空下 慎

1985年和歌山生まれ。 独学で映像や写真を学び、株式会社FREEGULLを設立。 起業当初はウェディング関連の映像を中心に活動してきたが、MVや企業PVも手がけるようになる。近年は映画制作にも取り組んでおり、海外映画祭にも勢力的に作品を出品している。

Facebook●https://www.facebook.com/freegull.jp
Mail●sorashita@freegull.asia

取材・文●松岡佳枝/写真提供●長谷川充

 

空下 慎さんの作品

『桜が咲く頃交わした約束は、』予告編

夢を追いかけるため都会に出ていった女性と地元に残った男性。桜の咲く頃に再会する約束をするのだが…。本作は空下さんの初監督作。マドリード国際映画祭2019にて短編外国語作品賞を獲得した。

 

関西居酒屋フェスティバル

2017年8月に大阪天王寺公園で2日間にわたって開催された「関西居酒屋フェスティバル」。イベントの模様をリアルタイムに撮影・編集し、イベント終了時にアフタームービーとしてオンラインで上映した。

 

本当にやりたいことを 立ち止まって考えた28歳

映画『桜が咲く頃 交わした約束は、』がマドリード映画祭・短編外国語作品の最優秀賞に輝いた、空下 慎さん。

「元々は映像とは無縁の業界で働いていました。28歳のとき、ふと立ち止まって“本当に自分のやりたいことは何?”と考えたんです。子どもの頃から写真や絵を描くことが好きでした。映像は宇多田ヒカルさんの『traveling』がとても好きで、こんなものが作れたらいいなと思い、ソニーα77のキットを買って映像を始めました。でも作り方なんてわからなくて。それで『直接聞こう!』と思って、『traveling』のMVを監督した紀里谷和明さんに豊岡で200人集めるから講演して欲しいと直接連絡をしました。そこから道が拓けましたね」

独学で映像制作を学び、MVや企業PVなどさまざまな仕事をしてきた空下さんは2018年4月、映画の制作をスタートする。

「映画はハードルが高いと思ってはいましたが、作りたいと思ったんです。松田真将さんというアーティストの『桜が咲く頃、交わした約束。(ユニバーサルミュージック)』という曲を聴いて、いつか作ろうと思っていたプロットとリンクしたんですね。Facebookで映画を作りたいと投稿してみると、映像制作つながりの関係者が協力するよと大勢名乗り出てきて、クラウドファンディングで資金も集まり、動かざるを得なくなりました(笑)。撮影クルーは12人、撮影自体は4日間で行なったのですが、桜の花の咲く期間は本当に短くて、お天気だけでなく開花予報とにらめっこでした。雨が降ってもいいように雨用の台本も作っていて、劇中に降る雨は本物なんです。イメージ通り、必要なときにだけ降ってくれて。『持ってるな!』とスタッフもみんな驚いていました」

チームの熱量を揃えることが大事

空下さんの初監督映画は全てのカットにCGを入れている。

「圧倒的にきれいなものを作ろうと思ったんです。他の短編映画と違うもの。それで賞を獲りに行こうと思って。自然に見えるところも、すべてのカットにCGを使っているんですよ。今回、チームで動いていくことでいちばん大事にしたことは“熱量を合わせること”ですね。作業はすべて分担して、分担したそれぞれに成果を出してもらい、人に承認される場を作っていく。作品を作ると同時に人を育てながら、うまく人を巻き込みながらやってきました」

スペインでの授賞式を終えたばかりの空下さんに、これからのビジョンを聞いた。

「人の目を気にして誰かのために生きている人が多い中で、自分のための人生を生きたいと思うんです。失敗もたくさんありますが、まだ見たことのないものを見たい。新たなチャレンジを続けていきたいです。映画も次回作を考えているので、好奇心を大事に、そして探究心を忘れず、いまよりももっと高いところへ必ず行きます」

 

●映画で使用した機材リスト

 

●映画の撮影現場の模様

映画の撮影は空下さんが20代の頃住んでいた兵庫県豊岡市で行われた。Facebookでスタッフを募集し、クラウドファンディングで資金を集めた。空下さんの呼びかけに応えた映像制作のプロが集まり、ドローン空撮やCGアーティストも加わり撮影は12名のスタッフで、4日間にわたり実施された。メインカメラはソニーFS5。EOS 1D-X MarkⅡにオールドレンズを装着して撮影したシーンもあるという。



●マドリード国際映画祭の模様

マドリード国際映画祭のレセプションの模様。映画関係者との交流もあり、貴重な体験になったという。


 

ビデオSALON2019年10月号より転載