ブラックマジックデザインは、アニメ『LUPIN ZERO(ルパン ゼロ)』のポストプロダクションに、DaVinci Resolve Studioが使用されたことを発表した。絵コンテからビデオコンテを作成したり、映像の色や質感の調整などにDaVinci Resolveを使用したりすることで作業の効率化に成功したという。
『LUPIN ZERO』はDMM TVで独占配信されているアニメシリーズ。漫画を原作としたアニメシリーズ『ルパン三世』をもとに、主人公ルパンの少年時代を描いた作品である。『ルパン三世』のアニメシリーズは1971年に放送が開始され、その後もテレビスペシャル、劇場版、スピンオフ等、長期にわたりシリーズ展開をしている作品だ。今回の『LUPIN ZERO』は、多くの『ルパン三世』シリーズを手がけてきたテレコム・アニメーションフィルムが制作した。
「この作品は、ルパン三世 PART1の前の物語になるので、現在のデジタルを強調した作りにはせず、質感も時代背景の1960年代を意識しました。手法は近年のアニメ作品と変わらずコンテ作成時からBlenderでレイアウトやアニメーションを作って作画のガイドに使っています」と話すのは同社コンポジター/エディターの柳田美和氏。今回の『LUPIN ZERO』で編集を担当し、DaVinci Resolve Studioで編集を行なった。
柳田氏はアニメ作品の本編編集のほかにビデオコンテを作成することもあるという。今回の作品でもビデオコンテを作成した。「絵コンテには各カットの尺も書いてあるので、それをガイドに絵コンテの画像を繋げていきます。実際に絵コンテ上がりで動画にした方が全体像を早い段階で確認できるので、ビデオコンテを作っておいて監督や他のスタッフの方たちがいつでも確認できるようにしておくんです。パンなどのカメラワークがある場合はDaVinci Resolveで簡単に動きもつけます」
「作画と背景ができると撮影(コンポジット)で合成した各カットのムービーが上がってきます。そのムービーをVコン(ビデオコンテ)のタイムラインを差し替えて編集していきました。セリフや間の調整が必要なのでカットによっては編集時にコマを抜いたり止めを長くしたりする調整もしました」と柳田氏。
また、監督から少しクオリティアップさせたいというリクエストもあり、DaVinci Resolve上で微調整も行なったという。「例えば、塔の上で登場人物が心理戦を繰り広げるシーンがあります。こちらはアクションが少なく派手なシーンではありませんが、少しパラ(影)を足したいとの要望でした。カラーページで石垣や画面手前に影を足して遠近感を出しています。他のシーンでもパラは足しました。背景に陰影をつけたり彩度を調整してキャラクターが画面に埋もれないよう心がけました。トラッキングが簡単についてくるので調整が早かったです」
「そのほかにも光源や靄を足したりしたシーンもあります。こういった効果をつけることも手軽にできます。また、作業用にキャッシュをとったりプロキシメディアを作ったりする必要もなくリアルタイムで快適に動作したことも便利でしたね」と柳田氏は付け加える。
「通常のアニメの編集作業では、オフライン編集後にポストプロダクションで納品規格に応じて信号や色のチェックなどが行われます。ここで今回のような調整を行うと時間がかかってしまうし、アニメ撮影会社にカットごとに直しを戻すのもかなり気が引けます。この作品では、そういった最終的な微調整の部分もDaVinci Resolveで行えました。レンダリングも非常に速く納品用フォーマットに書き出しもでき編集過程に色々な事に対応できたのでとても好評でした」と柳田氏は結んだ。