読者の投稿コーナー、ビデオ道場でこの一年で心に残った作品をピックアップしたいと思います。なお、毎月の大賞、入賞とは関係がありませんし、ここでピックアップしたからといって、何か賞金があるわけではありません。あしからず。


まずは、60代、岩手県の八幡平市の小野寺さんから送られてきた作品。犬と猫の交流もすばらしのですが、なんと言ってもこの八幡平の風景。タイトルが出るまでの最初の30秒、完璧です。このローアングルの置きカメラがなんと効果的か。そしてご自身のナレーションがいい。
【2013年7月号入賞】「あらたな家族とさんぽ」小野寺久夫さん(岩手県八幡平市)

こういう風景のところで、こんな生活を送ってみたいと本気で思いましたね。
そんな小野寺さんから送られてきたもう一本が、定年を迎えた作者がペットとお散歩しながら人生を振り返る作品「こくぞうさんとともに」。
(2014年1月号掲載)「こくぞうさんと ともに」小野寺久夫さん(岩手県八幡平市)

これも八幡平の泣かせる夕景カット満載。
「地元では『こくぞうさん』と呼ばれています」というナレーションの奥様?のイントネーションが耳から離れないし、最後のナレーションが「これからムサシとスーちゃんと…」で終わるところが妙にひっかかります。
こういう作品はビデオフェスティバルで大賞をとったりはしないですし、YouTubeでアクセス回数を誇る作品というわけでもないですし、もちろんテレビで流れることもないでしょう。
これがプロのナレーターや俳優のしゃべりに置き換わったら、なんか違う気がします。
カメラも一見自然そうに見えますが、置きカメラがあることを考えると、作者は綿密に構図を考え、ある程度、その前で演技しているわけですよね。ところどころへんなジャンプカット(つなぎ)はあるのですが、そこすらアマチュアっぽい稚拙さを演出しているのではないかと勘ぐってしまいます。ナレーションやBGMの入れ方も巧みですし、作品にまとめるテクニックをお持ちの方です。
最近驚かされているのは神戸の坂口さんの作品。へたなテレビ番組よりもきちんと調べてあって、これは内容的にも驚くし、番組としての構成もしっかりしています。それにテレビの取材だとこんなに地元の人に自然に話をきけないだろうと思うシーンもあります。
(2013年11月号掲載)「日出のコテ絵」坂口吉弘さん(兵庫県神戸市)

坂口さんはなんと80代なのです!
さらに今月号で掲載した作品の調べ方も半端ではありません。
2014年2月号入賞「太閤さんから貰った島」坂口吉弘さん(兵庫県神戸市)

驚くべきは、おそらくお孫さん?かと思われる人が案内人としてこの島を回るという構成。ナレーションはそのお孫さん自身と前作「日出のコテ絵」でもナレーションをつとめた女性の二人。最近NHKでよくある男女二人のナレーション構成を真似されているのでしょうか。
80代でこの作品を作る情熱と構成力。私にはまったく想像もつきません。脱帽です。
以前、絶賛した三重県の河合さんのカメラは2013年も好調でした。
地方局のニュースレポートなどは、プロの仕事でも河合さんに及ばない事例がたくさんあるのではないでしょうか? 
河合さんはほとんど一人で企画、取材、撮影して編集(ナレーションも)しているのですから、これまた凄いのです。