助けあいジャパンとは
2011年3月11日に日本列島を襲った東日本大震災の悲惨な状況は誰の記憶にも新しいが、その震災の当日に立ち上がった復興支援サイトがあることは意外にも知られていない。
「助けあいジャパン」は、現在は復興庁の連携プロジェクトとなっているが、その活動団体は2012年3月23日から公益社団法人となっている。
震災当日、コミュニケーション・ディレクター/クリエイティブ・ディレクターとして活躍する「さとなお」こと佐藤尚之氏の呼びかけで発足したこのプロジェクトは、当初はインターネット上の集まりでしかなかった。
「わたしたちは主に情報産業の有志の集まりです。東日本大震災が起こるまで、点で散らばっていた数百人の仲間が、ソーシャルメディアを通じて集い、被災者や被災地のために情報による後方支援活動をしています」(佐藤氏)
ソーシャルメディア、すなわちTwitterやFacebookを使って集った情報産業に携わる方々が、情報発信という形で復興を支援していくというものである。
世界一小さい中継車があれば
復興支援のためにどのような情報発信をしているのだろうか。
助けあいジャパンの理事、石川淳哉氏は「マスメディアが取り上げないような情報を発信します。たとえば地域コミュニティのデータや避難所からの生の声を届けたいのです」
最初は東京にいて、地方から届く情報を再編集してインターネットサイトに掲載するという形で動いていたが、やがて自ら情報を取りに行く必要性を感じた。
「世界一小さな中継車があれば、放送局の中継車が入れないようなところに行って取材をし、それを世界に発信することができる。そのために作ったのが情報レンジャーです。情報レンジャーは復興のための正しい情報やニーズを届ける『助けあいジャパン』の情報実行チームです」
この世界一小さな中継車のアイデアは、チームのデザイナー、松本純一氏の手によって絵コンテになって事務局の壁面に飾られた。
キバンインターナショナルの参加
eラーニングの専門企業である株式会社キバンインターナショナルの西村正宏氏は、この絵に触発されて世界一小さな中継車の夢を具現化しようと試みた。
最初は電源の問題、サイズの問題など克服すべき問題が多く、アイデア画のような三輪バイクでの実装は困難を極めた。そんな折、トヨタ自動車からCharge the Future Projectの一環としてエスティマ・ハイブリッドの提供があり、アイデア画のキャンピングカーよりも小さい中継車をこの車をベースに製作することになった。エスティマ・ハイブリッドは、15Aの電源供給が可能で、被災地では停電した地域の病院の手術室の電源を賄ったり、電気炊飯器でご飯を炊いて炊き出しをしたりと活躍している。つまり、三輪バイクでは不可能だった100V電源の機材を積み込んだ小さな中継車を実現することが可能になったのである。
情報レンジャー@宮城は数か月で138か所で取材
「助けあいジャパン」の情報収集実行チームとして「情報レンジャー」が結成され、前出の石川氏がその隊長に就任した。「最初に活動を開始したのは情報レンジャー@宮城です。宮城県で人材を雇用し、情報レンジャーリーダーとして取材に走り回ってもらっています。情報レンジャー@宮城は2012年3月に発足しましたが、エスティマで月に7500〜8000キロも宮城県内を走破し、6月まで138箇所で取材して、その動画を復興支援サイトに掲載しています」と石川氏は話す。
「この活動はすでに宮城県で3月に始まり、さらに9月から福島県でも始まりました。」
助けあいジャパンの中継車内は、放送局などの中継車とは違い、車内の装備はほとんどそのまま残し、居住性と機能性を共存させている。システムの中心に位置するのはブラックマジックデザインのATEMスイッチャーシリーズで、カメラからの映像、マイクからの音声はすべてここに集まる。情報レンジャー@宮城では、ATEM 1M/E Production Switcherが、そして情報レンジャー@福島では、ATEM Television Studioが導入されている。
情報レンジャー@福島でのシステムでは、ATEM Television Studioのプログラム出力(SDI)はHyperDeck StudioによってSSDに収録することができ、このファイルはノンリニア編集ソフトウェアなどによってポストプロダクションされる。HyperDeck Studioの出力はSmartView Duoの片方のモニターでモニタリングされ、SmartView Duoのもう一方のモニターは、ATEM Television Studioのマルチビューモニター出力をモニタリングするのに使われた。
ATEM Television Studioのもうひとつのプログラム出力(HDMI)はIntensity ExtremeによってThunderboltに変換されMac Miniに送られる。Mac Miniでは必要に応じてプレゼンテーションファイルなどとの合成が行われ、その主力がLAN経由でストリーミングとして流され、HDMI出力はMini ConverterでSDIに変換されてSmartView HDで最終段出力としてモニターされる。
ブラックマジックデザインの製品がなかったら実現しなかった
このシステムを設計し寄贈したキバンインターナショナルの西村氏はブラックマジックデザインの製品について
「どの製品も省スペース、省電力設計になっていることがいちばんありがたいですね。可動部品が少なく、HyperDeck Studioは、記録媒体もHDDではなくSSDですから、メカニズムとして壊れる心配をする必要がありません。世界中の中継車で採用され、稼働しているという実績からも安心です」
と高く評価している。
「福島に配備されたこのシステムは、今までとは違う構成になって、新製品も採用しています。ATEM Television Studioも初めて搭載しましたが、今後が楽しみです」
公益社団法人
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