制作現場ではコストパフォーマンスの高いカメラとして数多く運用されているBMPCCシリーズ。デジタル一眼ユーザーからするとハードルが高く感じるかもしれない。BMPCCも一眼も愛用するDAIGENさんに新製品の6K G2を試してもらった。
レポート●DAIGEN
家族に人生を楽しんでいる姿を見せたくて、9年間務めた製薬会社を退社し動画制作の道へ! 1985年生まれ6歳と5歳の2児の父。趣味は漫画、料理、動画作り。北海道出身、大阪在住。2009年、製薬会社に入社。2018年 製薬会社を退社し動画制作会社を設立。2019年 MVや企業PV、YouTubeのプロデュースなどを行う。2022年1月 、運営するYouTubeチャンネル「DAIGEN TV」の登録者が3万人に到達。
僕とBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K(以下BMPCC 6K)の出会いは、今から約2年半前のことでした。大阪 心斎橋での撮影の帰り道に、そろそろ今使っている機材とは違ったカメラが欲しくなった僕は、憧れのシネマカメラを触わりにブラックマジックデザイン 大阪ストアに向かったのでした。店の前に着くと、生憎の店休日…。運が悪かったな~と思い、ダメもとで呼び鈴を鳴らしてみると中からスタッフが出てきてくれました。それから店内でなんやかんやと説明を聞かせてもらって、そのままの勢いで購入しました。あの日、あの時あの場所でBMPCC 6Kと巡り合っていなかったら僕は今この記事を書いていることもなかったでしょう。あの時業務外なのに対応をしてくれたスタッフの方、本当にありがとうございます!
BMPCC 6Kとはどんなカメラか
この記事を読んでいる方の中にはBMPCCシリーズに触る機会がなかった方も多くいらっしゃると思いますので、BMPCC 6Kとはどんなカメラかを紹介します。BMPCCはBlackmagic Pocket Cinema Cameraの頭文字を取っています。そのまま読むと長いので、「ポケシネ」「ビーエムピーシーシー」などと呼ばれています。「ポケットシネマカメラ」とついている通り、シネマカメラの入門機として最適な位置付けのカメラです。普段、ミラーレスカメラで動画撮影をしている僕にとっては「シネマカメラ」と聞くだけでなんだかワクワクしてきます。センサーは映画の制作でよく使われている標準的な規格の「スーパー35mmセンサー」を搭載しており、フルサイズセンサーよりはひと回り小さいセンサーサイズです。
撮影解像度は最大6Kまで撮影することができ、用途によって5.7K、4K、2.8K、FHDと選択することができます。最大センサーフレームレートは選択した解像度およびコーデックによりますが、6K(2.4:1)で60fpsまで、2.8K (17:9)/1080HDで120fpsまでのフレームレートを選択することができますのでスローモーション表現も可能です。
レンズマウントはEFマウントを採用しているので豊富なEFレンズを用いて、被写界深度の浅いカットや望遠の圧縮効果を狙ったカットなど、レンズ交換で多彩な表現をすることができます。
BMPCC 6Kのラインナップ
BMPCC 6Kは2019年8月に発売され、その後、内蔵NDフィルターやチルト液晶が搭載されたBMPCC 6K Proが2021年2月、2022年6月にはProモデルから内蔵NDフィルターを省いた、BMPCC 6K G2がリリースされました。
●BMPCC 6K
最もベーシックなモデル。機体のサイズは3モデルの中で最も小さいのですが、モニターが固定式なので、基本的にはリグを組んで外部モニターを使って撮影します。
●BMPCC 6K Pro
BMPCC 6Kに比べて、モニターが明るくチルト式になったので外部モニターなしでも撮影がしやすくなりました。4ポジション 6ストップの内蔵NDフィルターが搭載されたので明るさの調整が容易になりました。バッテリーがLP-E6からNP-F570になり、ベーシックモデルの弱点だった、撮影可能時間が伸びたのも嬉しいポイント!
●BMPCC 6K G2
BMPCC 6K Proから内蔵NDフィルターをなくしたモデルがG2です。内蔵NDフィルターが搭載されていないため、6K Proと比較して価格が抑えられています。チルト液晶やNP-F570バッテリーは使用できるので、BMPCC 6Kシリーズを試してみたいと思っている方はG2モデルから初めてみるのもおすすめです。
6K G2と6K Proはチルト液晶を採用
BMPCCシリーズの初代である4Kや6Kはモニターが固定式だったので、リグを組んで外部モニターを利用することが多かった。6K G2、6K Proはチルト液晶になり、かつ別売のEVFを装着できるようになった。
Blackmagic RAW(BRAW)って実際どうなの?
BMPCCの一番の特徴はRAW撮影です。BMPCCの記録形式はRAWのBlackmagic RAWと、ProRes 422の2種類から選ぶことができますが、特にBlackmagic RAW、通称BRAW(ビーロウ)が圧倒的に使いやすく便利です。BRAWの凄さを一言でいうなら「撮影でミスしても大丈夫」というところです。
具体的にはISO感度やホワイトバランスの設定などを撮影後の編集時に変更することができます。「もっと明るく撮っておけばよかった~」や「屋外で撮影していたのに室内で撮影した時のホワイトバランスのままだった~」などというミスは編集時に帳消しできるのです! これって、すごいでしょ!?
私はソニーのα7S IIIを使って動画撮影をすることも多くあり、S-Log3の10bitを使用しています。S-Log3でも、現状は大きな不満はありませんが、BRAWを使用すると「やっぱBRAW使いやすいわ」と感じることが多いのです。ということでBRAWとS-Log3を比較してみました。
BRAWとS-Log3素材からカラーコレクションやカラーグレーディングを行なっていきます。結論から言ってしまうと、BRAWも10bit S-Log3も露出が適正で、ホワイトバランスも大きく外れていなければどちらも比較的自由に色編集をすることが可能でした。
特に屋外で撮影していると太陽の傾きや雲の動きなどによって、ホワイトバランスや露出が大きく変わってしまうことがあります。撮影に熱中していると変化になかなか気づけず、家で素材を確認したときに「あ~失敗した~」となることも少なくありません。そんな時、BRAWで撮影していれば、編集時に適正露出・適正ホワイトバランスに戻すことが容易にできるので安心して使うことができますよね!
BRAWとS-Log3素材をグレーディングする
BRAWとS-Log3の撮って出しの状態です。RAWやLogでの収録はこの状態からカラーコレクションやカラーグレーディングを行なっていきます。どちらも淡い色味になっています。
カラーコレクション後、LUTを薄めに当てて、コントラストを微調整しました。「Curves – 色相 vs 彩度」で、青(空)と緑(草木)の彩度を若干落としました。BRAWも10bit S-Log3も露出が適正で、ホワイトバランスも大きく外れていなければどちらも比較的自由に色編集をすることが可能です。
ホワイトバランスを失敗した場合
BRAWとS-Log3で同じ条件下でホワイトバランスを2600Kにして撮影してみました。
BRAWはカメラRAW設定で元々の色温度の2600Kから4500Kに変更するだけで、ニュートラルに近いホワイトバランスになりました。S-Log3はカメラRAWでの色温度の調整がないのでプライマリー- Color WheelsやColor Barsを使って、1時間ほどかけてなんとか見られるくらいまで戻してみました。
露出をアンダーにしすぎてしまった場合
先ほど同様、BRAWは「カメラRAW」のパラメータでISO1250からISO5000までアップ、S-Log3はプライマリー Color WheelsでBRAWと同じぐらいまで露出をあげてみました。両者ともにノイズは出ていますが、拡大してみるとS-Log3のほうがよりノイズが多く出ているのがわかりました。
露出をオーバーにしすぎてしまった場合
BRAWはカメラRAWでISO6400からISO1250に下げ、Curvesで露出を調整しました。S-Log3はCurvesで露出を調整しました。ハイライトに強いS-Log3は多少白飛びしていても大丈夫でした(背面モニターではかなり白飛びしているように見えたのに…)。BRAWはカメラRAWでISOの設定を下げるだけで適正露出に戻るのでとても手軽で便利でした。
BMPCC 6Kシリーズがおすすめな人は?
手軽にシネマライクな映像が撮れるBMPCC 6Kシリーズは映像制作者にとって、とても貴重な存在のカメラです。特に駆け出しの映像制作者にとってはシネマカメラは高いし、普通のミラーレスカメラは使っている人が多いから自分の特色が出しにくい…と悩むケースも少なくないはず! そんな時はBMPCC 6Kシリーズがおすすめです!
BRAWでの撮影なら撮影時に多少失敗しても大丈夫! 豊富で安価なEFマウントレンズを使えば、画がわりも容易にできます。しかもBRAWとDaVinci Resolveの相性が良いので編集も軽く、今回例に出したα7S IIIなどの10bit素材よりもサクサク編集を進めることができます! (データ量は大きくなりますが…)
特に今年発売となったBMPCC 6K G2はチルト液晶搭載で比較的手を出しやすい価格! この機会にポケ活(ブラ活?)、始めてみませんか!?
作例と解説はYouTubeのDAIGEN TVで視聴可能
▲今回の作例と検証はDAIGENさんのYouTubeチャンネルでも見ることができる。上のURLもしくはQRコードからどうぞ。
●製品情報
https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/blackmagicpocketcinemacamera