマに関しては、平均7〜8名程度のスタッフが必要で、演出部や制作部なども含めちょっとしたドラマの体制に近い形になってきます。

フェイクドキュメンタリーに関しては、監督が脚本・撮影・編集を担当しますが、ホラーカット以外は出演者に撮影してもらうことも稀にあります。

佐藤 出演者にカメラを回してもらったほうが生っぽくなるんですよね。ただ、ホラー描写に関しては演者さんに任せるのは荷が重いので基本的に自分たちで撮っています。



眼球POVホラーショートドラマ

・最低1名で撮影。(監督・脚本・撮影・編集・出演をすべて担当)

・平均はスタッフ3〜4名。

・キャストは2〜3名程度。 インフルエンサー起用も多数。



ホラーショートドラマ

・通常のショートドラマ制作体制。

・スタッフ人数は平均7〜8名前後。※予算に応じて変動



フェイクドキュメンタリー

・監督が脚本・撮影・編集を担当。

・ホラーカット以外は出演者に撮影してもらうことも。