Report◉岸本 康
アンテナが標準装備のGY-HC550ってどんなカメラ?
肩書きは「4Kメモリーカードカメラレコーダー」となっているが、JVCでは配信機能を持つカメラレコーダーを「CONNECTED CAM」と分類して特設サイトでIPライブが高品質に行えることを公開している。
https://www3.jvckenwood.com/pro/video/connected-cam/
本来このGY-HC550を紹介するには、その1080 60Pが24Mbpsでストリーミングできる機能をテストしてお伝えする必要があると思うが、今回は日程の関係で単にハンドヘルドカメラとしての性能を試用するに留まったことをまずおことわりしたい。
ただこのカメラ、配信以外にもSSDを内蔵して4K 60PがProRes422が記録できるという点や、内蔵SDカードにH264の4K 30P HLGやハイスピード1080 120Pが記録できるなど、制作用に高倍率ズームを使いたい時等にも選択肢になるような機能が盛り込まれている。今回無観客のホールでの制作に高倍率ズームが必要になったため、お借りして試用したので、その時に感じたことをレポートする。
ハンドヘルドの形をしたスタジオカメラ?
まず箱から取り出すとその大きさに驚いた。ソニーのZ280も大きいなと感じていたが、それよりもひと回り大きい。大きい理由としては、高品質、高速安定配信をするためのアンテナの付いた無線LAN部、内蔵出来るSSDドライブの入るスロットがあるので、その部分だけでも他のカメラより大きくなっている。
形状はハンドヘルドだけれどこけを手持ちで長時間撮れる人は相当な体力がある人になる。重量はバッテリー込みで約3.6kgだ。三脚、一脚、または肩に乗せたい重量感である。
レンズは光学20倍で35mm換算で28mm~560mmでF値は2.8~4.5になっているが、ズームの中央でF3.5程度になり、9割くらい寄るとF4.5になるFドロップがあった。この部分は舞台などで撮る場合、スタートのF値を設定できるので、F4から始めればドロップは0.5なので、HLGの後処理で輝度差を補える範囲だと感じた。仕様上の感度はF11、2000lxとなっているが、F4.5だともう少し欲しいところだ。ただしノイズを増やしたくないのでゲインアップは行わず撮影した。
標準でHDMI、3G-SDIの出力が付いているので、モニター出しやマルチカメラでの配信にももちろん対応している。
SDカードとSSDに内部記録
SDカードでは4Kは30pだが、10bit記録でHLGに対応しており、H264記録なのでファイル容量が軽い。一方、内部SSDには4K 60PでApple ProRes 422 HQまで記録できる。今回お借りしたSSDは500GBだったが、4K 60P ProRes 422 HQだと約30分と、なかなか濃い選択も可能だ。もちろん、その下の422や422LTにすれば記録時間は伸びる。SDカードとSSDの記録の変更はシステムの設定をメニューから行い、カメラシステムを再起動するような形になるので、立ち上げに少し時間がかかる。現場で切り替えながら使うことはあまり想定されていないようだ。SSDは専用のアダプターに入れる市販の小型の基盤タイプものを使う。アダプターにはUSB-Cのコネクターがあり、これに市販のUSB-Cケーブルを接続してPCなどで読み取りができる。Macの場合ProResはネイティブで扱えるので、H264よりもファイル容量は大きいがサクサク動いて軽快に扱える。
ホールで撮影してみて
フォーカスリングがエンド端のない仕様で、マニュアルにしてもそのままリングを回転させる方式が難しかった。ホールなどの撮影で暗いシーンで遠方のものにフォーカスをマニュアルで合わせるのには、あらかじめ舞台の立ち位置で距離を計測しておいて、ファインダーに表示されるフォーカスの距離を頼りに合わせるしかない。そのためファインダーに表示される数値はとても重要になるが、このカメラはその数値がリングを少し動かすだけでパラパラと変化するのに最初は戸惑った。まったくじわっとは動いてくれない。フォーカスアシストを外すと少しはましになったが、レンズはやはりマニュアルでもしっかりと合わせやすいことが求められるのではないかと思った。他メーカーのフジノンOEMなどのレンズではリングをマニュアル側に切り替えてある程度じわりと動くようになっているので、この機能がないとせっかくの4Kの解像度が発揮できないのではないかと思う。
いつもカメラのテストに行く鴨川でテスト撮影
鴨川の定位置でズームを使ってエンド端、テレ端、鳥などを撮影してみた。ズームのシーソーは、じわっと動き出してゆっくりとズームすることができる。
▲鴨川でテスト撮影
このあたり含めて試用雑感をVLOGにまとめた。
天気の良い日だったので特に気になったが、液晶の表面の光沢が強くて表示される文字がやっと読めるくらいで、中の映像を見てフォーカスをチェックしたり色味を見るなどは難しかった。ここは改善点だと思う。屋外の配信では遮光のモニターカバーや外部のモニターでしっかりと監視が必要だ。
今回はこのカメラの本来の配信のポテンシャルをテストするに至らず残念だったが、機会があれば最近のメッシュWi-Fiなどで1080p配信がどの程度のクオリティーで届くのかをテストしてみたい。