今年のNABで発表されたPMW-F55用ポータブルメモリーレコーダーAXS-R7(価格は80万円)。
今やテレビ局などでの4K制作では定番になりつつあるF55だが、多くのユーザーは、RAWレコーダーと組み合わせで運用しているという。R7は、4KカムコーダーF55で4K/120pを可能にするRAWレコーダーであり、従来のR5の上位モデルにあたる製品。製品名は「ポータブルメモリーレコーダー」であり、RAWレコーダーという名称でないのは、ソニーが新たに提案する新フォーマット「X-OCN」に対応しているからだ。
では、そのX-OCNとは一体何なのか? 発表当時から話題になっていたが、AXS-R7の発売を前にして、製品およびX-OCNについての説明会が開催された。


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X-OCNとは、Extended tonal range Original Camera Negativeの略。RAWデータに比べてデータサイズを低減しつつ、RAWと同水準の高解像度、高色再現性、広いダイナミックレンジ情報を保持することにより、ポストプロダクション工程におけるカラーグレーディングや合成等の素材として圧倒的な自由度を提供する、としている。ソニービジネスソリューション主催ということもあり、技術的にどういうことをしているのかという説明はなく、技術的にはブラックボックスなのだが、実際に画質、ワークフローについてユーザーに明らかにメリットがあるのかどうかも含めて評価してほしい、というスタンスだった。
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X-OCNのメリットはRAWと同じ16ビットの階調がありながら、記録レートを落とせるというところ。X-OCNにはSTとLTの2つのモードがあり、STでは660Mbps(24p時)。これはRAWよりも圧倒的に記録レートが低いだけでなく、このジャンルではデファクトになっている、4K ProRes 422 HQ 10ビットよりもデータ量が抑えられる。でありながら、16ビットの階調を持つというのがポイントだ。X-OCN STはRAWに対してデータサイズ約7割、X-OCN LTは、同じく約4割のデータサイズになる。
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ここまでデータサイズが抑えらえるとすると、ビデオフォーマットであるXAVCとそれほど違わないということになる。たとえばXAVCはIntra Class 480は、その名のとおり480Mbps、Class 300は300Mbpsである。X-OCNのポジショニングについて、ソニーでは以下のように説明している。XAVCは4Kビデオフォーマットであり、サーバーからの出力にも使われるフォーマットなのに対し、X-OCNはカメラ収録専用フォーマット。16ビットの階調が保持するとともに、RAWと同様に、撮ったあとでホワイトバランスとISOなどを設定することができる。つまり、ポストプロダクション前提のフォーマットということになる。
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このX-OCNというフォーマットは、現状では、F55(もしくはF5)と組み合わせたレコーダーAXS-R7で、AXSメモリーカードで記録できる。AXSメモリーカードにはより高速のAXS-A1TS48(1TB)と、AXS-A512S48(512GB)が加わった。512GBのカードでの記録時間は以下の通り。
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X-OCNフォーマットで録られたデータは、ソニーが提供するRAW Viewerで現像や変換などができる。
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さらに主要グレーディングソフトでも対応予定となっている。
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X-OCNは今後、F55+R7という組み合わせで現場で使われはじめ評価されていくと、今後は対応機種を増やしていくことになるという。たとえばFS5でも、FS700同様に、従来のRAWレコーダーAXS-R5、インターフェースユニットHXR-IFR5と組み合わせればRAW記録が可能になる。(FS55本体にRAWインターフェースアップグレードライセンスCBKZ-FS5RIF:65,000円が必要) ただし3G-SDI経由のため、圧縮せざるを得なかった。したがって、RAW記録といってもそのメリットを十二分に発揮できるわけではなかった。
今後、X-OCNがどう拡がっていくのか、RAWにかわるフォーマットとして定着するのかどうか、注目していきたい。
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