ソニーは業務用製品やサービスの内覧会を6月13日に本社にて開催した。映像制作関連では、NAB2019で発表されたものが、日本で見られる初めての機会となる。

FS7とFS7 IIをショルダーENGスタイルで運用するキット

カムコーダーとしては新製品はないが、FS7、FS7II用をショルダースタイルで運用する専用アタッチメントキットとB4マウントズームレンズを装着できるマウントアダプター LA-EB1を展示していた。

ボディ後部にはストリーミングやファイル伝送を実現するネットワーク機能やワイヤレスオーディオレシーバーのスロットイン機能を持つ拡張ユニットを装着。ファインダーもENGスタイルのものに。

レンズマウントアダプターのLA-EB1はB4からEに変換するもので、このアダプター使用時は撮影はHDになるが、ENGズームレンズ利用できるようになる。2019年12月発売予定。

 

4Kマスターモニターは有機ELから液晶へ

昨年のInter BEEで発表され、すでに今年の1月から出荷されているが、ソニーの定番のマスターモニターがリニューアルした。BVM-X300と言えば、ポスプロのマスモニとして多く使われているが、その後継機として登場したのは有機ELではなく、「液晶」だった。X300では、4K HDR制作においてピーク輝度が足りないという声があり、X310では、液晶デバイスを使い、高コントストと高輝度を実現。一般的な液晶では輝度は確保できても、黒が浮いてしまうという課題があったが、HX310では新開発のパネル信号処理技術により、ピクセルひとつひとつが沈んだ正確な黒を再現できるようになった。

色再現もBT.2020やDCI-P3に対応するのはもちろん、X300と比べて遜色ないどころか、広がっている。価格もX300が4,280,000円だったのに対し、HX310は3.980,000円と下がっている。

モニターキャリブレーションサービス

モニターは経年変化で色再現性に違いが出てくる。PC用のプロフェッショナルモニターではユーザーが自分でキャリブレーションをする機能があるが、放送用モニターにはそういった機能がない。ソニーではマスターモニター、業務用モニターのキャリブレーションをソニーの出荷基準に基づいて行うサービスを7月より開始するという。

モニター製造工場の出荷基準に基づいて高精度なプローブを使いホワイトバランスを調整する。BVM/PVMクラスは調整結果レポートを作成するという。

サービスは、出張もしくはサービスセンターへの配送で対応する。サービス料金はBVMだと7万円、LMD-Aシリーズは35,000円から。

クラウドを利用したマルチカメラ配信のシステムを参考出展

欧米では手軽なライブ配信の需要が大きくなっているという。最終的にSNS上でのライブ配信を想定したマルチカメラ配信システムの提案。最近のカムコーダーはWi-FiモジュールやEthernet端子を利用して、ストリーミングできるものが増えてきた。ここではZ90でデモ。各カメラがクラウドのサーバーに送った素材をスイッチングしたり、テロップを載せたり、クリップ再生したりして、配信する。ウェブアプリなので、マシンのスペックは問わない。ただしカメラからの送りは720pに制限されるが、このクラウドスイッチャーから、ライブ配信はフルHD解像度で出せるという。つまり素材の再生はフルHDで可能。

アプリはシンプルなデザインで、プロ向けというよりは、一般の人でも操作できるようなインターフェイス。ロゴなどもインポーズすることができる。

カメラはZ90を使用。NETWORK CLIENT MODEという表示が見える。

屋外だったり、移動しながらのイベントでのマルチカメラ中継は放送局以外はなかなか費用的にも技術的にも難しいものがあったが、こういったシステムであれば720pレベルにはなるが実現可能になる。YouTubeライブなどを想定すると、可能性は広がるかもしれない。

 

<6月18日追記>

AIを活用した映像制作支援ユニットEdge Analytics Applianceではクロマキーレス合成や板書した文字を

 

5月に発表されたEdge Analytics Appliance(エッジ・アナリティクス・アプライアンス)「REA-C1000」のデモ。AIによる独自の映像解析技術を備え、リアルタイム合成やリモートカメラによる被写体の自動追尾などを可能にする。本機は、別売の各種アプリケーションのライセンスをインストールすることで機能を追加できる。

写真はクロマキーなしでリアルタイムに合成が可能な「クロマキーレスCGオーバーレイ」機能(アプリは2019年秋頃に発売予定)。クロマキー合成ではブルーバックやグリーンバックで撮影を行うが、青や緑色の服を来ていても背景に溶け込むことなく合成が可能になる。被写体への色被りもないため画期的な技術と言えるだろう。

 

主にEラーニング等の教育コンテンツ向けの機能「板書抽出オーバーレイ」(アプリは6月10日発売)。ホワイトボードに板書した文字や絵柄をAIが解析し、人物の前面のレイヤーに重ね合せる機能。

リモートカメラによる自動追尾機能(アプリは6月10日発売)。対応のリモートカメラと接続することで、被写体を自動的に追尾・撮影する。人物をフォローする機能のほか、板書やスクリーンのが画角内に収めることを優先するモードもある。そのほか、1台のカメラで全体のヒキ画と登壇者の表情を切り取る「注目エリアクロッピング」やジェスチャー認識による「起立者ズームアップ」の機能などのアプリも用意される。

REA-C1000の背面。HDMI入出力・外部ストレージ接続用のUSB。外部音声入力、LANの端子が備えられる。

 

AIアナウンサーも展示

AIアナウンサー「荒木ゆい」は、スペクティ社が提供する音声読み上げサービス。ソニービジネスソリューションが販売代理店となっており、既に高知さんさんテレビで導入されている。読み上げたい内容をパソコンでテキスト入力するだけで音声データが生成される。文章を音声で読み上げる「Text to Speech」技術にディープラーニング(深層学習)を取り入れることで、人間に近い滑らかな発音での音声読み上げを実現しているという。SNSに投稿された画像や動画を解析し、リアルタイムに事件・事故・災害を配信するシステム「Spectee」も合わせて展示されていた。

 

AIによる自動撮影・編集機能の参考展示も

写真右は4Kカメラの映像を解析し、HD画質でクロップした映像を生成する。選択した人物を自動追尾したり、アングルを切り替える時にノイズなしにスイッチングできたり、4Kの画角内をスムーズにパンする機能が備えられている。また、カメラマンが設定したカメラワークを学習する機能も搭載される。写真左は映像に写した特定の領域の変化を検出する「自動検出サービス」。スポーツの得点情報やテロップ情報などを自動で検出し、事前に特別な学習をせずに検出対象を自動で分類してくれる。

 

スマホ用インカムアプリ

スマホをインカムとして使えるアプリ「Callsign」。3G/4G/Wi-Fiの電波を利用しており、接続数や距離の制限なく使用できる。1端末につき6つのグループを作成できる。現在はAndroid版が公開されているが、iOSもリリース予定だという。