文・作例 ナカドウガ
TV番組のオンラインエディターを経て、日本で唯一のテロップ漫談家を自称しながら、テロップについてのノウハウを発信している。

見やすいテロップを作るうえで避けては通れない『エッジ』。見やすいのか、見にくいのか。ダサいのか、ダサくないのか。その境界線はどこにあるのでしょう。今回はテロップにとって『ちょうど良いエッジ』について徹底的に検証します。

 

 

失敗例がイマイチな理由
①エッジが無いせいで、背景と同化している。
②黒や青の3重エッジのせいで重たく見えてしまう。

こうやって改善
①背景と明確に区切るためエッジを追加した。
②エッジをひとつにして、すっきりさせた。

 

 

検証① エッジの有無で見やすさはどう変わるのか

エッジがあるとテロップはダサくなるのか。この答えを探るにはまずエッジそのものについて考えないといけません。上の改善例①はエッジを追加して見やすくなりましたが、同時にダサくなりました。逆に改善例②ではエッジを削除することでダサさを改善できています。

どうやら見やすさとダサさはトレードオフの関係にあるようで、エッジの存在感が強すぎるとダサくなってしまいます。まずはエッジに4つのバリエーションを持たせて、見た目の印象がどう変わるのかを見ていきましょう。

この検証のポイントは少しでもエッジがつくと、見た目がガラッと変わってしまうということ。そもそもエッジとは背景と同化させないための緩衝材なので、いくら細くても存在感は際立ってくるようです。これは紛れもない事実として念頭に入れておく必要があります。

 

 

検証② 背景によって見やすさはどう変わるのか

そもそもテロップの見やすさは、背景に大きく影響を受けます。色味が多い背景であればカモフラージュのようにテロップは背景に埋もれて目立ちにくくなります。

ですのでエッジを無しにしてしまうと、スタイリッシュだけど、見にくくてストレスになるということが往々にして起こります。そんな時はエッジをつけるべきですし、逆に色味が少なくすっきりとした背景ではエッジが無くても成立します。この場合はエッジは余計なものとなり、ダサさの温床になることも。

このようにどんな背景なのかで合わせる条件が変わってくるのが難しいところです。実際に以下の画像を見比べてみましょう。

この検証で分かることは、テロップの周りがすっきりしていれば見やすくなるということ。上段の画像では、黒色のエッジを使って背景の雑多さを緩和していますし、下側の画像では背景そのものがエッジと同じ効果を発揮しているとも取れます。この条件を追い求めることが見やすいテロップを作る上での最低限のラインではないでしょうか。

結論 テロップの周りを単色・シンプルな色で囲うのがベスト

 

 

検証③ フォントによってエッジの太さはどう変わるのか

ここまでの検証で見やすさの確保にはエッジが必要ということは分かりましたが、エッジのせいで存在感を過剰に高めてしまっていることが難点でした。続いての検証では使うフォントによって許容されるちょうど良いエッジの在り方を探っていきます。

上のような太めのフォントではエッジを2重にしてもあまり違和感を感じません。一方で細いフォントの場合は太すぎるエッジは重くなりすぎてしまい、フォントの太さに合わせてエッジもさりげなくおさえる工夫が必要です。『見やすいエッジの太さは00px』というように明確な基準がない理由はこんなところにあるようです。自分なりの基準を作ることがなによりも大切です。

 

シンプルは正義。という鉄則もあり要素を極力少なくさせる方向へ向かいがちですが、フォントや配色・レイアウトによって安っぽく見えてしまうので難易度は高めです。エッジを無くしたい場合は、それ以外のデザインを成り立たせる必要があります。一筋縄ではいかないのがエッジの難しいところ。そのテロップがどのような背景に置かれるか、どのようなデザインなのかによってその都度判断しなければなりません。今回の検証をまとめると対処法は以下のようになります。

最終結論
①テロップの周りをすっきりとさせる ②エッジ自体にデザインを落とし込む

当然エッジをコントロールするだけでは追いつかず、ベースに載せるという選択肢も考える必要がありますし、背景の映像の方を加工する必要もあるでしょう。もっと広く捉えると映像のコンセプトやジャンルによってもエッジの重要度は変わります。それらも踏まえつつ、実践的なアイデアを見ていきましょう。

 

 

エッジをフル活用する4つのアイデア

映像においては、エッジをいっさい使わないのは現実的ではありません。エッジが邪魔者扱いされる風潮の中、スタイリッシュに見せたい場合には、エッジそのものをデザインの1部として昇華させる工夫が必要不可欠。ここからはエッジを使いながらも、デザインとして成立するようなアイデアをご紹介します。

① ぼかしエッジの可能性を探る

見やすさを確保しつつも、エッジの存在感はとにかく消したいという時に使われる方法です。エッジの強烈な印象は薄れ、柔らかい印象になります。非常に便利ですが、ぼかしを強くしすぎると色の階調に破綻が現れ、ノイズのように見えるので注意してください。

 

② 重層エッジで表現するメタリック感

細いエッジを何重にもかさねて立体感と重厚感を出しています。白黒のグラデーション具合を少しずつ変えながら構成しているのがポイント。ファンタジー系の映画のタイトルのような雰囲気になりました。とってつけた感が目立つ場合は、エッジそのものがデザインの要素になるような工夫をしましょう。

 

③ 極限まで太くして遊ぶポップテイスト ーエッジを増やしてアメコミテイストー

中途半端な存在感のせいで浮いてしまうのであれば、とことん太くしてしまいましょう。使っているフォントも相まって、よりポップな仕上がりになりました。見やすさという点においても見事にクリアできています。こうすることでエッジでありながら、『テロップベース』でもあるという別の捉え方ができ、バリエーションを増やすことにもつながります。

 

④ 見やすさよりもデザインに全振り

見やすさ、スタイリッシュさ、このどちらも両立させることだけが本当に正しいでしょうか。そんなルールを無視することでおもしろさや別の見え方があるものです。そういう意味では、自分で心地よいと思えるエッジの在り方が最適解なのかもしれません。

 

今回のまとめ

映像になじむデザインという方向で突き詰められてきたエッジ。そのためテロップは広告やWEBのような本流のデザインからガラパゴス化してきました。見やすいテロップを作り続けるために、これからもエッジと上手に付き合っていきましょう。

見やすい・見にくいの境界線(エッジ)をしっかり見極め、テロップデザインの切っ先に立っていたいですね。エッジだけに。

CHECK!!
今回の作例は、本誌掲載のURLからダウンロードして構造をチェックしよう!

 

 

VIDEO SALON2022年9月号より転載