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さて、今回はズームフォローについて、です。実は鉄道だけでなく他にも応用できる内容になっています。では、どうぞ。


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◆ズームフォローという表現
 ズームフォローは動きだしのアングルと止まったアングルで、まったく違った風景を見せる撮影方法です。望遠から広角まで列車の動きに合わせたり、始まりと終わりでまったく違う風景を見せて変化を与えたりすることができます。何を見せたいのか、撮影の目的をはっきりして、動きだしと止める時のアングルをしっかりと決めてから撮影することが必要です。
◆ズームレバー
 マニュアルズームレバー(リング)のあるハイエンド機でも、一定の速度で比較的ゆるやかに走る鉄道はパワーズームの方が向いていると思います。パンの方法で書いたように、パンやズームなどのフォローでは見ている人が気づかないくらい穏やかに動かし始めるのが理想です。
ズームレバーを押したときの動きはカメラによって大きく異なるので、購入時には店頭で動きを試してから決めるのが良いでしょう。
また、お手持ちのカメラならば、動き始めと終わりができるだけズムーズに行えるように繰り返し練習をしたいところです。
 近づいてくる列車をズームするときには、遠くでは緩やかな動きで、近づくにつれて速くなります。従って列車に合わせてズーム速度を変化させる必要があります。この時もできるだけ一定の変化量で加速させ、ズームの速度が変わったことが見ている人に感じられないようにすると見ていて安心できる映像になります。
 列車の動きが予想と違うときなども、焦って急激にズーム速度を変えないようにして、途中で列車が画面から出ても気にしない・・・くらいの気持ちで撮影を続けると意外にうまくリカバーできます。ズームフォローではメンタルな部分が出やすいので、数をこなして慣れることも必要でしょう。
【作例1】列車のフォルムを長く撮るためのズームフォロー

 列車のフォルムを長く見せ続けるためにゆっくりとズームで引いてくる。同時に斜め下にパンもして列車をフォローしている。動き始めはゆるやかに。ズームフォローが終了したあたりで列車が画面から飛び出すような感じで。列車が画面を抜けているときはカメラを動かさず、列車が画面から出て、一定時間待ってからRECを終了しよう。
【作例2】あるアングルから別のアングルへのズームフォロー
以下のムービーはおすすめ路線で紹介した石北本線の映像だが、
ズームフォローの例として紹介します。

「こんな列車が」「こんなきれいな風景を」走ります、という流れを1つのシーンで作ることができます。列車のかたちが認識できたところで、ゆっくりとズームとフォローを開始します。左側に川が見えてくるので、やや左側を広くみせるように、カメラをふりながら。
 ほぼとめる時のアングルになったところで、列車が画面から飛び出すようにします。
【今月のお奨め路線】越美北線

 越美北線は福井県の福井駅の隣、越前花堂から越前大野を通って九頭竜湖へと向かうローカル線です。この越前大野付近は春から夏にかけては田んぼ風景が広がっているのですが、9月の中旬から下旬にかけては一面のソバ畑に変貌します。白い花の絨毯の中を1~2両のローカル車両がとことこと走って行く姿は、ぜひ捉えてみたい被写体です。年によってソバを植える場所が異なることもありますが、牛ヶ原駅、越前田野駅付近には例年作付けされているようです。
 この映像は計石~牛ヶ原間で撮影しました。越前大野駅よりも上り側にある撮影地なので比較的列車本数が多いのですが、越前大野駅より先は極端に列車本数が少なくなるので、時刻をよく確認してから撮影をしてください。
【筆者プロフィール】佐々倉 実
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鉄道映像作家。小学生の頃から鉄道写真を始め、大学生の頃、当時鉄道員をしていた今井洋氏と出会って以来、製作活動をともにする。現在は、佐々倉氏が撮影、今井氏が編集を担当し、雑誌やDVDパッケージを中心に鉄道ビデオを製作している。DVDに『魅惑の蒸気機関車 四季SL紀行』、『日本の鉄道 新幹線・特急編/蒸気機関車ローカル線編』などがある。2010年7月に『感動の美景鉄道』(MAXAM)が発売された。
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