テスター:SHINYA SATO


ZRが示したシネマカメラの新たな形

Nikon ZRは2024年3月にNikonとREDのコラボレーションが始まって以来、自分が期待していた姿をさらに上回るサプライズを伴って登場した。Zシリーズの系譜にありながらも明確に「シネマカメラ」として定義されたこの小さなカメラは、ミラーレスカメラ特有の機動性とAF性能を備えつつも、RAW動画内部収録とREDカラーサイエンスの搭載という形で従来のカメラカテゴリーの境界をさらに曖昧にすると同時に、コンパクトシネマカメラの新たな基準を打ち立てる記念すべき一台としてその登場以来各所で大きな反響を呼んでいる。

今回はこのZRをしばらくお借りすることができたので、普段はソニー機をメインに小規模な撮影を行なっている筆者が、ニコン機&RAW動画に初挑戦する1ユーザーとしての目線でレポートしてみたい。

撮影スタイルとRAW動画への興味

筆者のプロフィールはカメラとは関わりのない会社員を本業としており映像制作と写真撮影の活動は週末が中心で、ミラーレスカメラ数台を用いて主にひとりで撮影から編集までを行なっている。現在制作活動に使用しているカメラは全てソニー製で、動画用がα7S ⅢとZV-E1(FX3も使用したことがあるが所有はしていない)、スチル用がα7 Ⅳとα7 CRとなっておりこれらの組み合せでワンオペか1名程度のサポートに入ってもらい小規模な撮影を行なっている。

映像に関してはS-LogのMP4で収録してDaVinci Resolveでグレーディングするスタイルを基本としているが、時間的制約も多いワンオペ撮影の中で条件の整わない場面での素材のグレーディング耐性や、写真も同時に撮影する際のルックの一貫性確保などに期待してRAWフォーマットでの動画撮影には以前から強い関心を持っていた。

一方で現状ソニーをはじめとする各社のミラーレスユーザーがRAW動画収録を行うためには、HDMI経由で外部モニターやSSDを用いて外部収録を行う必要がある。従来のProRes RAWに加えて最近Cinema LineのFXシリーズでBlackmagic RAWが利用できるようになったことは朗報だったが、いずれにしても筆者にとっては対応収録用モニターを新調する必要があるうえにワンオペでの慌ただしい撮影現場においては常に外部収録運用を必要とする点が、機動性や信頼性の面で導入へのハードルが高く、しばらく様子見が続いていた。

そんな中でのNikon ZRの登場は、REDカラーサイエンスを搭載したシネマカメラとしてのポテンシャルとRAW動画内部収録を、AFが実用的に活用できる使い慣れたミラーレスカメラのコンパクトなボディで実現しているという点において、現時点の自分にとって理想のカメラに最も近く、RAW動画入門機としてもぜひ試してみたいと今回テストをリクエストさせていただいた。

ミニマムなシネマカメラとしてのZR

ZRはニコンのZシリーズをベースにしつつも他の動画寄りのハイブリッド機よりもシネマカメラとしての立ち位置を明確にしている。

非常にコンパクトで削ぎ落とされたこのボディはRAW動画内部収録の優位性を最大限に活かすためのコアモジュールを想起させるデザインであり、機動性を重視した最小構成での一眼動画的な撮影から本格的なシネマ撮影のメイン/サブとしての活用までを視野に現場でのニーズに応じて好きなように拡張して使ってほしいというニコンのメッセージを強く感じ取ることができる。

似たコンセプトを持つカメラとしてはブラックマジックデザインの初期Pocket Cinema Cameraシリーズやシグマfpなどがあり、少し解釈を拡げればソニーのFX3なども同様と捉えることもできるが、RAW収録の手間やAFの実用性、手ブレ補正などの機能面でのバランスと運用性を考慮した場合に、シネマカメラとしてミニマムな構成で最大限のアウトプットを期待できる点において現時点ではZRの特徴が際立っている。

134×80.5×49mm、630g(メモリカードとバッテリー含む)の小型ボディには薄いグリップのみを備える。相対的に開口部55mmのZマウントの存在感が大きくミニマムな印象を与えている。
このサイズで放熱性にも配慮されたRAW動画内部収録を実現していることに驚きがある。高品質な内蔵モニターとレンズだけの最小構成で撮ってみたいと思わせる。


そういった観点から実際にZRをしばらく使ってみた印象としては、特徴的な大型モニターを最大限に活かすことが使いこなしのポイントだった。4型のサイズと307万ドットの解像度を備えたモニターはDCI-P3の色域を100%カバーし輝度も最大1,000cd/㎡まで15段階で調整可能と、実際に外部モニターの必要性をほぼ感じさせないほどの表示品質であることに加え、特にタッチ操作へのレスポンスが非常に良くスマートフォン的な感覚で操作できる。

操作性の面で自分がニコン機に慣れていないこともあったが、数が絞り込まれているボタンやダイヤル類での操作やカスタマイズに固執せず通常はタッチパネルでの操作を中心とし、場面により背面のマルチセレクターを併用するというオペレーションに早く慣れてしまうことがこの小さなカメラを快適に使いこなすための近道である。

内蔵モニターは色の再現性や輝度も高く、4型のサイズと16:10のアスペクト比で各パラメータを表示しても表示エリアに余裕がある。
大型モニターでのタッチ操作を前提とした本機では動画のセッティングに関する項目をボタン操作なしで呼び出せる工夫も凝らされている。
コンパクトなボディを実現するため物理的なボタンやダイヤルはかなり絞られているため、使用頻度の高い背面のマルチセレクターはもう少し大きいと良かった。
グリップの薄さとファンクションボタンが右側の上面に集中しているため、ボディ単体では低く構えて安定性を確保しつつ親指でボタンを押す操作の方がしっくりきた。


ハンドリングについては画質を求めて高品質なレンズを使う際にはさすがにグリップが心許ないので拡張グリップやリグでハンドルを追加することをお勧めするが、それでもボディ自体がコンパクトなのでこのサイズ感でこれだけの絵が撮れるという高揚感が損なわれることはない。32bit float録音に対応し指向性の制御も可能な内蔵マイクも高品質なもので、ボディ単体でどこまで撮れるかチャレンジしたくなるカメラでもある。

また今回は試すことができなかったが、フランジバックが16mmと極端に短いZマウントの利点を活かしアダプター経由で様々なマウントのレンズを試す楽しみもあり、ソニーユーザーとしてはMegadapやVILTROXなどから発売されているAF動作可能な電子マウントアダプターでとりあえずEマウント資産を活かした導入を検討したくなることもアピールポイントではないだろうか。

ニコンダイレクトでも販売されているSmallRigの専用ゲージ。グリップの一体感が良く安定性がなかり確保できるので、基本的にこの状態で写真も動画も撮影することが多かった。
本機の映像出力はマイクロHDMIとなるため、ケージキットにもコネクタ保護クランプが付属。
室内での使用例。今回外部モニターを使用したのはこの場面のみで、他は全て本体のモニターだけでも問題なく撮影を行えた。
軽量でファインダー部のないZRはNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S Ⅱとの組み合せでDJI RS4 Miniに搭載が可能だった。


豊富な動画収録フォーマットとREDカラーの活用

ZRで収録できる動画のフォーマットは非常に多岐に渡っている。REDのカラーサイエンスを活かせるR3D NEに加え、ニコン独自のN-RAWとProRes RAWにも対応とRAWだけで3種類も搭載している。さらにProRes 422HQやH.265の10bit/8bit、H.264の8bitまでと実に多様なフォーマットに対応し、一部を除きN-LogとSDRで収録が可能だ。(R3D NEはLog3G10固定、H.265とH.264の8bitはSDRのみ))

ニコンのZシリーズは従来よりフラッグシップのZ9をはじめ動画収録の選択肢が豊富であったが、ZRに至ってはこのクラスのカメラによくここまで搭載したなという印象で、使う用途やスキルレベル、ワークフロー/編集環境などに応じて幅広く自由に選択してもらいたいというニコンの意図が感じられる。またZRはR3D NE収録以外でもREDのカラーを利用しやすい工夫がなされており、撮って出しですぐに活用するための「シネマティック動画モード」がプリセットされていたり、Nikon Imaging Cloud経由でRED監修のイメージングレシピをダウンロードできるようにもなっている。

有効画素数2450万ドットの部分積層型のフルサイズCMOSセンサーは読み出し速度も早くローリングシャター歪みの影響も最小限に抑えながら最大239.76p(H.265のFHD時)で撮影できる。筆者にとって特に重要だったのがR3D NEフォーマットでも6K(6048×3402)/59.94pで撮影が可能な点で、編集素材としての4K編集時の解像感向上やトリミング耐性、スロー編集の幅においても非常に魅力的であり、RAW内部収録とあわせて自分が次に買い替えたいメインカメラの希望条件が揃っていた。(一定数のソニーユーザーも次世代機に望んでいることではないだろうか)

12-bitのRAWフォーマットを3種も選択できるカメラは珍しく様々な運用に対応する。
R3D NEでもFXサイズで6K/60p、DXサイズなら4K/120pでの収録が可能。
カスタムピクチャーコントロールに予めRED監修のCineBias_REDが搭載されている。さらにクラウド経由で様々なピクチャーコントロールを追加することもできる。
撮影モードのU1にプリセットされている「CInematic Video」で撮影。H.264 8-bit(mp4)のSDRでHDの24pとなりカラーにはCineBias_REDが適用される(適宜変更して再登録も可能)

R3D NEの制限とAF精度

R3D NEに関しては現状選択できるビットレートが固定されておりN-RAWの「高画質」と同等のデータ容量となる(6K/60pで約3780Mbps)。N-RAWでは品質を保ちながらビットレートが半分となる「標準」モードも提供されているのでここはファームアップでの対応に期待したい。

一方でR3D NEにはN-RAWにはないISO800/ISO6400のデュアルベースISOが利用可能となっているがISO感度の自動切替は使用できないため、どちらかのベースISO感度に設定しNDフィルターやレンズ絞りでの対応が必要となる。また重要なポイントとしてR3D NEでの収録時には他にも様々な制限事項があるため、導入時にはあらかじめ理解しておきたい。

(ニコン公式サイトのZR活用ガイドにて確認)

【R3D NE / N-RAW / ProRes RAW で利用できない機能】
  
・アクティブD-ライティング ・高感度ノイズ低減 ・回折補正 ・ブリージング補正
  ・美肌効果 ・電子手ブレ補正 ・内蔵マイク設定 ・フリッカー低減

R3D NEで制限がある機能】
  ・撮影モードはM(マニュアル)のみ利用可能
  ・露出補正は使用不可
  ・ホワイトバランスの「オート」「自然光オート」は使用不可
  ・人物印象調整は使用不可

こうして並べてみると普段ソニー機でmp4のs-Logで撮影している自分に取っては直接運用に関わる部分にも制限が多いことがわかる(もちろんZRでもRAW撮影以外では利用できる項目ではあるが)。露出に関してはデュアルベースISOの切り替え運用が前提でオートが利用できずマニュアルでの管理が必要なことは理解できたが、ホワイトバランスもオートは利用できないため普段よりも慎重に撮影前の確認を行なった。

特に気になったのが最後の「AF時にピントが合いにくくなる」という点である。具体的にどの程度の影響があるか記載がないので分からないが、事前のスチル撮影やH.265収録での短時間でのAFテスト段階では、被写体や瞳認識の精度において普段使用しているソニー機と比較してもそれほど違和感のないAF精度を確認できていた。しかしR3D NEで全て収録した作例動画については、ジンバルで歩きながらのフォロー撮影や三脚固定でのフィックスでも被写体の動きが大きい際には、人物を捉えるまでのタイムラグやフォーカスの迷いが出ているシーンが想定よりやや多くみられた。

今回は事前のテストで安心してしまい撮影中には気づきにくかったのだが、編集時に改めて素材を確認した段階でこの制限があることを知ることとなった。挙動をしっかり理解したうえでのAFエリアモードの適切な選択やAF速度調整で改善できそうな部分もあるため厳密な比較評価は難しいが、R3D NEの運用上の留意点としておきたい。

DaVinci Resolveでの編集とRAWグレーディング

今回筆者にとって初となるニコン機とRAW動画での撮影に挑戦してみた作例がこちらとなるのでまずはご覧いただきたい。使用機材は以下を使用して全て自然光で撮影している。

 ・Nikon ZR ・NIKKOR Z 24-70mm F2.8 S Ⅱ / 24mm F1.8 / 50mm F1.2 S
 ・Manfrotto ONE ・DJI RS4 Mini  ・Nisi ND Vario ・Syrp Magic Carpet ・Feelworld Lut5

Nikon ZR作例


約3分の作例動画のためにR3D NEで収録した素材はおよそ47分で1.3TBほどとなった。使用したCFexpress 4.0 Type BのカードはProGrade Digital GOLDの2TBで、最大読込3,400MB/s 最大書込3,000MB/s 持続書込1,500MB/sというスペックのもので、収録は非常に安定していた。

編集環境はMacBook Pro 14インチにM4 Maxと64GBのメモリを搭載したもので、撮影素材をThunderbolt 3接続のSAMSUNGのポータブルSSD X5(実測値で書込2,200MB/s、読込 2,500MB/s)に格納しDaVinci Resolve Studio 20.3.1でタイムラインを4K 24fpsに設定して編集した。

 
R3D NE自体は圧縮されたRAWフォーマットであるが、CPU性能とストレージの速度にやや余裕もあるためかカット編集に関しては6K60pの素材でも非常に快適に動作する。3トラックくらいを重ねてもフレーム落ちなく再生可能で、スローやトランジションを含めた編集でもプロキシを使用することことなく編集できた。

ただひとつ気になった点としては、手持ちやジンバルカットに対して編集でスタビライゼーションをかけた時に背景の不自然な歪みが現れやすく適用を諦める場面が多かった。RAW収録の場合は電子手ブレ補正は使用できず、撮影時は手ブレ補正設定を「スポーツ」にしていたのだが、このあたりの補正アルゴリズムとDaVinciのスタビライゼーション機能の相性が悪いのか後日改めて検証を行なってみたい。

RAW素材のカラーマネジメントについては各記事や解説でも様々な方法が紹介されていたので、それらを参考に今回はクリップ単位でのカメラRAW設定で基本的なカラーコレクションを行なっている。R3D NEはカメラRAWでISOやホワイトバランス/ティント、露出補正が可能となっているが、最初にLog状態からRec.709に戻した時点ですぐに露出のバランスや階調性、全体のトーンに関して使い慣れたS-Log素材との明確な差を感じ、素材としてのRAW収録とREDカラーサイエンスのポテンシャルの高さを知ることができた。

今回撮影時にはISOを800に設定しNDフィルターと絞りでヒストグラム上の露出がほぼ一定となるように調整、ホワイトバランスは日中の自然光での撮影だったため5200Kで固定して撮影したのだが、各カットのノイズレベルやホワイトバランスのバラつきがとても少なく、RAW設定の露出調整とホワイトバランス/ティントのみでカラーコレクションはほぼ完了することができた。RAW動画初体験の筆者としては、この時点で露出補正とホワイトバランスが写真のRAW編集と同様の感覚で意図したとおりにリニアに効くことにまずは感動してしまった。

カラーグレーディングに関してはR3D NEのポテンシャル確認と再現性を高めるために、全てREDから配布されているクリエイティブLUTキット (https://www.red.com/download/red-creative-lut-kit)を適用し、気になる部分の色味やスキントーンを調整する形で行なった。また今回は撮影時のND以外のレンズフィルターは使用せずフィルムグレインも弱めに適用しているので、ZRとR3D NEの素に近い状態での仕上がり具合を確認していただければと思う。

グレーディングに関しては12bit素材によって色の分離も良く狙った部分を思い通りに微妙に修正することが容易であったため、(当然のことかもしれないが)写真のRAWを現像している感覚に非常に近くわずかな調整のみで期待通りの結果を得ることができた。

逆にこれまで扱っていたS-Log素材からのグレーディングはJPEG素材を編集していたようなイメージで、そのクセを読みながらもなかなか期待通りに仕上がらないことに違和感を感じながら試行錯誤を行なってきた。写真からカメラを始めた自分としては今回初めてRAW動画を扱ってみて、写真の雰囲気をそのまま動かしたいと思っていた感覚が極めて近い形で体験できたことに大きな発見と喜びがあった。
 
R3D NEの素材についてはストレージの容量と転送速度を確保できれば快適に編集とグレーディングは可能、得られる結果に対する作業効率も良いことが今回理解できたので、撮影素材のアーカイブ運用をどうしていくかをクリアできれば積極的に活用していきたいと思えた。

Camera Rawの設定はREDワークフロー解説などを元に以下で設定
 カラーサイエンス:IPP2
 カラースペース:Rec.709
 ガンマカーブ:BT.1886
Camera Rawのみで露出補正とホワイトバランス調整は十分行えたため、今回はシンプルなノード構成でグレーディングを完了できた(左からノイズリダクション、シャープネス、露出カーブ調整、光源追加とフェイス調整、LUT適用、ビネット追加)


動画作例からのキャプチャ。6K収録からのシャープな解像感と自然で深みのあるトーンが美しい。
Nikon ZR(R3D NE 12-bit Log3G10 / 6048×3402 59.94pで収録し4K/24pで編集)

50mm 1/100sec F1.2 ISO800 WB5400k
Lut : RED_ FLUORESCE
50mm 1/100sec F1.2 ISO800 WB5200k
Lut : RED_ FLUORESCE
50mm 1/100sec F1.4 ISO800 WB4600k
Lut : RED_LUSH
50mm 1/100sec F2.8 ISO800 WB4200k
Lut : RED_LUSH
34mm 1/100sec F2.8 ISO800 WB5200k
Lut : RED_BLAU
28mm 1/100sec F2.8 ISO800 WB4800k
Lut : RED_BLAU

スチル撮影での使い勝手と作例

シネマカメラとしての性質の強いZRだが、Z6Ⅲと同様の24.5MPのフルサイズセンサーとニコンの最新画像処理エンジンEXPEED 7を搭載し、AI技術を活用した被写体認識や中央7.5段の手ブレ補正も備えた本機のスチル性能を確認するためポートレート撮影でも積極的に利用してみた。

ファインダーやメカシャッターを持たないことにやや慣れる必要はあるが、ZRの高精細な4型モニターはスチル撮影でも構図やフォーカスの確認を快適にしてくれることに加えてプレビューも非常に綺麗なため、被写体に向き合ってシャッターを切る楽しみが失われることはなかった。AF性能についてはポートレート撮影のテンポにおいては被写体/瞳認識のスピードや精度も問題なく動作し実際の撮れ高も期待以上に良好であった。

単体のスチル機としてさらに活用するためにはファンクションボタンの数やアサインできる機能の範囲などもやや物足りないところはあるが、映像と同時に写真も撮影することの多い筆者にとっては現場でのカメラの持ち替えを減らし、双方を同じトーンに統一できるメリットが大きいと感じている。

今回ZRと一緒にテストしたレンズ
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S Ⅱ
NIKKOR Z 20mm f/1.8 S
NIKKOR Z 24mm f/1.8 S
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
NIKKOR Z 85mm f/1.2 S


写真作例。NIKKOR Zレンズの高い描写力をスチルでも存分に楽しめる写真性能を備えており、特に50mmと85mmのf/1.2 Sレンズの空気感と描写力は印象的であった(RAW撮影から現像)

NIKKOR Z 24mm f/1.8 S
1/125sec F1.8 ISO250 WB5350k
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
1/125sec F1.2 ISO160 WB5000k
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
1/1250sec F1.2 ISO100 WB4460k
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S Ⅱ
24mm 1/100sec F2.8 ISO6400 WB2800k
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S Ⅱ
70mm 1/125sec F2.8 ISO2800 WB3000k
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
1/125sec F1.2 ISO1100 WB3350k


NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
1/16000sec F1.2 ISO6400 WB4800k
NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
1/250sec F1.2 ISO100 WB3350k
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
1/500sec F1.2 ISO100 WB3350k
NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
1/400sec F1.2 ISO100 WB4200k
NIKKOR Z 85mm f/1.2 S
1/320sec F1.2 ISO100 WB4700k

今後のシネマカメラの拡がりに求められる基準を問う一台

Nikon ZRの存在価値は、手にする人の映像制作への向き合い方や期待値によって今後さらに様々な方向に拡がっていくのではないかと感じた。R3D NE収録時の機能制限については自分のようにミラーレス機でのワンオペ運用に慣れているとやや不便に感じることもあるが、ZRを最小のREDシネマカメラと捉えて運用することができるだけの知識と経験を持ち合わせていれば、その機動性のメリットや得られる映像品質には納得性があるのではないかと思う。またボディ単体での操作性をどこまで求めるのか、ハイブリッド機をベースとしているがゆえの映像と写真が同居した機能/メニュー構成の複雑さなどのUI面については使う人によって評価が分かれるポイントかも知れない。

しかしこれだけ幅広いユーザーへ向けて話題性を提供し、実際に使ってみてこんなに楽しいと感じたカメラは久しぶりであった。AFや手ブレ補正動作の安定性向上やUIのカスタマイズ性、R3D NEの収録クオリティ選択、オープンゲート収録への対応など今後の改善に期待したい部分もあるが、ZRはその戦略的な価格設定も含め、RAW動画収録やシネマカメラの運用にチャレンジするための裾野を拡げるポテンシャルは現在でも確実に備えているのではないだろうか。



【制作協力】
 モデル: 香月 りえ https://mi-ne.link/composite/rie555
      Mako     https://www.instagram.com/m_a__k_____o

 撮影協力:MODel T http://modeltcafe.stars.ne.jp/