Appleから9月24日に発売されたiPhone13シリーズ。今回の目玉のひとつがシネマティックモードだ。ついに動画にも、ボケ味を加える機能が搭載。このシネマティックモードは、プロの現場でも使えるのか。200本以上のMVを制作してきた白木修太さんに、現場での使用感をレポートしてもらった。
レポート●白木修太
愛知県豊川市生まれ。名古屋ビジュアルアーツ卒業後、上京しフリーランスとして活動。映像制作・タレントマネジメントのの株式会社CrazyBank立ち上げに参加し、取締役に就任。ヒップホップを中心にこれまでに200本以上のMVを手がける。
WEB:https://crazybank.co.jp/
近年のiPhoneは画質の向上、HDR撮影による色表現の強化され、プロの撮影現場での運用を想定された仕様となっています。
画質の向上もさることながら、iPhone 11 Proの登場でレンズの数が3つに増えたこともかなりの強みだと思います。これによってデジタルズームではなく、物理的に広角・標準・望遠を再現可能にしました。私もiPhone 12 Proをサブカメラとして使うこともあるのですが、ひと昔前のiPhoneよりも、確実にレベルアップしています。
ただ、唯一の不満点が被写界深度が深いことでした。これはセンサーサイズの都合上仕方ないのですが…。なんとiPhone13のシネマティックモードは、ソフトウェア処理で擬似的なボケ味を作り、この問題を突破してきました!この発想は本当にすごい(笑)。
●iPhone13 Pro MaxをMVの現場に投入!
そんな画期的なシネマティックモードを搭載したiPhone13 Pro Maxを早速、MusicVideoの現場にて使用してきましたのでレポートします。愛知県豊川市で活躍するレゲェアーティスト・ちーかまんのMV撮影を全編iPhone 13 Pro Maxでワンオペ撮影しました。
実際にiPhone13 Pro Maxで撮影したMV
●まず持ち物がコンパクトに!
普段から機材をコンパクトにまとめて現場に行くのですが、どうしても上記写真のキャリーバッグよりも小さく収めることができませんでした。ですが、iPhoneがメインカメラとなるとトートバックで行けちゃいます(笑)。ワンオペ現場もこなすビデオグラファースタイルの方には、ある意味最強のカメラです。
●iPhoneの手軽さ活かして撮影
撮影スタイルもかなりラフに行えます。今回、三脚を持っていきましたが、手ぶれ補正が優秀なので使わずに終わりました。
この手軽さを活かすべく、マイクブームを使ってクレーン的な動きも試してみました。ガンマイクと同じくらいの重量なので全く問題なかったです。広角レンズで使用する事でかなりダイナミックなアングルになるのでおすすめです。
●シネマティックモードの精度
さてシネマティックモード。これはすごいですよ。自動的に被写体を認識し、背景をぼかしてくれるんです。それにフォーカス送りも出来ます。例えば上記画像のアングルだと、右にズラしていくとフォーカスが背景に自動ですばやく移動します。これは下手なフォーカスマンより優秀。絞りの値もいじることができますし、あくまで擬似的なボケ味ですが、触っていると本物と錯覚しますね。
●シネマティックモードの課題
擬似的なボケ表現ということは、編集で人物をマスク指定しブラーを掛けているということになります。
それを瞬時に行うのがシネマティックモードなのですが、エッジ部分に改善の余地があると感じました。
今回はボケ味を確かめるべく、すべて開放(F2)で撮影をしたのですが、ぱっと見はすごく綺麗なのですが、よく見るとマスクのエッジが甘く、髪の毛の部分のボケが不自然になっていました。
あまり細かいところまでは認識できないようです。ただ、この曖昧さが独特の雰囲気を出していて…嫌いじゃないです(笑)。ドラマなどでよく見る回想シーンのような仕上がりになります。
他にはシネマティックモードでは、広角カメラが使用不可になるのも難点でした。加えて記録フォーマットが、1080/30p固定になります。これは撮ってる最中に分からず、映像見る限り30pぐらいかなと予測しながら撮影しました。シネマモードという銘打ってるなら24pにしろよ!と思いました(笑)。この仕様は本当に謎です。詰めが甘いなApple。
●結論!シネマティックモードはプロの目にどう映るのか?
シネマティックモードでMVを撮影してみて、かなり使える機能だと思いました。この手軽さで、このレベルの映像が撮れるなんて本当に素晴らしいです。
EOS 5D Mark IIが起こした動画撮影の革命が、とうとうスマホにも…といった感じでしょうか。素人目からすれば、ボケ味があることがプロのカメラといったイメージありますが、シネマモードの登場により、プロとの境界線がいよいよなくなってきたと感じます。
恐ろしい時代です。あと2世代くらいで解像度・コマ数・エッジの問題は改善されると思いますし…。よく冗談で「予算がないのでiPhoneで撮りますよ?」と言っていましたが、「ぜひiPhoneで!」という時代が来そうな予感もします。人件費削減、撮影スムーズ、機材が軽量で場所を取らない。クライアントからしたらメリットでしかないと思います。
クリエイターの皆さんは今のうちに、iPhoneとシネマカメラの違いをプレゼンできるようにしっかり勉強しておくことをオススメします
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