Vil Tokyo

Shun Murakami(右)、Ivana Micic(左)ご夫婦によるクリエイティブユニット。ミュージックビデオ、ファッションブランド等のプロモーション映像を中心に活動。Murakamiさんは映像を、Micicさんは写真を担当。MurakamiさんはYouTubeで過激パフォーマンスを発信する「腹切万歳」のリーダー・ZENIMとしての顔も持つ。Micicさんはセルビア出身で日本語と日本の文化を学び、2016年に来日。Vil Tokyoとしての活動は今年で3年目となる。

WEB●http://vil.tokyo/

取材・文●笠井里香/写真提供●Vil Tokyo

夫は映像、妻は写真のユニット

Murakamiさんは音楽、Micicさんはファッションを中心に得意なフィールドを持ち、双方の分野でお互いに刺激を受けながらオリジナリティ溢れる映像を生み出している。

「友人に『jackass※』を見せてもらったのがきっかけでYouTubeで“HARAKIRI BANZAI”の活動を10年前に始めました。過激な映像が多いのですが、この活動で映像制作にさらに興味がわき、前から好きだったミュージックビデオを作ってみたんです。それが6年前くらいでした。東京で本格的に仕事を始めたのは2017年の中頃からでそれまでは地元、気仙沼で地域の映像なども作っていました」(Murakamiさん)

※2000〜02年の間、MTVで放送され人気を博した過激なパフォーマンスを売りにしたテレビ番組。

「セルビアでも日本語と日本文化勉強していて、留学で日本に来て、東京外語大に入学しました。写真は元々好きで独学ですが、これを仕事にできたらという漠然とした思いは持っていて、卒業する頃に出会った彼に背中を押してもらいました」(Micicさん)

 

お互いがお互いのアシスタント

ライブ撮影の際に、現場に一緒に入ってみようと村上さんが声をかけたことがきっかけで、共に仕事をするようになったという。現在は撮影から編集、仕上げ、納品まですべてを1人または2人で行うミニマムな編成が基本だ。

▲ MV撮影現場の様子。

「ムービーの撮影の際には彼女が、スチールの際には僕がという形でお互いがお互いのアシスタントとして動いています」(Murakamiさん)

「一緒に仕事をするとスタイルが全然違うので、お互いのダメ出しをしてケンカが多くなるんです」とMicicさんは笑う。それでも、お互いが持っていないものを補完し合い、Micicさんのコミュニケーション能力の高さ、独自の視点が現場を盛り上げて、仕事がスムーズに運ぶことが多いそうだ。

▲ モデルの作品撮り。現場には夫婦二人で入り、映像と写真両方を納品するケースが多い。

見た人が自分の映像だと
わかる作品を作っていきたい

「自分自身のアングルというものを確立し、見た人が僕の作った映像だとわかってくれるような作品を作っていきたいです。僕らは2人とも独学でこの世界に入り、何のコネも持っていなかったので、SNSを武器にしながら、これからの仕事にもつなげたいです。Ivaのフィールドであるファッションの分野での映像にも積極的に取り組んでいこうと思っています」(Murakamiさん)

「最近フィルムカメラ(キヤノンNew F-1)をもらったんです。古いけれど新しいフィルムの面白さもこれからの仕事に生かしていけるといいなと思います」(Micicさん)

他人でありながらひとつの共同体であり、ある意味ではひとつの生命体ともいえる“夫婦”という形だからこそ、生み出みだせる独創的な世界があるのかもしれない。

Vil Tokyoの作品

惑星アブノーマルMV『あの日の僕ら』】 

TANEKO(vo)とテナ(key)による2人組音楽ユニット・惑星アブノーマルのミュージックビデオ。マゼンダとシアンのライティングが印象的な作品。

Madlow

フランス人DJ・Madlow Laurent氏の来日公演に合わせて作られたアフタームービー。Shibuya TKでのパフォーマンスの模様や街を歩くMadow氏の様子を捉えた。

 

 

Murakamiさんがよく使う映像機材リスト

▲ワンマンの撮影が多く、機動性を重視した機材構成。ジンバルと自由雲台は即座に付け替えできるようにプレートを統一している。

Micicさんがよく使う映像機材リスト

▲キヤノンEOS 5D Mark Ⅲをメインに、MurakamiさんからのプレゼントだというフィルムカメラのAE-1 Programや「チェキ」としても知られるInstax mini8なども活用する。

※この記事はビデオSALON2018年6月号 より転載