静止画時々動画という人に最適なハイエンドカメラDC-G9を大判カメラに装着してテスト撮影

Report◉Multicamlaboratory 渡邊 聡

 スチル写真撮影がメインの方向けのハイエンド機として登場したDC-G9ですが、フィルム時代の超高画質大判カメラに装着してハイレゾモードで撮影したらどうなるのか関心があり、早速mukカメラサービス横浜関内の小菅さんにお願いしてHORSEMAN LS45レンズボードを加工していただき、沖縄で活躍していた宮里涼ちゃんにモデルになってもらいテスト撮影しました。当日は大変寒く屋外での撮影は無理と判断し、お世話になっている大宮のビデオプロダクション光洋さんに無理を言って会議室をお借りしてスタジオに見立てて行いました。

パナソニックDC-G9。日本でG9 PROという愛称がついている通り、静止画系のフラッグシップモデル。

 

特注で製作して頂いたアダプターボードは、HORSEMANのレンズボードにNikonマウントを埋め込んであり、Nikon→MFTアダプターを使いG9をグリップがぶつかりそうなぐらいボードギリギリまで寄せて装着します。

レンズはNikonの大判標準レンズでポートレートに適した180mmをセレクト。35mm換算360mmとなります。ワーキングディスタンスが長くなり、今回苦労しました。

プロ機材ドットコムで発売予定のバッテリー駆動のビューティライトと4Kモニターも同時にテスト。このモニターは非常に薄型でこういったモニタリングの用途には素晴らしく便利なので、いずれご紹介できると思います。ご期待ください。

 

さて、DC-G9で一番気になっていたハイレゾモード(ボディ内手ブレ補正の機構を活かしてセンサーをシフトさせながら、8回の連続⾃動撮影を⾏いカメラ内で⾃動合成処理をし、約8000万画素相当の⾼解像で撮影できる)で涼ちゃんを撮影してみました。

ハイレゾモードで撮影する対象は動かないものが前提ですが、無理を承知で涼ちゃんに動かないでねとお願いして8回の連続⾃動撮影後、カメラ内部で⾃動合成処理が行われた結果、こんな感じで仕上がりました。

パソコンレスでステッチしてくれるので結果がスグに確認でき感動しました!(編集部注:サーバーの関係上、横2000ピクセルに解像度を落としています。ご了承ください)

LUMIXとしては静止画系のフラッグシップになるG9ですが、実は4K/60pの動画撮影が可能で、ちょっとした動画であれば、GH5と同等クオリティの映像の撮影できます。無茶な撮影に嫌な顔一つせずに付き合ってくれた涼ちゃんを4K/60p動画で自己紹介を撮ったもの。これくらいの短いインタビューカットであればG9で充分です。

 タンスの肥やしになっていた大判フィルムカメラでしたが、DC-G9のデビューによってこのようなハイレゾ画像が簡単に手に入るようになり、またしても静止画も動画もいろいろと工夫して撮ってみようという気になりました。

 

なぜ大判カメラにマイクロフォーサーズなのか?

 昔から、道楽趣味で集めている大判カメラをなんとかして活用できないかと小菅さんと色々トライして来ました。なんでそんなことやりたがるかというとRISEFALLで垂直線のパースペクティブを調整して建物を形良くまっすぐにしたり、商品の形を自然にしたり、TILTSWINGで被写界深度を調整して画面全面にピントを合わすといった大判カメラならではのテクニックを動画の撮影でも使いたいからです。

 キャプチャー用のカメラですが、フルサイズ機のほうが良さそうに思いますが、上記のようなアオリをしようとすると『スグにマウントでけられてしまうのでやめといたほうが良いですよ』と小菅氏からアドバイスいただいたことがあります。

大分昔となってしまいましたが、InterBEE2011パナソニック・スイート会場にてAG-AF105を大判カメラに装着して展示したことがありました。

その頃私は、DMC-GH2の時代からフィールドカメラにこんな感じでモニターまでセットしてロケで使っていました。

カブリかぶっちゃってこんなの誰が見ても姿が怪しいですよね。でも本人本気なんですよ。

 

超貴重な英国マイクロ・プレシジョン・プロダクツ・リミテッド(MPP)製リンホフのフェイクカメラもマイクロフォーサーズ仕様にして保有しています。マニアすぎますね。

最近のお気に入りは、このTOYO VIEW Gにお宝のTopcor 90mm f6.3を組み合わせたものです。こちらは、どの大判カメラでもGH5GH5Sが利用できるように小菅さんにリンホフのレンズボードにマイクロフォーサーズのマウントを装着してもらいました。汎用性があり超便利です。

このように市販のNikonマウントボードに変換アダプターをかけ、カメラを装着するとピント面が後退しすぎてしまい合焦しませんし、アオることもできません。(以下の写真の状態)

 

 大判カメラにデジタルカメラをアダプター経由で装着するノウハウは大変わかりずらいと思うので小菅さんに解説してもらいましょう。

 

mukカメラサービス小菅さんの技術解説

ご紹介ありがとうございます。mukカメラサービスの小菅宗信と申します。

 今回頂いたオーダーは、大判カメラHORSEMAN LS45にデジタルカメラDC-G9を取り付けることでしたが、拡張性を持たせるためにHORSEMAN LS45のレンズボードにNikonFマウントを取り付け、Fマウント用の変換マウントアダプターを経由して様々なマウントのミラーレスカメラが装着できるように組みました。ピント面は、マウントアダプターと装着したミラーレスカメラのフランジバック分後退します。私がミラーレスカメラをお勧めする理由は、ピント面の後退を最小に抑えられるからです。それがテクニカルカメラとしてどれだけアオれるか、その角度を取れるかを決定します。さらにワイドの方向では、フランジバックの距離でどこまでのレンズを使えるのか決まります。角度を稼ぐためには、ピント面の後退を抑えることが大事です。EOSなどの一眼レフ機では、ピント面の後退が激しくすぐにけられてしまいます。フランジバックの距離ではミラーレスカメラが有利なのは皆さんご存知の通りです。ピント面の追い込みは、カメラのグリップとのせめぎ合いです。今回Fマウントを採用したのは、グリップが大きくて大判カメラにぶつかる場合、薄い中間リングを入れて伸ばすことができるからです。さらに追い込むには、グリップの無い機種を選択することです。グリップがなければもっと短いマウントアダプターをセットすることができます。ボードに張り付くようにカメラをセットできれば、大抵のワイドレンズも使えてアオリも充分に効くでしょう。

 お客様のご要望でままあるのは、α7系のフルサイズセンサーを装着したいということです。そこには落とし穴があり、α7ではマウントの口径の割にセンサーサイズが大きいので自らのマウントでケラれてしまうのです。変換アダプターのボディ側をα7のマウントギリギリまで削り込んでも満足にはアオれないといった経験があります。それならば、所詮大判の面積には到底届かないのだから、フルサイズは諦めてAPS-Cやマイクロフォーサーズのミラーレスカメラの装着をおすすめしております。

最後にDC-G9を装着してテスト撮影で使用したHORSEMAN LS45は、エクスパンダブルモノレールが標準装備されており、蛇腹をダブルにするアクセサリーを使えば、このように接写も自由自在にできるので大変重宝します。

如何でしたでしょうか?

大判フィルムカメラは、昨今驚くような捨て値で売られており、大変入手しやすくなっています。静止画ならフォトショップで簡単にできますが、動画だと手間が掛かるアオリのテクニックがアダプターを一つ製作してもらうだけで手軽に楽しめます。私も使ってみたいなと思われた方は、ぜひ一度mukカメラサービス横浜関内まで小菅さんを訪ねて相談しに行ってくださいませ。最適なアドバイスでアダプター加工も親切丁寧に対応して頂けます。

mukカメラサービス横浜関内 

爆安チャイナレンズは非球面採用だった

せっかくDC-G9をお借りできたので気になっていた爆安チャイナレンズも小菅さんにお借りしてテスト撮影してみました。なんとメーカー名の記載がありません。光学設計者に見てもらったところ、どうも非球面レンズも入っているそうです。それで価格は8500円。

フォトスタイルのL.モノクロームで静止画を撮影。もちろん4K動画で使ってもいい感じになります。

 

小菅さんの爆安チャイナレンズのボケ紹介動画はこちらです。

mukで販売しているマイクロフォーサーズ用25mm F1.8 マニュアルフォーカスレンズの詳細はこちら