久松慎一+ 株式会社援軍

 

Vol.16 ユーザーの動向から動画作成のアイデアを導く

これまでは動画広告を稼働するために、動画広告の基本的な考え方や動画の種類について解説してきました。しかし動画広告の考え方や種類がわかったとしても、実際にどのような動画を作るべきかわからない点が出てきます。今回は実際のサイトデータをもとに、ユーザーの動向を参考にして動画作成のアイデアを導くシミュレーションを行い解説します。

 

ここで書かれている内容は、ページビュー数やサイト滞在時間など、これまで紹介した広告運用で使用する指標をもとに解説しています。もしわからない指標などあれば、過去の記事も参考にしてみてください。

なお、ここで解説するのは、動画アイデアを導くための分析です。

シミュレーション対象: キャンプ用品EC

・ECを行なっている
・コンバージョンにあたる購入数が今月は伸びていない
・サイトにはまだ動画は使用していない

 

現状の分析するサイトの課題を把握する)

まずは現在のサイトがどのような状態にあるのかを把握することから始めます。現在のサイトの持つ課題に対して、動画で解決ができることはないかを探りたいと思います。

情報では今月からサービス導入数が低下しており、解決したいポイントです。まずは、低下している要因を特定していきます。そこで、低下している要因を探るために先月と今月では、どこに差が出ているのかを見てみましょう。おさらいとなりますが、サイト訪問するユーザーの動向は主にサイト訪問前(集客)とサイト訪問後(行動・コンバージョン)のふたつに分けられます。どちらが要因かで、その後の改善内容も変わりますのできちんと把握しておきましょう。

 

サイトに訪問するユーザーの状況を分析する

サイト訪問の実績を見てみます。なおユーザーの訪問動向はGoogleAnalytics(グーグルアナリティクス)を使用します。

 

GoogleAnalyticsで参照元メディアを表示させた画面コンバージョンとは、WEBサイトの訪問者が潜在顧客から見込み顧客への転換する行動をとったことを指す

 

実績を確認するには、以下の場所にアクセスします。データ:アナリティクス>集客>参照元メディア

サービス導入低下の要因について、ざっくりとですが特定することができます。上のGoogle Analyticsによる各実績から読み取れることは次のとおりです。

 

購入数が今月伸びていないのは、主にコンバージョン率が低下した影響が大きいようです。

訪問するユーザーの数は伸びていますが、コンバージョンする率が低下しており、購入数の増加には寄与していない状況が見えてきます。

では、なぜ訪問数は増えているのに、コンバージョンする数は低下するのでしょうか? 次はこの点に着目します。GoogleAnalyticsで確認した結果が下の表です。

 

GoogleAnalyticsのランディングページを表示させた画面

たくさんあるページの中から、改善を入れたほうがいいページを見つけましょう。訪問する方が多いページほど、改善時の影響が大きくなります

 

訪問時のユーザーの挙動を把握するため、ランディングページという項目を見てみたいと思います。

ランディングページはページ単位で訪問したユーザーの挙動を見ることができる項目で、今回のコンバージョンの落ち込みがどこのページにあるのか特定することができます。

すべてのページを分析・対応することはあまり現実的ではないため、全ランディングページの内、訪問数が多い順にならべて、上位ページのなかで特にコンバージョン率が低下が見られるページを特定しましょう。改善の際に影響が大きい箇所からテコ入れするためです。

訪問数上位ページのなかで/ページ(サイトのTOPページにあたる。以降TOPページと明記します)でコンバージョン率が大きく低下しているようです。TOPページはサイトの玄関ともいえるページで、前月と比べて約60%ほどコンバージョン率が低下しており、改善が急務であることがわかります。

次にTOPページに訪問したユーザーのニーズについて調べてみたいと思います。ニーズを調べるのに適しているのはSearch console(サーチコンソール)というツールです(下の表)。

Search consoleで検索実績を分析した画面

Search consoleはGoogle検索の実績を分析できるツールで、サイト訪問時に実際に使用した検索ワード(検索クエリともいいます)を調べることができます。検索エンジンを使用されたことがある方ならご存知かと思いますが、検索ワードは検索者のニーズを端的に表したものであり、どのような気持ちでサイト訪問したのかを知るのに適しています。

TOPページへの流入は商品名・サイト名などの指名検索ワードがが中心になります。また、検索する際に商品名・サイト名と共に検索者のニーズが含まれることがあります。たとえば「商品名・サイト名+使い方」「商品名・サイト名+最安値」「商品名・サイト名+どこで買える」など。共に検索されるワードは検索者の一番知りたいニーズを表します。今月検索ワードでは「商品名・サイト名+使い方」に関する内容が増えている内容でした。

では次に、使い方を求めている人が増えるなか、サイト側は答えることができているのかを調べてみます。商品説明ページの「離脱率」を見てみましょう(下の表)。

 

すると当月は先月と比べて商品説明ページから離脱する方が増えていることがわかります。知りたい情報を見て満足した上で離脱しているのであれば問題ない数字ですが、大部分が購入することなく離脱していることを考えると、商品説明ページとしてうまく機能していない可能性が大きいと考えられます。

 

考えられる課題を整理する

ここまでの情報をもとに現在のサイトで考えられる課題を明文化したいと思います。ここまでの内容を今一度まとめます。

ここから考えられることとして、現在の商品説明ページは購入意欲が湧きにくいページでECサイトとしてうまく機能していないことが読み取れます。実際のページは特に動画などは使用しておらず、すべてテキストで説明する内容となっていました。

ここまでの情報をもとに現在のサイトで考えられる課題を整理します。

 

動画で行うことを決める

いよいよこれらの状況を踏まえて、動画でできることを考えてみます。改めて、では動画で行えることは何でしょうか。動画のメリットの一例を挙げてみると「複雑な内容をわかりやすく説明できる」ことだと考えられます。

商品説明ページでは、実際商品を使用しているシーンを用いれば、今より商品のイメージが付きやすくなり、購入される状況を作れるのではないでしょうか。動画を使用するなら、テキストでは伝わらない情報を盛り込みたいところです。シミュレーション対象がキャンプ用品ECであることから、以下のようにまとめました。

 

商品の説明は文字数も多く、人によっては読みにくいと感じるページです。動画を使用すれば、文字の多さからも解放されて、商品の良さについて知ってもらうことが可能です。

 

サイト訪問者を分析するのが成功の第一歩

サイトの情報をもとに課題となる個所を見つけて、動画のアイデアを導く流れをシミュレーションして解説しました。もちろんこのやり方はあくまでたくさんある方法のなかのひとつに過ぎず、調べる方によっては別の課題や解決方法が見つかるかもしれません。ただ、誰が分析したとしても共通して言えることは、現在の状況を分析・把握してから動画制作に取り組んだほうが「成果の出る動画」を作りやすいという点です。

完璧なサイトというのはこの世には存在しません。GoogleAnalyticsを使用したら、課題となる個所は複数出てくるのは一般的です。ただ課題は複数あったとしても、見つけるまでの経路は同じ。下記の図を参考にして課題を見つけ出しましょう。

 

また、動画を制作する際は、可能なら広告でも使用する可能性を踏まえて作成したほうがベストです。過去の経験上、広告を走らせたい時に広告に適した動画が存在することは少なく、改めて作り直す企業が多いです。

二度手間にならないためにも最初から動画広告に沿って作ったほうがなにかと効率的です。また、動画広告は大部分が短時間で訴求することに特化しています。短い時間でインパクトのある動画が主流になっており、TikTok等がその代表です。動画が短いというのは今のユーザーにとって重要なポイント。長いと観られなくなる可能性が高く、可能な限り短くわかりやすく作ったほうがベストなのです。

 

今回のまとめ!

スマホをほとんどの方が利用する現在は、動画は以前より重要なコンテンツとなってきています。テキストを読み込まなくても知りたい情報を手に入れることができますし、テキストでは理解しにくい情報も簡単に伝えることができます。しかし何でも動画にするというのは逆効果です。

GoogleAnalyticsを用いてサイトに訪問した方を分析し、困っている箇所に助け舟となる動画を差し込みましょう。わかりやすい動画を入れるだけで、コンバージョン率は大きく向上します。分析して解決する動画を作って効果を出す。これを一人で行えるってすごいと思いませんか? あなたも効果の出る動画をどんどん作っていきましょう!

 

 

VIDEO SALON2022年1月号より転載