「特殊効果」のための素材が生まれる場所
『全カット生撮り特殊効果素材集101』を作った操演・國米修市さんの作業場
本誌連載中の漫画家・タイム涼介氏による「After EffectsでVFXはじめました。」でも活用されている、『全カット生撮り特殊効果素材集101』の生みの親である國米修市さんが、新たに特殊効果素材を生撮りしてると聞きつけその撮影現場にお邪魔させていただいた。特殊効果のための素材を生み出す瞬間に迫る。
8月3日、火花撮影中のムービーを追加しました。
REPORT◉編集部・岡堀
火花一つ一つに
黒い布で窓が覆われた薄暗い作業場は、撮影機材と小道具で埋め尽くされていた。金属が擦れ合う激しい音がして火花が散る。アジトのようなこの部屋で行われているのは、生の「操演」だった。
國米さんが鉄の板に電動カッターを当てる。ハイスピード撮影が可能なカメラ、ソニーのFS700をまわしてるのは本誌でもおなじみの岡野肇さん。國米さんとはもう40年近い間柄だという。
量や飛ぶ方向を調整された火花がスローモーションでおさえられ特殊効果の素材となる。素人からしたらただの火花でしかない。しかし、國米さんの言葉によって一つ一つに意味が与えらえていく。
「銃を撃った時に出る短い火花とバイクがスリップして出てる長い火花。必要なシーンの必要なイメージがあるからそれを作り出すんです」
操演による操演のための
「操演」とはワイヤーアクションやミニチュアの操作、爆発や炎、煙などの演出するプロフェッショナルのことをいい、國米さんはその第一人者。予算の関係からほとんどの爆発が素材を利用したCG合成になりつつある今でも、國米さんはこの作業場で実際に炎を起こし、瓦礫を爆発させたオリジナルの素材を撮影し使っている。前回作られた素材集の中にも、過去実際に使用するために撮ったものも入っているという。
「自分で素材撮ってる奴なんて俺ぐらいですよ(笑)」と恥ずかしそうに語る國米さん。その言葉には操演へのこだわりと特撮への愛が詰まってる。新作では、火花や煙などのジャンルごと分けた素材集を考えていると教えてくれた。
「國米さんは実際に使う側の人だからこういうのが欲しいっていうのが分かる。だから無駄なものがない」と岡野さんはいう。数々の自然現象を作り出してきた操演の技と最新の機材、合成への深い知識を持つ國米さんだからこそ、使い勝手のいい素材集を作ることができるのだ。
特殊効果が生まれて
「効果音もそうだけど、テレビで使われる素材は20年前から変わってない」と岡野さん。SD解像度の素材を使っていても、一瞬のため気がつくことはない。また、現実と違和感のないぐらいCG技術は進化している。
それでも國米さんは生撮りにこだわる。かつて操演が特撮の自然現象を司る神だったように、映像の細部にリアリティを追い求めていく。神は細部に宿るのだから。
國米修市◉1959年4月29日生まれ、熊本県出身。東宝、東映等の映画界において長年にわたり、操演を担当。近年はCGや本編監督及び特技監督も行っている。
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