ブラックマジックデザインは、PCIe Gen 4カード『DeckLink IP 100G』を発表した。発売日は7月で、価格は298,800円(税込)。

『DeckLink IP 100G』は、最大8チャンネルのHDまたはUltra HDビデオを、ST 2110ベースのシステムで同時にキャプチャー・再生できる。100GイーサネットQSFPポートが2つあるので、冗長性が得られ、2つの100Gイーサネットスイッチにも接続可能。冷却システムも内蔵している。

また、DeckLink IP 100Gは、GPUDirect RDMAをサポートしており、DeckLinkとGPU間でメモリを直接転送できるので、GPUでビデオを処理する際にPCIe帯域幅を効率よく活用でき、遅延が大幅に低減する。

DeckLink IPカードは、ST 2110ベースのIP放送システムで直接ビデオをキャプチャーし、再生する最も簡単なソリューション。他のDeckLinkと同じ機能に対応しているので、既存のソフトウェアで使用できる。

DeckLink IPカードは複数のビデオチャンネルに対応していることに加え、各チャンネルで同時にキャプチャー・再生可能。放送グラフィックやバーチャルセットを生成したり、GPUベースのAIイメージ処理を行うサーバーラックを構築し、ST 2110ベースのIP放送インフラに直接統合できる。DaVinci ResolveをST 2110ベースのIP放送用の編集ワークステーションとして使用することも可能。DeckLink IPは高速PCIe接続に対応しているため、最新のMac Pro、Windows、Linuxコンピューターで使用できる。

DeckLink IPカードは、IPビデオ規格であるSMPTE 2110に準拠。この規格は、IPネットワークを介して放送するビデオ、オーディオ、補助データの伝送、同期、定義を規定している。また、ビデオソースの同期にはPTPクロックが使用される。DeckLink IPは、SMPTE-2110-20の非圧縮ビデオ、SMPTE-2110-21のトラフィックシェーピング/タイミング、SMPTE-2110-30のオーディオ、SMPTE-2110-40の補助データに対応。SMPTE 2110の大きな利点は、すべてのビデオ、オーディオ、補助データがネットワーク上を個別に伝送されることであるという。

コンピューターとST 2110ベースのIPビデオネットワークの問題点は、悪意のあるソフトウェアやハッカーに対する脆弱性があることだが、DeckLink IPはフレームバッファーを用いてすべてのビデオを伝送するため、この問題が生じないとしている。他のDeckLinkカードの機種と同様に、ビデオとオーディオはDeckLinkのフレームバッファーに転送され、そこでビデオの再生が管理され、次にST 2110のIPビデオチャンネルに変換される。これにより、悪意のあるソフトウェアやハッカーがST 2110ベースのIPネットワークに直接アクセスすることは不可能となるという。

DeckLink IPはホストコンピューターとの高速接続に対応しているため、モデルに応じて複数のHDおよびUltra HDビデオチャンネルを扱い、各チャンネルを同時にキャプチャー・再生できる速度が得られる。PCI Expressはレイテンシーが非常に低く、ビデオをキャプチャーまたは再生しているソフトウェアと極めて正確な時刻同期が可能。

DeckLink IPの接続はマルチレートなので、機種に応じて、あらゆるSD、HD、Ultra HDフォーマットに対応。DeckLink IPは、SDでは525i59.94および625i50の両方のフォーマットに対応。HDにおいては、DeckLink IPの全モデルは1080p60までの720p、1080i、1080pビデオフォーマットをサポート。Ultra HDは、2160p60までのすべてのフォーマットに対応。ビデオフォーマットは各チャンネルで個別に設定でき、Desktop Videoユーティリティのデフォルトビデオフォーマット設定を使用して瞬時に切り替えたり、あるいはDeckLink SDKで直接切り替えられる。

Apple ProResやDNxHDなどの広く使用されているビデオフォーマットに加え、10-bit非圧縮のキャプチャー・再生にも対応。10-bitは、8-bitビデオの4倍の精度で色を表現できるため、テレビで最も広く使用されているフォーマットだ。10-bit非圧縮ビデオでは、すべてのイメージはソースとピクセル単位で完全に一致するコピーであるため、常に最高品質で作業を行える。つまり、極めてシャープなグリーンバックのキーイング、継ぎ目のないVFX合成、優れたカラーコレクションを実行できる。

DeckLink IPシリーズの全機種は、チャンネルごとに10Gイーサネットに収まるSMPTE-2110 IPデータレートに対応しているため、小型で、消費電力が少なく、低価格の製品をダウンストリームで使用できる。しかし、2160p59.94または2160p60でUltra HDを扱っている場合、ビデオは非圧縮10-bitビデオの帯域幅の上限に収まらない。そこで開発されたのがBlackmagic IP10コーデックだ。DeckLink IP 100Gでは、オープンスタンダードのコーデックであるIP10は、わずか8サンプルのレイテンシーで2160p59.94および2160p60テレビフォーマットのデータレートを下げる。極めて小さなコーデックであり、FPGAリソースをほとんど使用しないので、SMPTE-2110 IPビデオ製品のコストが抑えられる。

DeckLink IPは広く使用されているビデオソフトウェアをサポートしているため、使い慣れたツールで作業可能。DeckLink IPは、DaVinci ResolveをST 2110ベースのIP放送用の編集・カラーコレクション・ソリューションとして使用するのに最適。DeckLink IPはキャプチャー・再生を同時に実行できるので、DaVinci Resolveのライブグレーディング機能を使用して、ビデオのキャプチャー、カラーコレクションの適用、出力をすべて同時に行うことも可能。また、Final Cut Pro、Media Composer、Premiere Proなどの編集ソフトウェアなどとも機能する。Fusion、After Effects、Photoshopで優れたVFXを作成することもできる。WindowsのWDMドライバーも同梱。

DeckLinkカードの全機種は、DaVinci Resolveに統合されているVFXソフトウェアであるFusionの他、Adobe After EffectsやPhotoshopとも互換性がある。Fusion StudioはパワフルなノードベースのVFX合成ツールで、2Dおよび3D環境、数百種類のエフェクトなどに対応。また、Fusionは無償ダウンロードが可能なDaVinci Resolveに含まれている。同梱のBlackmagic Media Expressソフトウェアを使用して、ビデオをファイルにキャプチャー・再生し、Fusion、After Effects、Photoshopにロードすることも可能。

DeckLink IPは他のDeckLinkカードと同様に機能するので、人気のビデオやオーディオ配信ソフトウェアと完全な互換性がある。つまり、配信ワークステーションを構築できるため、世界中の何百万人ものオンライン視聴者に対してライブ配信を行える。Macでは、Open Broadcaster、Wirecastなどの優れた配信ソリューションを使用可能。Windowsでは、Open Broadcaster、Xsplit Broadcaster、Wirecastを使用できる。DeckLink IPでは、ST 2110に準拠したあらゆるIPフィードをライブストリームに変換し、必要な数だけのオンラインプラットフォームに送信可能。あるいは、ATEM Streaming Bridgeと併用すると、遠隔の放送ネットワークとリンクさせることも可能。

DeckLinkカードにはMac、Windows、Linux用の高度なデベロッパーSDKが無償で同梱されている。デベロッパーSDKを使用すると、社内用、あるいは他の放送局に販売するための独自のソリューションの開発を簡単に行える。DeckLink SDKは、柔軟性が必要な場合には、ハードウェアのコントロールが低水準で実行でき、一般的なタスクには、使いやすい高水準のインターフェースで作業できる。BlackmagicのDeckLinkカードは何千ものメーカーやデベロッパーの製品に使用されており、DeckLink SDKは強固な基盤を提供するため、安心して商業品質の放送ソリューションの開発を行える。

◉製品情報
https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/decklinkip

ブラックマジックデザイン
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