「コマーシャル・フォト」と「ビデオサロン」共催によるイベントMash up Photo Video「EOS 5D Mark Ⅱでミュージックビデオを撮る!」が6月23日、銀座のアップルストアー・シアターで開催された。早くから入場を待つ人が並び始め、開場時間を予定より早めたが座席はすぐに埋まり、開始前にすでに立ち見の人で通路まで一杯になった。それほどまでに5D Mark Ⅱでの映像制作に関心を寄せる人が多いことが実感できた。
今回の出演者は高橋栄樹さん(映像ディレクター/凸版印刷)、村上拓さん(ムービーキャメラマン)、後藤和弘さん(プロデューサー/ビヨゴンピクチャーズ)。AKB48のプロモーションビデオ制作に携わる3人に、AKB48の「10年桜」と「涙サプライズ!」の2曲のMV制作を通して、5D Mark Ⅱの魅力や可能性などを語ってもらおうという趣向だ。MVはDVD版のみの発売となっているが、この日は特別にキヤノンのフルハイビジョンプロジェクターWUX10を持ち込んで、世の中には出回っていない貴重なBD版での上映が行われた。
撮影スタイルが大きく変わった
「10年桜」のPV撮影に5D Mark Ⅱを使う話が出たのは昨年秋、まだ発売前の時点だったという。「新しい機材を使うことについて正直、不安はあった」(後藤さん)と打ち明けたが、軽量ゆえに細かな揺れを拾いやすい欠点は一脚を使用することで解決。手持撮影でも一脚を装着して安定させ、ステディカムのように使用した。また、フォーカス操作は専門のフォーカスマンが担当したが、目盛りが見づらいということで、フォーカスマン専用に8インチのモニターを用意してクリアした。
H.264コーデックのHDということで、圧縮が大きいという不安もあったが、テスト撮影した印象はとてもよかった。「特にオープンエアで撮影したものはすごくきれい」「ハイライト側、暗部ともよく持ちこたえてくれる」「肌の表現がしっかりしている」という3人の評価。予備として通常のビデオカメラにmini35をつけたシステムも用意して並行して撮っていたが、結局1カットも使用しなかったそうだ。両者の画質がまったく違ったこともその理由だが、何より5D Mark Ⅱの画質がすぐれていて何の問題もなかったということの表れだ。「見たことがない映像、写真がそのまま動いている感じ」と、仮編集を見て感激した村上さんが、深夜にプロデューサーの後藤さんに「すごいことになっているよ」と電話したというエピソードも披露された。
実際に5D Mark Ⅱを使用したメリットはどんなことだったのか?
「これまでは、いい感じでボケるためにどんどんカメラを離して望遠を使うようになって、すると今度は距離の圧縮が起こり不自然に見えていた。5D Mark Ⅱは人の目に近い50~85mmできれいにボケてくれるので、自然な感じが出せる」(村上さん)とボケ味の魅力が語られる一方で、機動性の良さという話も大いに興味を引いた。「大きくて重いムービーカメラは撮影スタイルが決まってしまう。これだと通常は入っていけないところまでカメラが入れる。このときは狭いバスの中の撮影で威力を発揮した」(高橋さん)「CMOSサイズのこともあるけど、軽くてスチルと同じように構えて撮れることが何より大きかった」(村上」さん)
▲高橋栄樹さん(左)と村上拓さん(右)
「涙サプライズ!」はダンスシーンが中心で、5D Mark ⅡとRED ONEとの併用で撮影を行った。5Dは秒間30コマで素早い動きに弱い面があり、ダンスシーンはRED ONEでハイスピード撮影し、編集時にノーマルの速度に戻している。画質的にはRED ONEは従来の35mmシネカメラに近いテイストで、5Dはよりデジタルビデオ的というが、両者の併用は特に違和感はない。ただし、5Dを用いたカットではわずかに音と画面にズレが感じられたそうで、これはビデオのフレームレートが正確には秒29.97コマなのに対し、5Dはぴったり30コマであることに起因するらしい。そこで、編集時にAfterEffectsを使ってその微調整を行なっている。
余談だが、この曲のジャケットも村上さんが担当しており、5D Mark Ⅱを使って同じ現場でライティングも変更せず撮影を行なっている。つまりスチルとムービーの1台二役をこなすメリットが最大限に活かされたわけだ。
▲後藤和弘さん
ワークフローにも大きな関心
2本のMVについて、それぞれ撮影から編集までのワークフローの説明がされたが、熱心にメモをとるプロの映像関係者が目立った。使用目的や作品の傾向、機材環境にも左右されるので「これが正解」というものはないが、よりよい方法を模索している人が多いことをうかがわせた。ちなみに今回の2本は、いずれもHDCAMのテープに落としてオンライン編集を行い、最終的にSDで納品している。
6月2日に発表されたファームウエアに関する話題も出た。これによりマニュアル操作での動画撮影が可能になり、村上さんによると「とても使いやすい」ということだ。トークの締めくくりとして、5D Mark Ⅱの魅力が語られ、総合すると「機動性が高く演出的にも自由度が高い」「キヤノンの純正レンズが自在に使える」「友達目線での自然な撮影が可能」という3点が挙げられた。
今後の要望としては「レンズスルーの光が見たいので光学ファインダーが使えるようにしてほしい」という意見が出された。
最後に、キヤノンが新たに開設した「EOS MOVIE」サイトの案内があり、本サイトのために十文字美信さんが制作した映像作品「さくら」が上映された。
次回は7月28日(火)18:30~、
第1部「EOS 5D MarkⅡでショートムービーを撮る!」と題し、映画監督の藍河兼一さんが5D MarkⅡを使った短編映画づくりについて語る。
第2部 6月にハリウッドで開催されたシネギアエキスポに展示された5D MarkⅡ関連のアクセサリーを、実際に参加したライトニング佐藤氏が報告。
会場では、5D MarkⅡ用のマットボックスなどを大々的に展示する予定。
これは見逃せない!
キヤノンEOS MOVIE サイト http://cweb.canon.jp/camera/eosd/eosmovie/