視聴者が料金を支払うことで続きを視聴できる課金型ショートドラマと、企業広告として不特定多数に向け発信をするSNS向けショートドラマ。ふたつのコンテンツは似て非なるものであり、新たな動画市場を切り拓いている。本記事では、どちらの分野の映像においても高いクオリティと確かな支持を得ているNUTS FILMの有山さんを講師に招き、それぞれの戦略と制作術について解説してもらった。
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講師 有山周作 Shusaku Ariyama
2021年よりショートドラマ「NUTS FILM」の制作を開始。縦型ショートドラマの様々な案件を担当。藤井道人、佐久間宣行などが審査員の縦型映画祭「TikTok TOHO Film Festival 2023」チャレンジ賞受賞。上田慎一郎監督が審査員の「TikTok Short Film Contest」でアドビ賞を受賞。テレビ朝日『大富豪のバツイチ孫娘』の監督担当。作品ランキングで世界一を獲得。日本テレビと制作した『結婚詐欺師と堕ちる女』はBUMPにて4月〜5月の間ランキング1位。
「他人に見てもらうにはどうすればいいか?」を考えながら自分の面白さを軸に制作してきた
有山周作と申します。経歴としては、大学卒業後に一度就職したんですが、「本当にやりたいことはなんだ?」と、ありきたりな壁にぶつかってしまい、1年で退職しました。その後、2016年にCMのプロダクションマネージャーへと転職、2020年にフリーランスとして独立し、2021年から『NUTS FILM』として映像制作を開始しました。
僕自身、映像の学校にも一切通っていないし、出自的に師匠もいなかったので、映像を作る上で特に演出においては自分の考える面白さを軸に、「他人に見てもらうにはどうすればいいか?」をとにかく考えていました。撮影についても、縦型動画を始める上でスマホの視野なども含め、自身で撮影を繰り返しながら覚えていったし、編集に関しても、そもそもPremiere Proのいじり方さえわからなかったんですが、CMの仕事で編集の手伝いをする機会があったので、プロのエディターさんと仲良くなって、ひたすら質問を繰り返しながら覚えていきました。あとは、作品をとにかくたくさん見て、どこをどうすれば気持ちよくなるのかを試しながら学んでいきました。
NUTS FILMでは、縦型・横型を問わず多数の動画制作をしてきました。制作した動画をTikTokにアップしたところ、運良くそれがバズったことをきっかけに、現在は縦型ショートドラマのさまざまな案件を担当しています。また、監督した作品が「TikTok TOHO Film Festival 2023」ではチャレンジ賞、「TikTok Short Film Contest」ではアドビ賞をそれぞれ受賞しました。
最近で言うと、昨年にテレビ朝日さんと一緒に制作した『大富豪のバツイチ孫娘』という作品がショートドラマ作品ランキング世界1位を獲得し、日本テレビさんと制作した『結婚詐欺師と堕ちる女』という作品は、日本のショートドラマアプリ「BUMP」にて、4〜5月にわたりランキング1位を獲得しています。
今回の記事では、NUTS FILMで僕が制作したいくつかの作品を例に、課金型でもSNSでも通用するショートドラマの制作術について独自の観点から詳しく解説していきます。
NUTS FILMとは

NUTS FILMは縦型ショートドラマ制作に特化した会社。「NUTS」とはスラングで「馬鹿げている」という意味。NUTS FILMでは、馬鹿げているけれどどこか笑える、泣ける、懐かしいなど、さまざまな感情を揺さぶることを狙い、全ての人に「きっかけ」を与える映像を世の中に発信している。企画から演出、撮影、編集、キャスティングなどあらゆる制作を一貫して依頼が可能。
NUTS FILMがこれまで手がけた作品
『大富豪のバツイチ孫娘』
ShortMaxショートドラマ テレビ朝日×NUTS FILM
『君を駆ける』
UniReelショートドラマ 博報堂×NUTS FILM
『リベンジシンデレララブ』
Viglooショートドラマ
『#ガシャ恋』
バンダイショートドラマ
『結婚詐欺師と堕ちる女』
BUMPショートドラマ 日本テレビ×NUTS FILM
『ミッドナイト・ファイナルアプローチ』
ANA×AKB48 山梨放送スペシャルドラマ
「TikTok TOHO Film Festival 2023」 チャレンジ賞受賞作品
「TikTok TOHO Film Festival」とは2021年より毎年TikTokと東宝により開催される縦型映画祭。有山さんが監督を務めた本作は2023年にチャレンジ賞を見事獲得した。
2種類のショートドラマ形態について
課金型とSNS向けショートドラマの違い
共通して求められる部分も多くあるが似て非なるものと捉えて制作したほうがいい
課金型とSNSのショートドラマについて何が違うのかを考えたとき、まずはシンプルに有料か無料かといった部分が違います。また、課金型は30〜100話程度の長尺が多く、SNSは1〜10話程度の短尺が多いです。客層としては、課金型は30〜40代がメインですが、SNSでは10代がメインの客層になります。そして、課金型ではストーリーに重きを置くものが多く、SNSではネタ系が多いという対比があります。
つまり、よりしっかりとしたものを求められるのが課金型、シンプルかつ瞬間的なネタを求められるのがSNSというのが個人的な解釈です。
もちろん、共通して求められる部分も多くありますが、似ているものと捉えて制作しないほうがいいと僕は考えています。なぜなら、別物として制作をしなければ、お互いにクオリティが上がらないし、見ている人からも評価されないんですよね。逆に言えば、「面白くてハイクオリティのものを作るのが課金型の基本」ですが、SNSにおいてはハイクオリティのものを作ってもバズらない可能性がある。だからこそ、「クオリティを無視してでもバズをどう狙うかがSNS」と割り切って作るほうが、両者ともに成果が出やすいんじゃないかと思っています。
種類 | 課金型ショートドラマ | SNS向けショートドラマ |
視聴料 | 有料 | 無料 |
話数 | 30〜100話(長尺) | 1〜10話(短尺) |
客層 | 主に30〜40代 | 主に10代 |
重視する点 | ストーリー | ネタ要素 |
視聴媒体 | BUMP、ShortMaxなどの 課金型ドラマ専用アプリ | TikTok、InstgramなどのSNS |
制作のポイント | 面白さとハイクオリティの両立 | クオリティを無視してでもバズを意識 |
流行の音楽との関連性
課金型は流行の音楽に頼れないので動画のクオリティを上げなければいけない
SNS向けのショートドラマは、TikTokやInstagramなどの性質上、そのときに流行している楽曲を使うことができます。流行っている音楽が動画に使えるということは、バズる要素がひとつ増えるということなんですよ。要は、動画の内容としてグレードがひとつ下がっていたとしても、音楽で1〜2段階グレードを上げることができるので、視聴者としても見ていられるんです。
一方、課金型のショートドラマは音楽に頼ることができないので、動画やドラマとしてのクオリティそのものを上げていかなければいけません。ふたつのショートドラマの違いにおいて、その差はかなり大きいんじゃないかと個人的には考えています。
だから、SNSのショートドラマでバズっているチームがいたとしても、そのチームが作っている課金型のショートドラマのほうはそこまで跳ねていないというパターンは結構あるんですよね。つまり、ふたつのコンテンツがイコールではないことは、そこでも証明されているんです。