文=長谷川修(大和映像サロン会長)
タイトル=岩崎光明
私が8ミリ映画にのめり込んでいたころ、社員旅行や結婚式の記録を頼まれ、撮った作品に歯の浮くようなナレーションとBGM(この頃流行っていたマントヴァーニーの曲が多かった)をつけて職場で公開すると、絶賛の嵐? で、自分は天才かと思ったほど、デング熱ならぬ天狗熱に侵されていたのでありました。
その勢いで、当時の「小型映画」誌に載っていた地元のクラブに入ろうと決心し、目に物を見せようと自信満々で入会を申し込み、最初の例会に参加したのです。ところが…。この例会で先輩のYさんとSさんの作品を見て、頭をガツーンと殴られたような衝撃を受けましたね! ものの見事に天狗の鼻をへし折られたのです。
Yさんの作品は会津盆地を走るSLの最後の姿を追ったドキュメンタリーで、当時のサウンドシンクロ技術として最高の精度を誇ったパルスシンク方式を駆使したものでした。またSさんの作品は、自宅から駅までの朝の道を描いた3分程の短編で、短くともこれだけの表現ができるのだということを思い知らされましたね。
今までの私の作品は何だったのか! 否、あれは作品なんて呼べる代物じゃないっていうことを心底思い知らされ、その夜は耳元にいつまでもSLの汽笛が聞こえて眠れなかったですョ。それほどの衝撃的な例会でした。
その後も多くの会員の作品を見ることで、テーマの在り方や作品の構成を学ぶ一方で、音楽の効果等、技術的な悩みを解決しつつ、友人の輪も広がり、気がつけば40年近い歳月が流れ、Yさんとは今も友人として、もちろん頼れる先輩としてお付き合いを頂いております。
一人で気楽に楽しむのも悪くはないし、むしろビデオを楽しんでいる人の多くがクラブに入らず、それなりに楽しんでいることでしょう。でも前述の経験から、クラブに入ることが上達の早道であることは間違いないと思います。まだクラブへ入っていない方にはぜひ、入会されることをお薦め致します。会員の高齢化でその数は少なくなったとはいえ、全国に展開するビデオクラブの存在は、作品づくりを目指す人には不可欠だと言えましょう。
まずは現在住んでいる地域のビデオクラブに入会するのが良いかと思いますが、ビデオクラブと言っても千差万別。それぞれ独自のカラーがあります。どんな傾向があるのか、私なりに分析してみましょう。
◎例会に作品を持ち寄って上映し、終わったらパチパチ拍手。感想や批評も一切なし。したがって年一度の上映会もなしのクラブ。
◎講師を招き、的確なる批評と指導を受けるクラブ。
◎指導的立場のベテランが指導役となって運営するクラブ。
◎作品よりもパソコンやメカのオペレーション習得に力を入れるクラブ。
◎作品づくりもするが、親睦に力を入れ、宴会や旅行も欠かさないクラブ。
◎コンテストの常連や名人上手と言われる人で構成されているクラブ。
とまあ、ざっとこんなスタイルが思い浮かびますが、どのようなクラブが良くて、どのようなクラブが駄目なのか? ではなく自分のビデオスタイルに合ったクラブを選ぶことが肝心です。
どのクラブでも入会前に例会を見学できると思うので、ビデオサロン誌の「ビデオクラブ通信」に掲載されている連絡先から問い合わせてみるとよいかもしれませんね。また、上映会に参加してみると、そのクラブの雰囲気とかも分かると思うので足を運んでみてはいかがでしょうか?
翻って、新しい会員を迎える側のお話です。上級者、中級者、初心者がワイワイガヤガヤやるのがクラブです。「他人の作品を見る」ことが上達の秘訣。人のふり見て我がふり直せ! その通りです。例会や勉強会で会員の作品を合評することは大いに結構なことで、他人の感想、意見に耳を傾け、作品づくりに生かしていけるのがクラブに入会した最大のメリットです。
ところで、どこの会でも教え魔がいるのですな~! ご本人は親切心から、ゼロデシベルとかジッターがどうのと一生懸命なのですが、初心者には難し過ぎてついて行けません。教える本人からすれば当然知っておかなければならない基本中の基本であっても、人それぞれのレベルがあります。
枡に例えれば、一合枡の人も五合枡の人もいるのです。五合枡に程良く注いであげて「どう? 美味いだろう?」となれば「ええ、美味いです!」となりますが、五合枡に一升酒を注げば枡から溢れてしまい「おいおい、せっかく注いだ酒、こぼすんじゃね~」って言われても「冗談じゃね~や、そんな文句言うのなら辞めてやら~」となっては元も子もありません。皆さん、似たような経験がおありになるのでは?
ある著名な作家が何かの本に書いていました。「どんなに努力をしても上達しない人がいるのがクラブ永続の秘訣」なのだそうです。考えてみれば名人上手だけのクラブって、ちょっと怖そう! それはそれとして、貴方も教え魔になっていませんか?
【大和映像サロン】
●例会会場:大和市民活動センター
●勉強会:第2土曜日14時から
●例会:第4土曜日17時から
●入会希望連絡先:長谷川修 0463-82-8991
*2017年3月12日現在の情報です
月刊「ビデオサロン」2015年3月号掲載