Ready for Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K

あらゆるカメラを使い倒している
カメラマンが語る
「ポケシネ4K」の使い方

ブラックマジックデザイン「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K」 147,800円(2018年9月発売予定)

語る人・田村雄介
グラフィックから写真を経てムービーカメラマンに。WEB CMを中心に活躍。GoProからシネマカメラ、一眼、ビデオカメラなど現場に合わせて使いこなす。ブラックマジックデザインのカメラは初代から所有。

 

▲ ポケシネ4Kも想定してZEISS Lightweight Zoom21-100mmを導入した田村さん。metabonesのEF-MFTの0.71xSpeedBooster ULTRAで装着する。さっそく組み合わせてみた。

今月は、前回の座談会から引き続き、田村雄介さんに来ていただきました。前回印象に残ったのが、ブラックマジックデザインのシネマカメラ、特にURSA Miniは最高に使いやすいという発言だったんですが、現場であらゆるカメラを使っている田村さんだからこそ説得力のあると思います。具体的にどこが使いやすいんでしょうか?

前回、タッチパネルの応答性の良さという話をしましたが、その前提として設定メニューがシンプルでわかりやすいということが挙げられると思います。選択肢が多くないということは、階層も深くなく、これは現場での設定では本当に助かります。たとえばピクチャーモードにしても大きく分けてビデオ(REC.709)とフィルム(シネマ)の2種類しかありません。もちろんこの「フィルム」というのはLogのことで、グレーディングが前提なのですが、実際には「ビデオ」を選ぶことはほぼないので、「フィルム」一択と言ってもいいんです。

REDとか、ARRIとか、ブラックマジックデザインのカメラの場合、選択肢はなく、あたかも「フィルム」を選ぶようにカメラを選ぶことになります。そのモードはそのメーカーが「これだ」というのを自信を持って出してきています。

設定項目が少ないのに加えて、その設定を行う液晶パネルのタッチスクリーンの応答性がいいということですね。

ブラックマジックデザインのカメラは、途中でカメラOSが大きく変更され、URSA Miniなどはこの設定メニューのデザインが非常にわかりやすくなりました。ただこのデザインもある程度のサイズのモニターを想定していて、他社のように3インチとか3.5インチではなく、4インチ、5インチだから見やすく、設定しやすいんです。

このタッチスクリーン操作というのは、他にもメリットがあります。

REC中にも画面をタッチして画面を拡大してフォーカスを確認できるんです。しかも音をさせずに。たとえばインタビューなどでちょっと人物が前後に動いたかなというときに、そっと画面をタッチして、拡大したいところを動かして、ピントを確認できます。5インチあると拡大したときの見え方が違います。これだけスマホが普及して、みんな操作に慣れているわけですから、これを使いこなすのは簡単です。

 

◉URSA Mini 4.6Kの5インチ液晶パネルは操作性抜群
インタビューなどでREC中でも拡大してフォーカス確認!

▲ タッチパネルはカメラに新しい操作性をもたらす。たとえばインタビュー中など、人物が少し動いたときも、タッチして画面を拡大してフォーカスを確認することが、音をさせずに操作できる。設定も5インチサイズなので一覧性がよく、今どんな設定になっているのかがわかりやすい。

5インチタッチパネルの操作性の良さを
URSA Miniから受け継ぐ

▲ 田村さん所有のURSA Mini 4.6KとPocket Cinema Camera 4Kを並べてみる。当然ながらパネルサイズは同じ。ボディサイズは格段に小さくなる。
▲ 5インチで視認性と応答性に優れたタッチパネルで、手持ちスタイルでも快適操作。

 

田村さんはブラックマジックデザインの初代のカメラ、Blackmagic Cinema Cameraから使われているそうですが。

実は大型のタッチスクリーンでマウントに対してややスラントしている全体の構造は初代も今回のBlackmagic Pocket Cinem Camera 4Kも同じなんです。正統進化系だと思います。

ほんとだ! 実はシネマカメラのコンセプトは一貫していますね。

このところブラックマジックデザインは、URSA Mini ProでNDフィルターを入れ、ボタン/スイッチ類を増やしてややENGスタイルに寄った製品展開をしたり、URSA Broadcastというライブプロダクション向けのカメラを出していたので、シネマカメラ系をやめてしまうのではないかと心配していたのですが、ちゃんと考えていてくれたんですね。本当に嬉しくなりました。

 

Blackmagic Cinema Cameraから大きく進化してきたBMDカメラ
でも、初代「弁当箱」のコンセプトは生き続けている!

▲ 実はハードウェア以上に大きな転換点だったのが、2016年4月のNABで発表された新しいカメラOSとユーザーインターフェイス。ここでBMDカメラは画期的に使いやすくなった。URSA Mini以降は新しいカメラOSが採用されている。

 

初代BMCCのセンサーはフルサイズからすると2.3倍のクロップファクター(35mmフルサイズの感覚からすると画角が2.3倍テレ側にシフトする)があったのですが、画が良かったんです。RAWで撮ってDaVinci Resolveで現像するとぎくっとするような色が出てきました。今でも現場に持っていって、置きっぱなしでタイムラプス素材を撮ることがあります。ブラックマジックのカメラは初代から一貫してタイムラプス機能がわかりやすくて、終わったらProResのムービーファイルができているのもいいです。

Pocket Cinema Camera(ポケシネ)は10万円ちょっとだったので、プロもアマチュアもこぞって買いましたよね。

ハイブランドのイベントなどでブランド社内用の映像等を依頼されることがありますが、EFからこのポケシネの撮像面積に合わせて光学変換するレデューサーレンズを入れたSpeedBoosterを利用して、SIGMA Art18-35mmなどを組み合わせて、このカメラだけでよく撮りましたね。当時は128GBなど大容量のカードも高かったのですが、最近は価格も手頃になっているし、ストレージの環境もよくなってきたので、今こそRAW遊びができるカメラだと思います。

これはバッテリーが持たなかったですね。

初代Cinema CameraもポケシネもバッテリーはDC出力のある外部バッテリーを腰につけたチョークバックに入れて使っていました。バッテリーにしてもネガティブなことを言う人の声が大きいので、使えないカメラだと思ってしまう人が多いのですが、工夫することで使えるようになるんです。

 今はバッテリーにしてもいろいろと便利なものがあって、探せば撮影用の純正アクセサリーでなくて安くていいものがたくさんあります。そういうもので足回りを固めることが大切です。

カメラは自分で使いやすくする
歴代のカメラも活用

▲ 初代Cinema CameraもPocket Cinema Cameraもバッテリーのもちがよくないので、DC出力のある外部バッテリーで運用している。

ということで、今度のポケシネ4Kもどうやって足回りを固めるかですね。

はい。すでにいろいろ考えて準備をしています。まずレンズなのですが、URSA Mini 4.6Kでも使うEFマウントのカールツァイスのライトウェイトズームLWZ.3 21-100mm/T2.9-3.9 T*を最近導入しました。EF-MFT変換のSpeedBoosterを利用して装着します。これに加え、既に所有して使い慣れているSIGMA14mmF1.8 DG HSM、18-35mm、50-100mm F1.8 DC HSMのArtシリーズを使うパターンですね。

もう一台のほうは、純正のマイクロフォーサーズマウントで、オリンパスのM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROとLAOWA 7.5mm F2 MFTを検討しています。

レンズは用途に合わせて
ZEISS Lightweight Zoom、SIGMA Artシリーズ、オリンパスなど

先月の座談会でも話したのですが、このライトウェイトズームをURSA Miniに組み合わせてもいいのですが、ポケシネ4Kと組み合わせると意外とコンパクトになると思うんです。小さいカメラには小型軽量レンズをとつい思ってしまいますが、小さいカメラだと大きめのズームレンズと組み合わせてもトータルではそれほど大きくならない。それを想定して、スモールリグのパーツを揃えてみました。

(ポケシネ4Kを想定して準備していたリグに組み込んでみる)

▲ ポケシネ4Kを想定してスモールリグのパーツで組んだリグ。URSAに比べてプレートも小型にできる。ケーブル類は割愛しているが、とても美しい仕上がりになっている。

リグを組んだ場合は、Vマウントで運用します。ケーブル類をつけていませんが、バランス的にもなかなかいいです。ショルダーで撮る場合は木製のグリップをつけて、フォーカスはPD MOVIEのリモートで右手で送れますし。カメラのモニターを見るのはちょっと厳しいので、アームを出して、SmallHDの502 BrightとかFocusを利用すれば完璧だと思います。スモールリグはAmazonでパーツごとに購入できるし、コストパフォーマンスが高い。リグの部分のパーツ代は10万円いかないと思います。 

あと、今日どうしても試してみたかったのが、ポケシネ4KにSIGMA 14mm F1.8 DG HSMをつけて、スタビライザーのZhiyun Crane 2に乗るかどうかなんですけど、実際に試してみていいですか?

(さっそく試してみる。グリップがモーターに当たるが、カメラを上下逆にすると装着でき、SIGMA 14mm F1.8というかなり重めのレンズをつけてもバランスが取れるということがわかった)

Zhiyun Crane 2に乗るのかどうか、私も含めて気になっている人は多いので、これは朗報ですね。このセットはポケシネ4Kの高感度と合わせて、暗めの屋内や夜のジンバルワークでワイドめで攻めたいときには最適な組み合わせです。ワンハンドスタビライザーとしてはかなり重めですが、両手で持って10分くらいは充分運用できそうです。

▲ Zhiyun Crane 2にはカメラを上下逆にすれば装着できる! 上にネジ穴があることが功を奏した。

それから、USB-C経由でSSDで外部収録できるということは画期的なことだと思います。URSA MiniではSDIから出力されるものを純正のSSDレコーダーで受けて、別途2.5インチのSSDで収録という方法でしたが、ポケシネ4Kのほうは、それがUSB-C経由になり汎用のSSDに記録できてしまうわけで、大きくコストダウンできます。

そのうちSSDを固定するようなパーツが出てくるかもしれませんね。

電源周りでは、バッテリーがLP-E6互換というのもポイントです。LP-E6用のカプラーがあるので、いろいろなバッテリーから電源を供給できます。

もう準備万端になっていますね! 機材を使いこなす達人、田村さんの足回りの固め方は参考になった人が多いと思います。本日はどうもありがとうございました。

ビデオSALON2018年8月号より転載