2017年11月号の三脚特集「三脚選びの新常識」では、最後にリーベックを取材して、ビデオヘッドの中身を見せてもらいながら、カウンターバランスやトルク機構について教えてもらった。誌面の都合上、どうしても写真が小さくなり、かつ掲載できなかった写真もあるので、WEBで追加レポートをする。本題の部分は本誌の42-43ページを読んでほしい。
平和精機工業(リーベック)は1955年(昭和30年)設立。リーベックというネーミングからして海外のメーカーだと思っている人もいるようだが、埼玉県八潮市に本社があり、そこで開発、製造を行なっている日本のメーカーである(製造は海外でも行なっている)。
外観は昔ながら工場の雰囲気だが、一歩中に入るとモダンなショールーム風になっている。最近は海外からこの八潮の本社までクリエイターが来ることもあるという。
機材協力した映画のポスターも貼られている。特にミニジブなどは業界定番になっているので、映画やドラマで使われることが多いのだろう。
通路の片隅にあった歴代の三脚。当初は写真用三脚のOEMメーカーだったが、1970年代にHEIWAブランド で自社三脚の製造販売を始めた。80年代終わりからリーベックシリーズ というビデオ三脚 がスタートする 。下(写真中央)は創業者(現会長)がビデオ三脚をという依頼を受けて、HEIWAブランドで作った 第1号のビデオヘ ッドで、ビクターの業務用ビデオカメラとバンドルされていたという。リーベックというと今ではビデオ三脚のメーカーというイメージが強いが、かつてはそうではなく、NABに出始めたのも1990年代になってからだという。実は映像業界では新興メーカーだったのだ。
実は創業者が書いたビデオヘッドの最初期の設計図が見つかった。自分でビデオヘッドの構造を研究して設計図を起こし、アルミ材料から削り出して加工して、手作りで作り上げたもの。
実は今回取材した私(編集部一柳)は、数年前にもリーベックの工場を取材していて、そのときは創業者(会長)がグリースを塗っている写真を撮らせていただいた。現在もご健在だが、出社はされていないとのこと。工場内はそのときから大きく配置換えがされていて、変わっている部分もあれば、変わっていないところもあった。設計チームにはCADも導入され、20-30代の若いスタッフがほとんどになっている。うまく世代交代がなされているようだった。
現場の製造スタッフもベテランと若手が混在している。
ベデスタルの部品など複雑なものは社内で汎用機で削り出している。削った時の音でも判断するので、こういう作業はベテランの職人の力を借りながら行う。
アルミの切削加工を行う工作機械。こちらは若手がメインで操作。
今後は、こういった工作機械を増やし、生産キャパシティを増強するという。アルミの切削加工で少量生産で高付加価値の大型製品をこの日本で作っていくそうだ。
とても美しく配置されている部品庫。どこに何があるか一目瞭然。実はこの部品の管理がきちんとできるとうのが海外では難しいのだという。日本のスタッフの場合、社員、パートともに、自分たちで物の置き方、出し方、仕分け方を工夫し、お互いが使いやすくするという文化が浸透していて、そこは教えなくもできる。何気ないことだが、それが日本の製造現場の強みだという。
部品庫に隣接した組み立て工程。部品庫から物を持ってきて、組み上げていく。ここは手作業。取材時はちょうどお盆時期だったため人が少なめ。
REMO30のモーター部分を組み立て中。
門を入ってすぐのところに昨年オープンしたサービスルームがある。修理対応は、持ち込みも受け付けている。取材時期はちょうど夏休みと重なり、多くの修理依頼が送られてきていた。埼玉なので近場の人が車で持ち込むこともあり、その際に新製品を体験できるショールーム機能も併せ持つ。ただし販売は行なっていない。
工場の取材というと、見学ラインがあっても「ここは撮影不可」というところが多いものだが、今回、ざっくばらんにいろいろなところを見せていただき、記者の稚拙な質問にも丁寧に答えていただいた。自分たちが使う機材が生まれて来る現場を実際に見ることは、道具に対する愛着にも繋がる。取材に協力していただいたことに感謝したい。
関連動画
三脚特集内の関連動画「リーベックRH25Dーチルト動作によるカウンターバランス機構の動き」
リーベックのWEBサイト http://www.libec.co.jp/