ビデオサロン、初めてニコンを取材する!


現在のデジタル一眼ムービーのブームのきっかけとなったのがニコンのD90。あれから1年、その上位モデルにあたるD300Sの開発陣に動画機能を中心に話を訊いた。


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(写真右から)
株式会社ニコン映像カンパニーマーケティング本部:岩谷一史氏、同・開発本部:吉松栄二氏、同・松本由佳子氏、株式会社ニコンイメージングシステムズ開発本部:高橋信樹氏。
――ビデオサロンがニコンさんを取材するというのは、おそらく初めてではないかと思います。
岩谷●そうですね。我々も「ビデオサロン」さんのようなビデオ専門誌から取材の依頼があるとは数年前は思ってもみませんでした(笑)。
――D90は大変話題になりましたが、現在、一眼の新製品にはDムービー機能が採用されていますが、これまでのユーザーの反応はどうですか?
岩谷●我々も商品を発売した後は、いろいろな手段でお客様の声を吸い上げるようにしております。D90の動画に対する反応というのは、直接我々のもとに届けられるのは正直それほど多くはないのですが、Web上の動画サイトなどでは、D90で撮影した画像が少なからず見られるようになり、徐々に一眼レフでの動画撮影も浸透しつつあるのかなという感じはもっております。ただ、おかげさまで販売面では好調なのですが、動画を目的で買われるというよりは、従来通り静止画を綺麗に撮れるカメラということで買われて、その延長線上に動画機能があるという位置づけでしょうか。おそらくD90を動画撮影が目的で使われている方はまだまだ少ないのかなと思います。
――反応がなければ外してしまおうということもあると思うのですが、D5000、D300Sと動画機能は継続されていますね。
岩谷●デジタル一眼レフカメラでの動画撮影機能=「Dムービー」というのは、我々からの新たな提案ですから、外すことは考えていませんでした。これまで静止画だけでしか映像に関わってこなかったお客様に、動画を一眼レフで撮るということはどういうことか、まずは体験していただきたい。ですから反応がないからやめるということにはなりません。
 また機能面においても、オートフォーカスの部分ですとか、いろいろな部分でもう少しブラッシュアップしなければならないところがあるのも事実ですから中途半端な段階で開発、搭載をやめてしまうということは考えませんでした。
 それから我々以外のデジタルカメラメーカーさんも、すでに一眼レフに動画撮影機能を搭載してきています。販売面でも今後はこの機能の有無がお客様の選択肢のひとつになることも十分考えられます。
――デジタル一眼ムービーをスタートさせたメーカーとしては、ある程度ユーザーの使われ方を想定していたと思うのですが・・・?
岩谷●一部の報道系のお客様からは、とにかく動画で撮ってしまって、そこから一枚切り出すという用途での動画撮影は、潜在需要としてあるとは聞いておりました。
 一般的なところでは、例えばどこか旅行にいくときに、ビデオカメラと一眼レフを両方持っていくよりは、一台持っていって、あるときは静止画、あるときは動画と使い分けられれば、それはそれで利便性はあるのではという話も言われていました。
 しかしなによりも我々がお客様に体験して頂きたいのは、レンズを交換するという一眼レフ最大の特徴を生かすことによって、ビデオカメラとは全く違う新しい動画の魅力が引き出せるということです。またご存知のようにデジタル一眼の撮像素子は、ビデオカメラよりも大きなものを搭載しております。その大きな撮像素子の特徴を生かした被写界深度の浅い映像、まるでムービーカメラで撮る映画のような映像表現も、この一眼レフの動画によってお客様に提供できるのではと考えております。
――我々としてもどういう使い方がいいのか、模索しているところです。
岩谷●そうですね。この「Dムービー」で何を撮っていいのか、今はお客様自身がわからない状況かもしれません。それをメーカーのほうで、一眼ムービーならこういう映像が撮れるんだよ、こういう使い方をすればおもしろいよ、ということを提案していかなければいけない段階だと思います。
吉松●現段階では、ビデオカメラとは違うものだと思います。現行モデルではファイル規格の制限で2GBを超えた連続記録ができませんし、ライブビューの発熱で長時間の使用は難しい面もあります。30分というのがビデオカメラとデジタル一眼ムービーの境目ですね。現行モデルではハイビジョン(1280×720)では連続5分、SD(640×424、320×216)解像度では連続20分となっています。
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――D300SはDムービーとしては3台めになるわけですが、少しずつ進化していますか?
吉松●動画のフォーマットは同じですが、追加機能、編集といった部分でいくつか進化があります。まずは外部マイクがつけられるようになりました。
ただし、私どもはマイクを作っているわけではないので、他社のマイクを検証する必要があり、いろいろテストいたしました。実際やってみると、音質、レベルなどもかなり違いがあり、そこは苦労したところです。
 あと、SLを撮られるお客様などにとっては遠くから近づいてくる音の臨場感が大事ですから、オートレベルではなく、マニュアルである程度固定できる仕様にしようということで、オートとレベル3段階の固定という仕様に変更しました。それからアフレコ用に音声を録音しないモードもあります。
 静止画のカメラとして動画はモーションJPEGが採用しやすいということがありますが、フレーム内圧縮という点を逆手にとって、動画の編集機能をカメラに入れました。
――この機能からもわかるのですが、鉄道写真が趣味の方に、写真だけでなく動画も撮ったらどうですか?という提案もあるのかと思ったのですが。
吉松●私自身、鉄道写真を撮っているわけではないんですが、それはある程度イメージしました。
――音声をステレオにすると記録時間が短くなりますか?
吉松●内蔵マイクが16ビット11kHzだったのに対して、ステレオマイクを使った場合、16ビット44.1kHzになる分、クオリティがあがり、記録時間は短くなりますね。
――外部ステレオマイクを使えば、音質はよくなるし、モノラルガンマイクであったとしても、3極プラグで左右同音を入れれば、音質は向上するということですね。

――他には?

吉松●液晶表示の水準器を搭載する予定があったので、ライブビューでその水準器を表示したまま動画撮影できるようにしました。手持ちで水平を保ちながら撮らなければいけないシチュエーションでは、便利に使えると思います。
動画記録中のAFは、AF-ONボタンを押すとコントラストAFが動くようにしました。ただ、速度や動作音の点で更に検討を続けるべき課題はあります。
――機能的には、イン点、アウト点を決めてカメラ内で編集するということが可能になりました。
高橋●分割ということではなく、始点を設定し保存し、次に終点を設定して保存します。今はこれを別々にやっていますが、今後は、同時にやれるようにしたいとは思っています。
 元データは必ず残っていて、始点、終点を設定した動画は別に保存するので、メモリーカードの使用量は増えることになります。
――動画で撮っておいて前後をカットして、ここぞというシーンだけを残すというのはいいですね。
吉松●さらに、今回ダブルスロットにしていますので、たとえば動画はSDカードに保存するなど、分けられるようになっています。
――ファイルフォーマットの制限で記録時間が限定されますが、ライブビュー状態で熱をもつと自動でキャンセルされることは?
吉松●温度センサーがあって、ある温度になるとライブビューが30秒のカウントダウンの後強制終了されます。
――HD動画記録中に落ちてしまう可能性は?
吉松●それはめったにありません。灼熱地獄のところで何回も撮影を繰りかえした場合は起こりうるかもしれませんが、今回、45℃を越えるインドでのロケでも、そういった状況にはならなかったときいています。
また、今回のロケでは、砂漠の粉塵でカメラが覆われる状況になっても、内部への混入もなく問題なく撮影可能だったそうで、実際の過酷な環境で、改めて、防塵、耐久性能を確認することができました。
――記録はモーションJPEGというのは従来どおりですね。
吉松●HDでは、1280×720画素を毎秒24コマ読み出して、各フレームは静止画でいう「ベーシック」相当(一番圧縮率が高い)に圧縮しています。
――動画の画質に関して工夫した点は?
吉松●偽色、ジャギー、ノイズ、特にモアレに関して向上するような画像処理を行っています。
――RECする前にその画角をモニターすることはできますか?
吉松●録画を始めるまでは確認できないですね。それは課題としてあがっています。早めに対応したいと思っています。
吉松●画角という意味では、動画再生時の改善点として、HDMIでテレビに接続したときに、今回から、ボタンを押すと画像情報を消して映像をモニター画面全体に表示できるようにしました。
――動画の画作りのチューニングはD90とD5000ではかなり変わっていました。
松本●動画、静止画ともにピクチャーコントロールという機種に依らない画作りシステムを適用していますので、動画も、色再現、諧調などの画作りは基本的に同じです。ただ、解像感についてはD90を出したときは競合機種がなくて一眼の動画の画をどう作っていこうかという基準が明確ではありませんでした。その中で解像感を出して輪郭を強めの画にするのか、一眼の動画らしさを提供していくのかという方向性を模索した結果、D5000では若干チューニングを変えました。
――D5000は前者、D90は後者の方向ですね。D90は一見あまいのですが、昔の映画のような雰囲気があって、D5000は家庭用ビデオカメラのようになかなり輪郭を強調して、NRを強めにかけた画になっていました。
松本●今回のD300Sも合わせて、3機種とも色再現は変わっていませんが、ハード的に違う部分がありますので、見た目の解像感は違いがあります。D300SはどちらかというとD90の路線に近いかもしれませんね。
――動画と静止画で違う処理の部分とは?
松本●動画では高感度のNRが入っていないことと、アクティブDライティングという諧調圧縮の処理技術が入っていないので、それを見た目で補う処理はしておりますが、大きく異なる処理はしていません。
――静止画に入れていうようなNRを動画にもいれるのは難しい?
吉松●処理が膨大になるようなものを入れるのは難しいかもしれません。そのへんは徐々に改善されていくと思います。一眼レフはビデオカメラに比べて高感度などの面でポテンシャルが高いですから、これからに期待してください。
――静止画での高感度時の性能はかなり向上していますから、それをぜひ動画でも実現してほしいですね。ニコンさんの本気を見せてください! 
あとはコーデックですね。他社や我々があっと驚くような画質とハンドリングを両立させたコーデックを採用してください。
本日はありがとうございました。
※ニコンD300Sのレポートはビデオサロン10月号をお読みください。
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