vol.20「花火大会やプロジェクションマッピング等で夜間飛行する場合の注意点」
文●野口克也(HEXaMedia)
※この連載は2017年9月号に掲載した内容を転載しています。
⬆著者撮影・編集の夜間飛行映像。
夜間飛行は航空法の規制対象
輝く大都市の夜景撮影、建物のライトアップやLEDイルミネーション。プロジェクションマッピングや花火など、昨今の夜景の空撮の撮影のアイデアは広がるばかりです。そんな夜間のドローン撮影のポイントをお話します。
ところでドローンによる夜間撮影は、基本的には法律で禁止されています。しかし、航空局に申請をして承認を得れば撮影可能になりますし、業務的にも夜間の撮影は欠かせない内容かと思います。ここでは、ドローンによる夜間飛行での撮影が、航空局の承認を得られている前提で、また、花火大会等の撮影においては、主催者の許可及び、イベント時のフライトの承認を得られている前提で記事を書いています。
昼間のうちのロケハンは必須
夜間でのフライト、特に暗くなってからの離陸の場合は、必ず昼間にロケハンをしましょう。確認するポイントは昼間の通常の撮影と同じですが、気をつけるのは夜間になってからの暗い視界で、状況視認が効かなくなることを念頭に置いて細部を確認します。すなわち飛行圏内にある高圧線の有無、離発着場所周囲の立木や低い配電線電柱など、夜間には見えなくなる障害物の有無です。
特に地方での撮影では実際自分の足元すら真っ暗で全く見えなかったりしますから、そんな前提でロケハンをしましょう。場合によっては反射材、反射テープなどでマーキングしたり、離発着コースにシビアな障害物の場合は障害物全体を照らす照明を用意します。また、可能な限り、明るいうちに、夜間と同じ撮影場所でコース・高度、離発着コースなど、「ロケハンフライト」を実施すると万全に近づきます。
離発着場所の2種類の照明の準備
多くの機体には最低限のLEDポジションライトが搭載されています。ただ、それらは地面を照らせる光量はありません。離発着場所の地面を照らす灯りは事前に用意しましょう。車の灯りでも目視的にはある程度有効ですが、別途に照明器具を用意するのが望ましいです。
この場合必ず、パイロットやオペレーターの目に直接光源が入らないよう配慮して、照明器具を配置します。またそれとは別に、LEDストロボライト等、高輝度かつ一定間隔で点滅するストロボライトを設置しておくと、FPV時で帰還時に自分の帰るべきホームポイントをモニターで発見しやすくなります。地面を照らしたクルマの灯りなどは、上空からはほとんど見えません。
アマゾンでは離発着場所を照らすLEDも販売されている
▲アマゾンではStartrcという販売元が離着陸地点に設置する4ピースLEDを出品しており、3000円前後で購入できる。24の赤色ライトと15の白色ライト。電源は単4電池3本。赤色点灯、赤色点滅、白色点灯の3つの点灯モードを備える。
前方LEDオフ
DJIの機体ではISO1600や3200等では機体前方についているLEDの灯りがレンズに入って映像に映り込む現象があります。これはだいぶ前のファームでLEDのON/OFFを選択できるようになりました。
カメラ設定のなかの「自動LEDオフ」でREC時に前方のLEDがOFFになります。コレは確かに便利な機能なのですが、REC時に光るのは後方の緑の点滅するLED(Positionモードの場合)のみになります。
となると、離着陸時などは機首方位がわかりづらくなるので、離着陸時の映像が必要ないのであれば、RECを切って、きちんと4つ点灯している状態のほうが安全に離発着できます。機体によってはOFF機能のないものもあります。取り外しができないLEDであれば、パーマセル等で遮光する準備も必要です。
夜間飛行中に機体のLEDライトが映り込む
▲DJIドローンの操作アプリDJI Go4の撮影設定。歯車マークをタップすると「前方LED自動オフ」がある。これをONにすると、飛行時に前方LEDが自動で消灯される。
補助員の配置
国交省標準の飛行マニュアルに準拠した夜間飛行の承認を得ている場合は、操縦補助員を追加配置することになっています。補助員はロケハンから参加して、特にドローンの障害になるような物件との衝突防止のためにパイロットに注意喚起しましょう。
離発着時の注意
離発着時、特に着陸時に自分の近くに機体を引き寄せる場合、LED4つだけの機体の情報では、機体の傾きや、スピード感が捉えにくくなります。昼間と比べると、ほとんど分からないといえるような状態です。自分に向かって思いの外高速で接近してしまい、止まりきれないかも!? というような経験もあります。進入コースを少し左右や上下にずらしつつ、最終的にゆっくり進入させることを頭の隅に置いておいてください。
撮影自体は昼間の撮影と基本は変わりません。ただドローンのカメラは小型化されているために、撮像素子が小さいものが多く、あまり感度がよくありません。必然的にISO感度が高くなってノイズが目立つことが多いです。例えばせめて、辺りが真っ暗になりきってしまう少し前の時間を狙うなど、その特徴を踏まえた撮影設計をしましょう。
花火大会等のイベント撮影
数年前からゲリラ的に撮影されてきた花火大会での空撮も少しずつ市民権を得られつつあります。特殊な撮影状況ですので、注意事項を数点列挙しておきます。
①航空局への申請、許可取り
花火大会というシビアなイベントでは、たとえ航空法の包括承認をもらっていても、イベント毎に夜間・高高度案件として申請することをおすすめします。主催者の許可ももちろんですが、管轄の警察署などへも届け出をしておいたほうがトラブルを回避しやすくなります。
②非常時落下場所の確保
花火本体や破片の直撃を受けたりすると、機体墜落の可能性は高くなります。水上、海上など、花火打ち上げ場所に近い場所のみを飛行エリアとし、観客上空等へのフライトは避けるのが望ましいでしょう。
③電波状況の把握
当日数万人単位で観客が集まり、その警備などの無線電波も考慮すると会場近辺はテストやロケハン時とは異なる電波状況になります。確認は花火大会当日にならないと難しく、テスト時には同じ状況を再現できませんが、離発着場所やフライトコースを観客からできるだけ離すことで、ある程度低減できます。
④撮影高度の把握
打ち上げられる花火の高度を事前にチェックし把握しておきましょう。花火の号数が上がれば上がるほど、打ち上げ高度も高くなります。尺玉(10号玉)でも300m以上の高度で打ち上げられます。航空法の申請項目に高高度も付け足すのは、150m程度の撮影高度だとほぼ、花火を見上げる程度の高度にしかならず、空撮的撮影アングルにはなり難くなるからです。