2024年4月9日に発売されたDJI RS4から2年を待たず、RSシリーズ最新作「DJI RS5」が2026年1月29日にリリースされる。完成度の高かったRS4をベースに、RS5はどこが進化したのか――。結論から言えば、これは「飛躍的アップグレード」と呼べるレベルだ。撮影体験を一変させる新機構の追加、使い勝手を底上げする細かな見直しなど、注目すべき点は多い。本稿では、前半でRS4からの変更点にフォーカスし、後半では新技術・新機構に絞って詳しく見ていく2部構成とした。今回は発売前に実機を触れる機会を得たので、まずは第1部としてRS4との比較からレビューを始めたい。

レポート●奥山貴嗣(ミル・フォトワークス)
1986年生まれ、関東在住のフォト・ビデオグラファー。雑誌編集・広告制作を経て2025年に独立。企業ブランディング映像の制作などを手がける傍ら、実務経験に基づく撮影機材レビューや記事執筆も行なう。
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前機種RS4からの変更点

◼︎全軸アームに微調整バランスノブを追加

これまで微調整バランスノブは水平チルト軸(カメラマウント側)の1か所にしか搭載されていなかったが、今作ではついに垂直チルト軸を含めパン軸・ロール軸の全軸アームに拡張された。これは現場の撮影者にとって非常にうれしい改良だ。
従来、パン軸やロール軸のバランス調整は、カメラを保持しながらアームを少しずつ動かして追い込む必要があり、1ミリ単位の精密さが求められるため、慣れていないと調整に時間がかかる地味に面倒な作業だった。筆者も「全軸に微調整ノブがあれば……」と思った場面は数え切れない。
特にワンオペで撮影することが多い筆者にとっては、レンズ交換のたびにバランスを取り直す必要があり、時間に追われる現場ではストレスの原因にもなる。全軸に対応した微調整ノブのおかげで再調整が数十秒でも短縮できれば、現場の空気感も保ちやすいし、進行にも余裕が生まれる。
そうした背景を踏まえると、全軸への微調整ノブ搭載は運用面での最大の進化点のひとつだ。見た目は控えめな変更に思えるが、実際に使う立場からすればその価値は非常に大きい。まさに現場の小さな不満に応えてくれるアップデートだ。


◼︎縦位置撮影の切り替えがよりスムーズに

RS4でも縦位置撮影は専用ブラケットなしで対応できた。しかし、レバーを緩め、安全ロックと同時に押しながらプレートを外し、縦向きに差し替えてから再度レバーで締め直すという手順は、慣れればさほど時間はかからないが、撮影中にさっと切り替えたい場面では少々まどろっこしさもあった。
RS5ではその仕組みが見直され、操作工程がさらに簡略化された。具体的には、取り外し時に必要だったロック操作が不要になり、レバーを緩めたうえで押し込むだけでプレートを取り外せるようになっている。ボタンがひとつ減っただけといえばそれまでだが、こうした小さな見直しは撮影中の流れを乱さず、全体のリズムを保つのに一役買ってくれる。
大きな仕様変更ではないが、頻繁に縦横を切り替えるユーザーであれば、そのありがたみを実感できるはずだ。RS4でも充分に便利だったが、RS5ではより無駄のない動作でセットアップできるようになった。

◼︎第5世代アルゴリズムで補正性能がワンランク向上

RS5では、ジンバル制御の中核を担うスタビライズアルゴリズムが第5世代へと進化。それに伴い、モーター出力も引き上げられ、最大トルクは従来比で最大50%の強化が図られているという。数値だけ見れば地味に思えるが、実際に運用してみると、その差は想像以上に大きかった。
特に恩恵を感じたのは、歩行やローポジションでの撮影、オービットのようなカメラの旋回を伴う動きのあるシーンだ。これまでは安定した映像を撮るには、歩き方や角度の付け方といった撮影者側のスキルや経験が必要だった。だがRS5では、そうしたコツがなくても、自然に安定した映像が得られる。構図に集中しながら自由に動いても、破綻のない画が得られるのは実に快適だ。
試用時はモーターパラメーターを一切調整していなかったが、それでも滑らかな映像が得られた。オービットのような動きでも細かいブレが出ず、「これまでより1段階クオリティが上がった」と感じられるレベル。実案件で使うのが楽しみになる進化だ。
◼︎長時間撮影の不安を軽減する新型バッテリーグリップ

これまで上位モデルにしか与えられていなかった大型グリップを、無印モデルにも標準装備してきた。
RS4では小型のBG21グリップが採用されコンパクトな反面、長時間運用にはやや物足りなさもあった。一方、上位のProモデルには大容量のBG30グリップが標準で搭載されており、バッテリー性能には明確な差があった。
今回のRS5では、新型の「BG33」グリップを初期装備。駆動時間は従来のBG30比で12時間から14時間へと向上し、さらに1時間でフル充電が可能な急速充電(65W対応)にも対応するなど、実用性が大きく進化している。
筆者はイベント撮影などで朝から夕方までジンバルを使い続ける場面が多くあり、これまではバッテリー残量を気にしながら、合間を見て外部電源から充電するのが常だった。予備バッテリーを差し替えるタイミングも含めて、運用にはそれなりに気を遣う部分だったが、BG33の登場でその不安は確実に減るだろう。1時間程度の休憩が取れれば、午後の撮影にも安心して臨める。
サイズは若干大きくなったものの、グリップとしての安定性が増し、ホールド感も良好だ。小柄な筆者でも違和感なく握ることができ、むしろ撮影中の安心感は増した印象。持ち運びに支障をきたすようなサイズ増ではなく、実用性にしっかり振った最適なバランスだと感じた。

◼︎ワンアクションで展開完了、三脚設置がよりスムーズに

付属の延長用グリップ/三脚も、細かいながらありがたい改良が施されている。従来モデルでは、三脚として使う際に3本の足を1本ずつ手で開く必要があった。慣れれば気にならない動作ではあるが、撮影の合間に何度も繰り返す場面では確実に手間だった。
今回の新型では、1本の足を動かすだけで他の2本も連動して開閉する機構を採用。とっさの撮影やちょっとした休憩時に非常にありがたい。使うたびに「あ、便利」と思える仕様だ。似たような仕組みはこれまでもサードパーティ製で存在していたが、純正で搭載されたことに意味がある。信頼性や剛性の面でも安心して使えるのはやはり大きい。

また、グリップ自体の剛性や滑りにくさといった基本性能は従来通りしっかりしており、手持ち撮影時の安定感も損なわれていない。動作の迷いがなくなったことで、純粋に使っていて気持ちがいいパーツに仕上がっている。
◼︎モノトーン化で精悍さが増した本体デザイン

本体カラーもこれまでの赤いアクセントから一新され、RS5では白とグレーを基調としたモノトーン構成になった。デザインの印象は大きく変わったが、ここは完全に好みの分かれるところだろう。筆者としては、主張を抑えた配色になったことでギア感が増し、撮影機材らしい精悍さが強まったように感じている。
◼︎ Bluetoothシャッターがさらに多機種対応に
Bluetoothシャッターの対応機種にも拡張が加えられており、従来のSONY/Canonに加え、新たにPanasonicおよびFUJIFILMにも対応するようになった。細かい仕様ではあるが、ケーブルレスでの録画操作が可能になることで取り回しの自由度が上がり、より多くのカメラユーザーにとって実用性が増している。
使い慣れた操作感はそのままに ― RS4から変わっていない部分を整理
RS5ではさまざまな機能が刷新された一方で、基本的な操作系統やインターフェース類は従来通り維持されている。
・各種ボタン配置
・前面のフロントダイヤル/トリガー
・ジンバルモードスイッチ
・ジョイスティックモードスイッチ
・映像伝送およびフォローフォーカスモーター対応
・各種インターフェース類(USB-Cやアクセサリーポートなど)
このあたりは、そもそも完成度が高く、不満の声もほとんど聞かれなかった部分だ。無理に手を加えず、使い慣れた操作感を維持してくれているのはありがたい。






まとめ
今回はRS4との違いにフォーカスして、主にボディ構造や操作性に関わる部分を中心に見てきた。どれも実際の現場運用に即したアップデートばかりで、積み重なると確実に体感の差につながってくる。ジンバルを日常的に使うユーザーほどその恩恵を強く感じられるだろう。
ただし、RS5の進化はそれだけに留まらない。後編では、インテリジェントトラッキングモジュール、電動アシストハンドル、Z軸安定インジケーターといった新機構について掘り下げていく。特に今回は「個人カメラマン」を明確に想定した設計が随所に見られ、ワンオペ撮影をよりスマートに、効率的にこなせるようになっているのが大きなポイントだ。
新機能の紹介はボリュームも多くなるため、前後編に分けてお届けする形を取った。次回はより撮影体験そのものを変えてくれる要素に踏み込んでいきたい。
