ソニーのデジタルシネマカメラの最小ラインナップ、FX3がVer.2.0にアップデートする。

ポイントとしては、

  1. カメラ内部でLUTを当てたS-Log3撮影に対応   
  2. 新しいメインメニューによる操作性の向上
  3. タイムコードシンクなど撮影・編集アシスト機能の拡充

方向性としては、FX6やFX9、VENICEなどプロフェッショナルの制作現場で使われているシネマカメラと操作性を共通化することで、FX3をサブ機として使いやすくするバージョンアップになっている。また、操作体系を共通化することによりFX3を入門機として、Cinema Lineシリーズ上位機種へのステップアップがしやすくなり、将来のシネマクリエイターを育成したいという意味合いもあるという。結果的にα7 SIIIとはより差別化されることになる。

カメラ内部でLUTを当てたS-Log3撮影

 Ver.2.0によってFX3は、ポストプロダクション処理を前提とし、現場では画づくりを行わないフィルムカメラと同等の使い方ができるLog撮影モード」が選択できるようになる。Log撮影モードでは、モニタリングLUT適用後の映像をカメラ液晶モニター及び外部モニターに表示することができ、ポストプロダクション後の最終的なルックを確認しながら撮影することができる。

 モニタリングLUTは、プリセットLUT[S-Log3,s709,709(800%)]に加えて最大16個までユーザーLUTをインポートすることが可能。また、ソニーが独自に開発したトーンカーブS-Log3と、S-Gamut3S-Gamut3.Cine2種類のワイドカラースペースが使用できる

Cine EIモード

撮影シーンの照明条件に応じてベースISOを固定した撮影モードで、標準の基準感度ISO800と、暗所環境用の高感度ISO128002つから選択することができる。また、15+ストップのダイナミックレンジを確保することでにより幅広い光量環境のもとで白トビや黒ツブレをおさえた映像を収録をすることができる。撮影時はEIExposure Index)を調整することでモニタリングLUTの露出を変更することができる。

Cine EI Quickモード

Cine EIモードと同様にベースISOで撮影することができ、調整したEIに連動して自動的にベースISOが切り替わる撮影モード。撮影時はベースISOを意識せず、EI調整をするだけで撮影を進行することができる。

Flexible ISOモード

従来のS-Log3撮影同様にISO感度を調整しながら撮影するモードで、低感度側640から102400、さらに拡張ISO感度域160から409600を選択できる。ISO感度の調整でモニタリングLUTの露出を変更することができ、設定されたISO感度は映像にも記録される。

Cine EIモードが採用されていたFS7やFX6を使ってきたユーザーからすると、操作体系が同じになってより使いやすくなっているが、α7S系などを使ってきてその延長でFX3を使っているユーザーにはCine EIの概念は少々わかりにくいかもしれない。

概念を理解するには以下の図がわかりやすい。これまでのα7系のS-Log3収録の場合は、カメラ本体内部でLUTを当てることができず(ガンマアシストは可能だったが)、LUTのイメージを確認するには、外部モニターが必要だった。また、撮影時にカメラ側でISOで感度アップをするとノイズが増えてしまうというリスクがあったり、ダイナミックレンジが変わってしまっていた。

Cine EIのEIとはExposure Indexの意味で、露出指標ということ。まずベースのISOが決まっていて(下の例だとISO800)、EIを+1ストップにするか、+2ストップにするかをモニタリング段階で設定できるが、それは記録映像には反映されず、ポストプロダクション段階で増感することで柔軟性を確保することができる。つまりISOに関してはRAW現像のようなことができるわけだ。

LUTも同様で、このアップデートにより、LUTファイル(.cube)を読み込み、モニタリングLUTを当てて映像を確認できるようになる。このLUTは記録映像には反映されず、改めてポストプロダクションでカラーグレーディングしていくことになる。

この変更によって、ピクチャープロファイルの構造も大きく変更される。

操作としては、まずLog撮影するかどうかで選択肢が分かれ、Log撮影の場合は、前述の3つのモードから選択することになる。一方でピクチャープロファイルにはプリセットのPP7(S-Log2)がなくなり、PP8、PP9はLog撮影モードに統合されることになる。

注意したいのはS-Log2は選択できなくなること。意図的にS-Log2を好んで愛用してきた人はVer.2.0にはアップデートしないほうが良いということになる。

またPPにPPLUT1〜4が追加され、ユーザーLUTを当てた状態での記録も可能になる(こちらはLog撮影モードではなく、Cine EI撮影にはならない)

要は、これまではPPのひとつとしてLog撮影があったのが、Log撮影かそうでないか(PP)という選択が前段に加わることになる。

 

シネマカメラ風のメインメニューに

MENU画面において、撮影設定が一目で分かる「メインメニュー」(撮影設定一覧)を設置した。タッチ操作で撮影に必要な項目にクイックにアクセスができるので、撮影環境の変化に柔軟に対応することができる。

スワイプアップでFnメニューを呼び出せるように

また、Fn(ファンクション)メニューの呼び出し方も変更になった。FX3では、撮影待機画面でカメラ液晶モニターを上方向へスワイプアップすることによって呼び出すことができる。右手でXLRハンドルユニットを持っていたり、Fnボタンが押しづらい場合でもかんたんに設定画面を呼び出すことができる。

AFアシスト機能を搭載

オートフォーカス(AF)での記録中でも瞬時にマニュアル操作を行うことができ、状況に応じて被写体をすばやく選ぶことができるように。FX3では、AF Assistをオンにすることで、FX6/FX9と同様にオートフォーカス中のレンズリングによるマニュアル操作できる。

さらに、FX3では顔選択アルゴリズムを最適化することで、リアルタイム瞳AF/顔検出AF時には、オートフォーカス中もフォーカスリングを使って複数の人物の中から直感的に特定の人物にフォーカスを合わせることができる。フォーカスリングを動かすのをやめると、フォーカスリングで合わせた被写体に粘り強くフォーカス追随する。

※E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS、E 18-200mm F3.5-6.3 OSS LE、その他Aマウントレンズ装着時は使用不可

タイムコードシンクに対応

マルチ/マイクロUSB端子経由でのタイムコード入力をすることができるようになった。タイムコード供給源となる出力機器と本機を接続して、タイムコードを合わせられる。

※タイムコード出力機器と本機の接続には専用アダプターケーブル(リペアパーツ別売)が必要

 

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