雑誌「ビデオサロン」と「コマーシャルフォト」が共催するイベント「Mashup Photo-Video」の第2弾「EOS 5D Mark Ⅱでショートムービーを撮る!」が7月28日、銀座のアップルストア・シアターで開催された。5D Mark ⅡのHD動画関連のイベントは大変な人気を呼んでいるが、Vol.1の時と同様、開演前にすでに席は埋まって立ち見の人が多数出ている状態で、多めに用意した資料もすぐになくなってしまった。
今回は2本立て。まず第1部は「ビデオサロン」で絵コンテ・トレーニングの連載も担当する映画監督の藍河兼一さんが出演。玄光社ムック「デジタル一眼ムービー完全攻略」のためにEOS 5D Mark Ⅱで撮影・製作したショートムービー「静かの海のバニー」を題材に、少人数でのロケ撮影のテクニックや使用機材、ハイクオリティな映像を作る編集方法について話してくれた。
また第2部として、今年6月にロサンゼルスで開催された映画撮影機材専門の展示会&カンファレンス「CINE GEAR EXPO」の模様がレポートされた。ここでもEOS 5D Mark Ⅱは大人気で、さまざまな周辺機器が登場していた。
少人数で効率的に撮影するために
「静かの海のバニー」は出演者も合わせてたった5人で撮影を行なっている。このロケにも同行した「ビデオサロン」の佐山副編集長が聞き手となって、藍河さんから少人数ロケを効率的に進めるポイントが説明された。
一番の課題は音声収録。5D Mark Ⅱにはヘッドホン端子がついていないので外部マイクのモニタリングができない。そこでDVカメラ(PD150)を併用、出演者はピンマイクをつけ、他にガンマイクを使用して、それぞれの音をミキサーに集約してDVカメラに収録。モニタリングもDV側でしている。
月面を想定した砂浜(ロケ地は九十九里浜)での撮影では魚眼レンズを多用し、色温度を極端に下げることで青っぽい色調にして、月のイメージを演出している。ふらふらと歩く主人公の女性の足元のカットは、なんと女優本人が手持ち撮影したもの。これはコンパクトなカメラならではの撮影方法だ。休日行なったロケハンでは問題なかったのに、平日の撮影当日は地元の漁師さんなどの出入りがあり、足跡や轍がたくさんあって閉口したというエピソードも披露された。
5D Mark IIでの撮影ではHDMIからプレビュー出力が記録時に解像度が落ちるという問題があるが、今回はモニターへのプレビューはせず、撮ったあとに確認したという。これは、監督自らがカメラを回しているからできることだ。
藍河兼一さん
スチルとムービーの垣根が低くなって機材にも変化が
フィルターを使用する関係でキャンビジョン社のマットボックスシステムを5D Mark IIに装着。さらに液晶に取り付けるファインダーがあり、そこに目を押し当てるので、手持ち撮影が安定する効果もあった。ただし、レンズを頻繁に交換したためマットボックスやフォローフォーカスを全シーンで使用したわけではなく、レンズのフォーカスリングを使って撮ったカットも多かったという。動画撮影時にスチルレンズでピントを送るのは大変だが、藍河監督はカメラマンとしての経験が長く、スチルカメラも使用しているので、そのあたりは得意だと語っていた。
三脚はマンフロット503HDVを使用。ムービー撮影ということでビデオカメラ用のものである。5D Mark Ⅱの登場でムービーとスチルの垣根はどんどん低くなっているが、その影響でスチルカメラマンも動画撮影時には当然ビデオ用三脚を使わなければならないだろう、と言う。搭載可能な重量の違いもさることながら、パンニングやチルトといったカメラワークにスチル用三脚は不向きで、デジタル一眼ムービーとビデオ三脚という組み合わせも当たり前になるだろう。
編集にも一工夫
編集機器として今回はMacBook Proのみを使用、しかも外部HDDを使わずすべて内蔵HDDだけで作業を行なっている。編集ソフトはFinal Cut Pro(FCP)。音声は同時に回したDVカメラの映像から取り込んでいる。作業画面にはDVと5D Mark IIで撮ったカットが並ぶが、その質感、とくにボケの違いは特徴的だった。ここで重要なポイントは、各テイクの冒頭のカチンコにシーンナンバーとカットナンバーを書いておくと、検索がしやすくなる。
もう一つ、大きな工夫があった。FCPで編集を行う場合、ProRes 422という中間コーデックに変換して作業を行うのが基本だが、あえてそれを使わず、アップル・インターミディエイト・コーデック(AIC)に変換して作業を行なっていること。AICは比較的ファイルが重くならないので、スペックの高くないマシンで作業する場合でもストレスが小さい。ノート型のMacBook Proでの作業には適しているといえる。
AIC変換した素材で一通り編集作業を終えたら、ここで「メディアの再接続」を実行して、H.264で記録されている元画像にリンクし直す。つまり、AICを使ったプロキシ編集を行なったことになるわけだ。AIC変換する際に名前を変更しないことがポイントになる。来場者は、編集作業の話が一番の関心事のようで、メモをとる人の姿が目についた。
最後に、撮影に参加したスタッフと出演者登場し、撮影の感想やエピソードを話してくれた。左から音声担当の荒幡信行さん、ヘア&メイクの加藤貴世さん、主役のアムロ役を演じた女優の鈴木麻衣花さん(バニーガール役の秋澤弥里さんは都合により欠席)。
写真を見せながら「CINE GEAR EXPO」について説明する佐藤武司さん。
ハリウッドもEOS 5D MarkⅡを認めた
第2部では、6月にハリウッドで開催された「CINE GEAR EXPO」で出品展示されていた5D Mark Ⅱ関連のアクセサリーを、このエキスポに参加した佐藤武司さん(株式会社ライトニング代表)がレポート。
今回の主役はデジタルシネマビデオ「RED ONE」とEOS 5D Mark Ⅱ。両者に関連する周辺機器が会場に溢れかえっていたという。現地で撮影した写真のスライドに沿って、佐藤さんが解説していく。デジタル一眼レフカメラとしては大型の部類になる5D Mark Ⅱも、ムービー用のグリップハンドルやマットボックスなどを装着すると本体がひじょうに小さく見えてしまうのが面白い。
短時間のレポートではあったが、本場の映画業界でも5D Mark Ⅱは大いに注目され、すでに深く浸透しつつある状況が実感できた。
ステージ前方には、EOS 5D Mark Ⅱの実機と、関連周辺機器が展示されていた。Cavision(キャビジョン/機材提供GPA)のファインダーやハンドルグリップ、redrockmicro(レッドロックマイクロ/機材提供ライトアップ)のマットボックス、ショルダーシステムなど。イベント終了後は黒山の人だかりになった。http://www.light-up.ne.jp/
キヤノンEOS MOVIE サイト
http://cweb.canon.jp/camera/eosd/eosmovie/
ビデオサロンMOOK『デジタル一眼ムービー完全攻略』
「http://www.genkosha.com/sp/2009/07/post_26.html」