文●編集部・萩原
時が流れるのは早いもので、好評いただいた昨年5月号のBlender特集から気づけば1年4カ月が過ぎました。前回に引き続き、監修を務めてくれたのは実写作品出身のBlenderアーティストTaka Tachibanaさん。3DCG制作の基本的なフローを紹介した前回の特集とは少し趣きを変えて、今回はBlenderアーティストが制作した作品のプロジェクトファイルをご提供いただき、そのデータを誌面からダウンロードできる形にして、解説動画もふんだんに盛り込みました。ぜひ記事と合わせてご覧ください。
今回の特集では5名のクリエイターのみなさんにプロジェクトファイルを提供いただきました。新進気鋭のVFXチーム・UNDEFINEDのメンバーとして活躍するいわぶりさん、Grafica.film名義でミュージックビデオを中心に活動し、企画・演出・撮影・照明・編集・VFXの全工程をひとりで手掛ける野上虎太郎さん。ビデオグラファーとして実写映像のディレクションも手がけ、自主制作作品『昭和124年』シリーズがTwitterで120万再生を記録した高橋 悠さん。元々はレタッチャーとして広告写真の分野で活躍し、BlenderやSubstance 3D Painterを駆使して広告ビジュアルを作り上げるフジモトタカシさん。そして、若干18歳ながらAww所属のVFXアーティストとしてCM、MVなどの映像作品に携わる他、勢力的にSNSで作品を発表し続け得るKazuyaさんにご協力いただきました。
特集の導入では若手Blenderアーティストを広告案件に積極的に起用し、話題作を送り出すKASSENの太田貴寛さんにインタビュー。太田さんがVFXスーパーバイザーとして関わったCM『GEKIAWA THE STRONG』でVFXを手がけた高校生Blenderアーティスト・Yumaさんにもお話を伺いました。
今回の特集ではコロナ禍をきっかけにBlenderを始めたという方も多く、次々に創意工夫あふれる作品が登場してきていることや無料ツールの強みなのかもしれませんが、Blenderアーティストの低年齢化にも目をみはるものがあります。これからBlenderを始めてみようという方や他のクリエイターの3DCG制作方法を知りたいという方はぜひお手にとっていただけるとうれしいです。
●特集の内容
Introduction
Blenderが導く新たな才能
若きクリエイターが活躍するために必要なこと
無料3 DCGソフト・Blender の登場は、多くのクリエイターの卵が、3DCG制作に携わるきっかけとなっている。映画や広告の映像作品づくりを手掛ける制作会社も、個人のクリエイターの才能に注目し、コラボレーションするケースも増えている。本記事では、VFX スタジオ・KASSEN 代表の太田貴寛さんと、高校生でありながらKASSEN と協業し、企業のプロモーション作品づくりなどに携わる、Blender アーティストのYuma さんに話を聞き、3DCGクリエイターの今と可能性を探る。
太田貴寛(KASSEN)、Yuma
木と山を生成してドローンを飛ばそう!
Blenderでジオメトリノードとカメラワークを学ぶ
モデリングツールとして注目を集めるジオメトリノード。作例では、実写と見紛うリアルな山林作りに活かされている。いろいろなタイプの作品を制作されているいわぶりさんに、山林を作るジオメトリノードとドローンを追うカメラワークを中心にプロジェクトファイルを解説いただいた。
いわぶり(UNDEFINED)
少人数でも本格的な実写合成に!
Blenderを使用してひとりで完成させたMV制作の裏側
思いどおりに創り上げた壮大な空想の中にミュージシャンたちを解き放つ̶。誰もが一度は夢見るイマジネーションを、Blenderを駆使して実現している野上虎太郎さん。そのセンスもさることながら、ものすごいスピードで発表をし続けている野上さんは、Blenderを使い始めて1年半程度だが、すべての制作工程をひとりで担っている。独自のBlender 活用術をSuppy『TEARDROP』のMVを例にして解説してもらった。
野上虎太郎
実写も手掛けるCGクリエイターが教える
Blenderで実写経験を最大限に活かす方法
映像ディレクター高橋 悠さんが実際に見た東京の風景をBlender上に作り上げた架空空間プロジェクト『昭和124年』はTwitterで112万再生(2022年6月現在)を記録。実写での経験がCG制作をするうえで大いに役立っているという。ここではビデオグラファー的なカメラワーク、カット割り、編集、カラーグレーディングなど実写での経験を活かせるポイントについて解説。iPhoneアプリでスキャンしたデータからアセットを作る方法も紹介してもらった。
高橋 悠
Blender+Adobe Substance 3D Painter&Samplerで詰める!
テクスチャにこだわった効率的なワークフロー
レタッチャーとしてキャリアを積んできたフジモトさん。ゼロからビジュアルを作り込みたいという野望からCGにも手を出し、Blenderに出会う。そして今、テクスチャにこだわりたいという思いからSubstance 3Dを使い出し“使える感触”を得たという。そのワークフローを解説していただいた。
フジモトタカシ
実写かCGか見分けができない!?
Blenderアーティストが実践するリアルな世界観の作り方
写実的なフルCG 制作に力を 入れている Kazuya さんによると、実写系フルCG 作品をリアルに見せるポイントには共通するものがあるという。ここでは写実的なCG の表現に使える Tips やコツをゲームセンターのプロジェクトファイルをもとに解説していただいた。
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