ブラックマジックデザインは、秦建日子監督による新作映画『クハナ!』の撮影に同社の製品が使用されたことを発表した。撮影にはURSA Mini 4.6KおよびURSA Mini 4Kが使用され、DaVinci Resolve Studioでグレーディングが行われた。
『クハナ!』は、人気ドラマ『アンフェア』の原作小説『推理小説』や、今夏クールに放送されたドラマの中でも評判の高かった『そして誰もいなくなった』など、数々の人気ドラマの脚本や原作を手がけている秦建日子氏の初監督作品。三重県桑名市を舞台に小学生のジャズバンドが奮闘するストーリーで、人口減少に悩む町の小学校に元プロのジャズプレーヤーが赴任してきたことから子供たちがビッグバンドに挑戦するようになり、その奮闘ぶりを見て街全体が徐々に活気づいていくまでを涙あり笑いありで描いている。
左がタカハシケイ氏、右が秦建日子氏。
撮影監督は、ミュージックビデオやコマーシャル、コンサート映像の撮影・演出を数多く手がける株式会社KIDのタカハシケイ氏。メインカメラとして全編をURSA Mini 4.6Kで撮影し、一部マルチで撮影した部分にURSA Mini 4KとBlackmagic Production Camera 4Kを使用している。
『クハナ!』は屋外での撮影も多く、予算やスケジュールの関係であまり照明を焚くことができない状況だったため、そういった低照度での撮影でURSA Mini 4.6Kの本領が発揮されたという。
「気に入っている場面のひとつに夜のバス停のシーンがあるのですが、照明が焚けない状態でバスの明かりのみでも、きちんと写っていました。夜なのに不自然に明るいのは好きではないのですが、URSA Mini 4.6Kで撮った映像は自然な暗さで、その中でも必要なものはきちんと写っているところが気に入っています」と秦氏。さらにタカハシ氏も「他にも、裸電球と外光がほんの少し射す程度の照明環境で撮影したシーンがありますが、細部のディテールまできちんと残っていた点はすごいと思いました。黒ひとつとっても様々だと思いますが、そういった黒の表現力が豊かです」と話す。「基本はISO800で撮影していましたが、よほど暗い場合は1600まで上げてRAWで撮影しました。15ストップのダイナミックレンジがあることで、暗くても画にきちんと色が乗るんです。」(タカハシ氏)
また、現場ではURSA Mini 4.6KにBlackmagic Shoulder Mount KitとView Finderを装着してのハンドヘルド撮影がメインだったという。「URSA Mini自体が軽い上に、純正のアクセサリを付けただけで、他にリグも一切必要なかったので機動性がとてもいいですね。」とタカハシ氏。「View Finderはピントの山が掴みやすくて、HD解像度でこのサイズのものは他にありません。この作品では後からのグレーディングを前提として色の振り幅を取りたかったので、ハイキーにもローキーにも寄らないように心がけていたのですが、View Finderはフォールスカラーが見られるのも便利で、現場でかなり使いました」と評価する。
撮影は、効率性を上げるため基本的にProRes HDで収録し、状況に応じてRAWで収録された。「撮影期間や予算も限られた中で、効率良く撮影を進めていかないといけないというプレッシャーがありました。後処理の段階になって『もう少しフレーミングを変えればよかった』と思うことがあったのですが、そういう微妙なシーンは不思議とタカハシさんが4.6Kの解像度で事前に収録してくれていたので、かなり助けられました」と監督は話す。「物語がノスタルジックな感じなので、全体のトーンも淡くしました。テレビドラマは照明が明るすぎると感じることがよくあるのですが、今回の作品はそういうことがなく、自然な明るさとトーンが得られたところがひじょうに気に入っています。その場の空気感が、ショットのなかにきちんと収まっている感じです」と秦監督は結んだ。
●『クハナ!』公式サイト
http://kuhana.jp/
●ブラックマジックデザイン
http://www.blackmagicdesign.com/jp