映画「X-MEN」シリーズの第7作目となる『X-Men: フューチャー&パスト』。先日日本でも公開され話題を集めているが、そのニアセット・グレーディングにDavinci Resolveが使用されているという。ニア・セット(Near Set)とは、現場でもなく、ポストプロダクションでもない場所でRAW現像から仮編集、カラコレ等を行うことをいう。
本作でのニアセットグレーディングを手がけたのはEC3のデイリーカラリスト、エイドリアン・デルード氏。EC3は、Deluxe Entertainmentサービスグループのニアセット・デイリーを担当する部門であり、ポストスタジオEFILM、そしてCompany 3の技術と人材を駆使して、各クライアントのニーズに沿った劇場映画用のデイリー・ソリューションを提供している。
ブライアン・シンガー監督、ニュートン・トーマス・サイジェル撮影監督による、X-Menシリーズ最新作では、オリジナル3部作のキャラクター達が、『X-Men:ファースト・ジェネレーション』に登場した過去の自分自身と手を組み、未来を救うために過去を変えるという、壮大な戦いに挑む。
制作中、デルード氏はサイジェル撮影監督と緊密に協力し合い、EC3のトレーラーを使って作業を行なった。このトレーラーは、試写室や完璧なカラーグレーディングツールが装備されたニアセット(撮影現場の近く)のモバイル・グレーディングシアター。『X-Men: フューチャー&パスト』のカラーコレクションには、DaVinci Resolveが使用され、サイジェル撮影監督とデルード氏は、複雑なキーやセカンダリーコレクションを多用したデイリーグレードを作成したのだ。
「デイリーでこれほど多くのセカンダリーを行うことはめったにありません。」デルード氏は語る。「私たちは撮影セットのすぐそばで作業を行っていたので、トム(サイジェル監督)はランチタイムや撮影の合間に作業を見に来て指示を出すことができたのです。作業の多くは3Dで行いました。」
サイジェル撮影監督は、彼の手がける作品において、常に光化学およびデジタル・テクノロジーの限界を押し広げようと模索している。今回のデイリー制作においても、様々な「ルック」のアイデアを試したいと考え、デルード氏がDaVinci Resolveを使ってこれを手助けした。「トムは、画を極限まで変えることが好きなんです。そうやってアイデアを伝えたりコンセプトを明確にすることで、監督に色の方向性を説得していきます。この段階では、若干極端なルックですが、DIの段階でそのトーンを落として調整しました。」デルード氏はこう振り返る。
「トムは、DaVinci Resolveで何が実現できるかを、よく分かっていました。DaVinci Resolveの性能を正確に把握していたんです。」デルード氏はさらに続ける。「この作品では複雑なグレーディングをたくさん行いました。各ショットにつき、11くらいのノードを使用しています。これは、毎日フルDI処理を行っているようなものでした」
スティーブン・ナカムラ氏は、サイジェル撮影監督がデジタルで撮影したほぼすべての作品のDIグレーディングを手がけているカラリスト。ナカムラ氏は、サンタモニカにあるDeluxeのCompany 3のスタジオで、DaVinci Resolveを使用して同作の最終的なDIグレーディングを行なった。サイジェル撮影監督は、デルード氏と作ったルックを大幅に手直ししたが、デイリーでサイジェル監督が幅広い試みを行なったことはひじょうに役立ったとナカムラ氏は言う。
「エイドリアン(デルード氏)の作成したデイリーはいいガイドになりました。彼と一緒に作業したことで、トムはアイデアを膨らませることができ、DIシアターでの作業を非常にスムーズに進めることができました」