月刊誌「ビデオサロン」で連載中の読者投稿コーナー「魁!! ビデオ道場」では、毎月1作品を「大賞」、次点の数作品を「入賞」としてセレクト。大賞受賞者には金2万円ほか、大賞・入賞および掲載作品にもその栄誉をたたえてステッカーを贈呈しています。詳細は誌面をご覧ください。今回は2014年3月号掲載の作品を紹介します。
解説は岡野肇さんです。
大賞「わたしは蚕」佐伯勝利さん(熊本県熊本市)
一昔前なら「知らない日本人はいない」であったであろう養蚕の工程を、とてもわかりやすいナレーションと共にやさしく解説した作品。理解しやすい構成とカット割りで、安心して見ていられました。ただ、たまに無音部分があり、逆に「ギクッ」としてしまって、ちょっと気
になりました。ぜひ現場音か音楽の工夫を。
入賞「素晴しい徐伸線の作成方法 by After Effects」 渡辺考三さん(埼玉県上尾市)
自分で理解することと、人に教えることは大きな差があります。この作品は、きちんと人に教えられるレベル。これまでの作者の「徐伸線」シリーズの総決算的作品。いい意味での「ドヤ声」の軽快なナレーションにのせて「今すぐにやってみたい」気持ちにさせる名解説の画面。作品の中の単なる1手法でしかないはずの「徐伸線」に対する作者のこだわりに脱帽。
入賞「Do it! 松阪鶏焼き肉隊 」河合典之さん(三重県松阪市)
この作品の素晴らしいのは、つい目が行きがちの「B1グランプリ」全体には目もくれず、ターゲットである「松阪鶏焼き肉隊」をひたすら追い続け描いたこと。簡単そうでなかなかできません。もちろんグランプリはちゃんと説明されていて抜かりはない。食べ物のカメラワークには定評のある作者。「音」のつなぎも完璧でとても整った作品に仕上がっています。
「Amore eterno episode of Jyunichi and Yuki」太田智大さん(東京都荒川区)
結婚式をビデオ撮りするということに関して、隔世の念を禁じ得ない作品。美しい画質、スムーズなカメラワーク、とりわけ短いシーンでの様々な角度からのアングルは素晴らしい。これも作者得意のステディーショットの賜物ですね。無理矢理欲をいえばどこか1カ所にフリーズ、つまり止まった画があると動きとのメリハリが強調されたと思うのですが。
「うだつの上がる町並みの花みこし」 大矢治朗さん(岐阜県安八郡)
慣用句の「うだつが上がらない」を逆手に取った洒落たタイトルに続いて登場する美濃和紙を使ったピンクの花みこしの鮮やかさは独特。色々なアングルからみこしを狙う作者。ちゃんとうだつの上った町並みと、原色使いの花みこしがこのまつりのポイントとちゃんと位置づけ、丁寧な作品になりました。
「旭山動物園 雪の中の動物園」 髙田義久さん(北海道札幌市)
旭山動物園は、その独創性が人気を呼んでいますね。そしてこの作品、動物ごとにBGMを変える奇抜な選曲は面白かったのですが、作者がこの旭山動物園をどういう視点で見つめているのかが知りたいと思いました。
「世界遺産登録を目指す 富岡製糸場見学 」木村精二さん(東京都北区)
撮影許可書も発行してもらい、工場内部も含めて大変きっちりした作品。ハンディ撮影もそんなに気になりません。落ち着いたBGMで良いのですが、コーナーごとに曲を替えてメリハリをつけるのも手です。
「長崎くんち」 西中俊雄さん(福岡県直方市)
このように熱気で包まれた中での撮影は、いかに現場に流されず、見ている側の視点に回れるかがコツです。冒頭のインタビューはユニークで面白い。幾度か挟まれるインサートは唐突なので、ジングル等の音楽か効果音を付けるなど一工夫欲しいですね。
「弁天池の紅葉」 田中憲司さん(東京都調布市)
どのカットもきれいなのですが、ナレーションの蘊蓄とカットのマッチングに少し違和感が。蘊蓄を聞いているとやはり話に沿った画が見たくなりますし、美しいカットを味わうならナレーションの量が多いのでは。構成にご一考を。魚眼カットは秀逸でした。
「湖畔の露天風呂へ 」後藤輝男さん(富山県高岡市)
太陽の光線の具合でしょうか、全体的に秋らしくしっとりとして色の濃い味わい深い画調になっていて、臨場感まで伝わってきました。特にイベントがあるわけではないですが、落ち着いていて謙虚なナレーションに好感が持てました。ピアノの響きもよくあっていました。
「風ニモマケズ」 藤村正夫さん(埼玉県八潮市)
ウルトラライトプレーンとは言え、こんなに間近で離着陸を見るのは迫力があり、どれだけ見ていても飽きない。動きのあるものの撮影なので三脚では難しいのも理解できます。晴天であれば高速シャッターを試してみては?
「小樽の遊歩を思い出す」 船戸一志さん(北海道札幌市)
切り立った断崖と透き通るような青い海。そんなオタモイ海岸の遊歩道を行く小さな旅。この作者は思ったこと、感じたことをナレーションとテロップで自由に表現。こんな自然体な作品も良いですね。
「ロケハン ブルーインパルス」 広瀬友三さん(兵庫県加古川市)
完璧のバスツアーで臨んだ航空際。しかし、渋滞でお目当てのブルー・インパルスに間に合わず。そんな逆境の中「ロケハン」と称して作品として成立させてしまう作者の粘りに拍手。転んでもただでは起きない奮闘ぶりをぜひ参考に。
「ふるさと」 柴田常夫さん(愛知県瀬戸市)
ただ風景をつないでいくのではなく、視点を1つ入れたことでとても見やすくなります。その提起された問いの答えを探しながら見ていけるからです。豊富な田舎のカットも素晴らしい。ただ終着点がちよっと凡庸? もしかしたら問いの答えは言葉としては必要ないかも。
「お父さんのねがい」 加藤須満子さん(東京都小平市)
家族っていいですね。そういう言葉が素直に出る素晴らしいホームビデオ作品。このような題材は、淡々としている所がまたいいですね。何も起こらないのがいい。時折インサートされる写真も良いアクセントになっています。何時間でも見ていたい家族の記録でした。
「筑北村 四阿屋山」吉野和彦さん(長野県松本市)
「自分撮り」の名手の作者が珍しく子供達を撮る側に回って、新境地も見せる。作品は車内の据え付けカメラからスタート。「自分撮り」も回想素材も併用し、いつもの世界観を保ちつつ、かつ親子の微笑ましい作品にも仕上げている所に感銘しました。ラストの3ショットがいい。
「南会津 大内宿」 関口豊さん(埼玉県狭山市)
保存地区に指定された大内宿とその周辺の神社仏閣も含めた訪問記。落ち着いたカメラワークなのですが、あえてハンディ撮影等で街道をそぞろ歩く雰囲気を出すのも1つの方法論だと思います。是非チャレンジを。
「新緑11SHINRYOKU 紅葉準備中」金谷 功さん(京都府京都市)
「紅葉準備中」とはなかなかの名案。今回、全体的に少し絞り明け気味に見受けられますが意図的でしょうか。そのことが効果的に働いて作品に統一感が出ています。木々や花などの植物だけで作品にしていくにはこのような何か統一的な手法が活きてきます。
「鯉のジャンプ」 二本柳貴夫さん(北海道札幌市)
湖畔の渕への「鯉」のジャンプの決定的瞬間。早朝で暗かったこともあって画質は荒いですが、見事に撮れました。ただし、この瞬間映像だけをどのように作品にしていくかもう一工夫欲しかった。撮影の体験談としてドキュメントタッチで迫るか、あるいは鯉の習性の蘊蓄を語るか。
◆この動画はビデオSALON2014年3月号の記事連動動画です。この動画に関する記事は3月号をご覧ください。http://www.genkosha.co.jp/vs/backnumber/1253.html