ビクターは2009年12月15日、小型軽量で汎用性にすぐれた業務用ビデオカメラ、ProHDメモリーカードカメラレコーダーGY-HM100とGY-HM700の体験セミナーを開催した。会場は有楽町にあるケンウッドスクエア・丸の内。映像クリエイターの高野光太郎さんがプロユーザーの視点からその魅力を語り、途中からカメラマンの岡英史さんも加わって、撮影・編集両面でのメリットを解説した。


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GY-HM100(左)とGY-HM700
冒頭、ビクターの広報担当者からGY-HM100と700について簡単な紹介・説明があった。HM100はレンズ一体型の小型カムコーダー。大型のハンドルと外部マイクを持ちながら、全体はコンパクトにまとまっており、重量も1.4kgとひじょうに軽い。HM700はコンパクトなショルダー型カムコーダー。レンズマウントは1/3インチバヨネット方式で、多彩なレンズ交換が可能(標準レンズはキヤノン製F1.6、14倍ズーム)。
撮像素子にはHM100は1/4型の3CCD、HM700は1/3型の3CCDを採用。ともに記録メディアにSDHCカード(クラス6以上)を使用、スロットを2基備え、リレー記録やスロット間のファイルコピーが行える。HM700にはオプションでSxSメモリーカードレコーダーが用意され、SDHCカードとの同時記録も可能になる。
最大の特徴はFinal Cut ProのネイティブファイルであるQuickTime(MOV)ファイル形式にネイティブ対応すること。さらにAvid Media ComposerやAdobe Premier、トムソン・カノープスのEDIUSなどWindowsの主要なノンリニア編集システムがサポートしているXDCAM EX MP4ファイルファイル形式にも対応している。MOV/MP4にダイレクト記録できることにより、Mac、Windowsの編集システムに直接取り込むことができ、コーデック変換やラッピング変換の手間が省け、ワークフローの飛躍的な効率化が図れる。
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ProHDのワークフローについて解説する高野光太郎さん
シームレス化は時代的に必須
続いて高野光太郎さんが登場。GY-HM100の使用感と、HM100からFinal Cut Pro(FCP)へのワークフローについて話を進めていった。HM100の魅力はまず軽量コンパクトで機動性にすぐれること。オートモードに加えて多彩なマニュアル操作が可能だが、ここではフォーカスアシスト機能が便利で、フォーカスの「ヤマ」が分かりやすいという。また、高野さんは「ステルスモード」と呼んでいるそうだが、ハンドルやマイクを取り外すと普通の家庭用ビデオのような形と大きさになってしまう。カメラが悪目立ちしないので撮られることに慣れていない相手に有効で、警戒されず自然な様子を撮ることができるのだそう。
ケーブル1本でMacにつないで、簡単にMOVファイルを読み込める。このときもファイル変換が要らないので高速で転送ができる。クリップはQuickTimeなので、FCPを立ち上げずとも確認ができるし、(メーカーは推奨していないが)ドラッグ&ドロップでFCPに直接取り込んですぐに編集作業に入れる。ロケ先で撮影後ホテルに戻ってMacBookProでオフライン編集といったことが簡単に行える。変換不要でトランスコードがない、ネイティブで編集できる、の3要素は今や欠かせないものになっており、それで短縮した時間を作品のクオリティアップに向けることができる。「編集作業のシームレス化は時代的に必須になっている」と高野さんは言う。
さらにMP4にもネイティブ対応することから、XDCAM EX3]とHM100の2カメ体制が実現している。両者で撮影した映像ファイルを同じタイムラインに載せることができ、シームレスな連携が可能だ。
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岡英史さん(左)はHM700の使用感と、EDIUSでの取り込み・編集について語った。
テープレス時代はダブル収録じゃなくちゃ!
ここで、高野さんが応援要請したというムービーカメラマンの岡英史さんが登場。岡さんはHM100の実機に触れるのはこの日が初めてというが、かねてよりHM700を使用しており、まずはその使用感を述べた。HM100と並べるとぐっと大きく見えるが、ショルダータイプとしては小型でしかも軽い。「バランスもいいし、かなり使えるという印象。その軽さは10分~15分使えば実感できる」と言い、女性カメラマンが増えているブライダル業界で特に威力を発揮するのではないかと話した。液晶モニターが他社製品よりも大きく(4.3インチ)きれいで、ビューファインダーの視認性もすぐれていることもHM700の長所に挙げた。
また、SxSを併用した同時収録のメリットも話題にのぼった。テープレス時代になって編集が便利になった反面、データの消失や破損というリスクも生まれていて、「ダブル収録ができないと怖い」という話になった。高野さんは「SDHCカードの入れ忘れ」という人為的ミスも経験したそうで、特にブライダルのような撮り直しが利かない現場では同時収録は必須。岡さんによれば、最近はスタジオ使用時間の圧縮で撮影スケジュールがタイトになっていて、プレビューバックしている時間がない。その意味でも同時収録は重要になっている。
ProHDは2機種とも3CCD式を採用しているが、あえてCMOSではなくCCDを使うメリットは何かという話題も出た。CMOS特有の問題としてローリングシャッター現象があるが、CCDにはこの心配がない。また岡さんは「CCDはよく粘る」という話をした。これは数字には表れない部分で、ダイナミックレンジ自体は両者でほとんど変わらないが、画像が白くとぶ時にCMOSは一気にとぶのに対し、CCDは完全にとぶぎりぎりまで階調を維持するということだ。
EXファイル(MP4)収録したファイルをEDIUS Pro(5以上)で編集した感想は、まずファイルが軽いということ。したがって、あまりハイスペックでないCORE2タイプのCPUを使うようなPCでも普通に作業することができる。業界標準のMPEG-2 Long GOPコーデックを採用し、XDCAM EXの35Mbpsフルスペックに対応していることから、EX3の代わりにHM700を使う選択肢も可能になっている。
ここまで、GY-HM100/700を使うことでどれだけ編集がしやすくなってコスト削減につながるかが話されてきたが、「そういう話がプロデューサーのレベルまで届いていない」と最後に問題提起。高野さんは撮影機材の選択にも関わることが増えているそうだが、テレビ局ベースの仕事しかしていない人には、なかなかそこまでの理解が及んでいないのが実情で、編集作業まで見越した機材選びはまだあまりされているとは言いがたい。「編集作業においてトランスコードは無駄な時間でしかない」と話し、撮影現場サイドと編集サイドの連携の「シームレス化」の必要性を訴えて約1時間のセミナーは締めくくられた。
問:日本ビクターお客様ご相談センター 0120-2828-17
業務用システム製品サイト http://www.jvc.co.jp/pro/