第4回 ナレーション用マイクテスト
Report◎三島元樹
みなさんこんにちは! 連載第4回目は予告通りマイクのお話。当初はマイクの構造とかスペックとかのお話をしようと思っていたのですが、そんな座学的なことよりもっと実用的なことをお伝えできたらな…と思ったので、今回はナレーション録音に的を絞り、高価な定番マイクと普及価格帯マイクの録り比べを敢行しました! ダイヤフラムの大きさや価格帯によって音がどう違うのか…気になりますよね? 音声ファイルに加え、周波数解析したグラフもご用意しましたので、是非ご自分の耳と目で確かめてみてください!
今回、収録は宮地楽器 神田店のRECスタ(写真1、2)にて行いました。
写真1 RECスタ(https://miyaji.co.jp/studio/index.php)。常設のドラムキットを除けてナレーションスペースを作っていただきました。
(写真2)スタジオ内には簡易防音ブースもあり、Pro Toolsを始め主要なDAWをインストールしたiMacが常設されている。この中にひとり籠もってボーカルやナレーションを録ることも可能。
本来はボーカルやドラムの録音に特化したセルフRECのスタジオですが、吸音パネルなどで工夫すれば簡易的なナレーション録音も可能です。機材も完全プロ仕様!とは言え、あくまでも音楽用の録音スタジオ。ナレ録りで使用するにはワークフロー的な工夫も必要になるのでご注意ください。
さて、肝心のマイクですが、ラージダイヤフラムのコンデンサーマイクと、ガンマイクの2種類でそれぞれ集めてみました(写真3)。また、今回はRODE NTG3(写真4)もお借りできたので、番外編としてご紹介します。
(写真3)中央下から時計回りにU 87 Ai、MKH 416、AT2035、NTG4。U 87 AiとAT2035がラージダイヤフラムのコンデンサーマイク、MKH 416とNTG4がガンマイク。
(写真4)RODE NTG3。ブラック塗装のモデルもある。
マイクプリアンプはSym・Proceed SP-MP2を使用(写真5)。ナレーターは都内の大学に通う杉浦千尋さんにお願いしました(写真6)。ファイルは24bit/48kHz WAVで、コンプやEQなどでの加工は一切しておりません。それでは、各マイクの録音結果を見ていきましょう!
(写真5)最上段の2台。無色透明の極みのようなマイクプリ。超高解像度でマイクの特徴をそのまま増幅してくれる印象。
(写真6)マイクとの距離は60cmほどと、若干オフマイク気味に設定。もう少し近づくと低域がしっかり出てくるだろう。
【NEUMANN U 87 Ai】
スタジオ用コンデンサーマイクの世界的定番! ノイマンの代表的マイクです。僕もナレ録りにおいてはいつもこの音を念頭に置いてます。声にとって重要な中低域〜中域の密度が高く、6kHzあたりのプレゼンスもあるので、存在感がありつつ抜けの良い音が特徴ですね。ナレ録りに関しては録り音自体がすでに理想の状態に近いので、MAでは微調整程度で済んでしまいます。さすがは定番モデル!
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【audio-technica AT2035】
同社の上位機種は、その脚色のない素直な音に僕も信頼寄せているのですが、これはそれらよりも若干明るい印象ですね。グラフを見ても、14kHzあたりから上はU 87 Aiよりも伸びてるのが分かります。そのぶん中域が少し大人しく感じますが、価格差を考えるとかなり優秀です!そのままでも十分ですが、EQで500Hzと6kHzあたりを適度にブーストしてあげると、よりリッチなナレーションに仕上がりました。
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【SENNHEISER MKH 416】
もはや説明不要のガンマイク定番。ガンマイクはラージダイヤフラムに比べると総じてナローレンジですが、その中でも中域がギュッと締まっていて、声の芯をしっかりととらえていますね。とても音作りがしやすく、定番になるのも頷けます。ナレーションに使う場合は、250Hzと500Hz、そして6kHz周辺をそれぞれ軽くブーストしてレンジ感を出してあげると、より映える音になると思います。
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【RODE NTG4】
若干S/Nが悪い(自己ノイズが多い)ですが、ガンマイクとしては標準的。MKH 416よりも少し重心が高い音で、1.5kHzあたりに少しピークを感じますが、思ったほど差がなくて驚きました!EQで300Hz付近をブーストして厚みを出しつつ、1.5kHz付近を2dBほどカット、そして6kHzあたりをほんのりブーストしてあげるととてもバランスが良くなりました。
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【RODE NTG3】
これはかなり個性的なマイクですね。とにかく音が太くてノイズが少ない! ホントにガンマイクなのかと疑うほど(笑)。その個性ゆえEQでの処理は必須となりますが、使いこなせると武器になりますね。HPFで200Hzから下をなだらかにロールオフさせ、EQで6kHz付近をちょいと持ち上げるだけでU 87 Aiそっくりになります! 音楽でも低音楽器に使ってみたいです。(マイクプリのチャンネル数の関係で、このマイクだけ別テイクとなっています)
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いかがでしたでしょうか? 個人的には、ガンマイクでも指向性に気を遣いつつ、後処理をしっかりすれば望む音質を得られるということが収穫でした! 今回は女声のみでのテストであり、当然ナレーターの性別や声質、マイクとの距離によって録り音も変わるし、その後の処理も変わってくるので、ここに挙げたのはあくまで一例。マイクを購入する際は、とにかく自分で試してみて、音や使い勝手を確認してみることを強くオススメします!
●この記事はビデオSALON 2018年7月号 より転載