左より、監督(辻井 俊、中田江玲、八代夏歌、鴨林諄宜)、安藤親広スーパーバイザー ©2026 VIPO

取材・文●編集部 岡部

特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)が、文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2025」の製作実地研修で完成した短編映画4作品の合評上映会を、3月24日(火)に東京・東劇にて開催した。

今回が20回目を迎える「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」。これまで、93作品の短編映画が生まれ、その後、40人の監督がここから商業映画デビューを果たしている。

中には、第77回カンヌ国際映画祭において『ナミビアの砂漠』が国際映画批評家連盟賞を受賞した、山中瑶子監督(ndjc2019)や、第78回カンヌ国際映画祭「監督週間」に選出された『見はらし世代』を手がけた団塚唯我監督(ndjc2021)などもおり、才能ある若手映画監督が羽ばたく次のステップにおいて大きな成果を上げている。

今回は、約70名の応募から、辻井俊監督、中田江玲監督、八代夏歌監督、鴨林諄宜監督が選出。ワークショップや脚本指導、演出講義などを通じて研鑽を重ね、各制作プロダクションのもと、プロのスタッフ・キャストとともに短編映画を完成させた。

合評上映会では、完成した4作品がお披露目され、それぞれの監督とキャストが舞台挨拶を行なった。

辻井俊監督『36万リットルのオーバーフロー』

あらすじ

会社を辞めプール監視員のバイトをしながらイラストレーターを目指す主人公。仲のいい10年監視員の先輩、プロ競泳を目指す女子体育大生、就活前のギャル女子大生などがおり、単調だが平和な日々。そんな中、元プロ志望の男性客が来るようになったことでその日常に変化が訪れる。

○作家推薦:東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻 ○制作プロダクション:Episcope
○出演:辻 陸 朝木茉永 近藤フク 松永 澪 ○2026年/29分/カラー/16:9/©2026 VIPO

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プールでアルバイトをする青年を主人公にした本作は、辻井監督自身が、1年ほどプールでアルバイトをする中で構想が浮かんできた作品とのこと。プールという場所で何か撮れないかという想いで、制作を始めたと話、誰からいうほどでもない、どうしようもないものを表現しようと考えたと続けた。また、今回、お大きなスクリーンで自身の作品を見、「自分は、無駄なものを描きたかったのかもしれません」と振り返った。

今後どのような作品を作っていきたいか聞かれると、自分が作りたい作品として、かわいらしいけれど、シリアスでハードボイルドな作品を作っていきたいと抱負を口にした。

『繰り返す女』監督:中田江玲

あらすじ

人の持ち物を衝動的に盗む癖がある野田貴子。ある日、苦手な同僚・木村燈の手鏡を盗んだ瞬間を、本人に目撃されてしまう。しかし木村は、問いただすことなく、その場を立ち去った。予想外の反応に戸惑った野田は、次第に木村の存在を強く意識するようになる。

○作家推薦:PFF  ○制作プロダクション:DOTS&LINE
○出演:伊藤 歩 田中麗奈 今本洋子 ○2026年/30分/カラー/ヨーロピアンビスタ/©2026 VIPO

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撮りたいものがたくさんあった中で、そのうちのひとつとして、“シスターフッドができないふたり”というのがあり、今回の作品は“シスターフッドができないふたり”を撮ろうと思ったの話す中田監督。近年、シスターフッドをモチーフにした作品が増えてきている中で、連帯するためには協調性がないとダメだけれど、そうではなくて、自分の情熱や愛をぶつけていく(それができない人の)ある種、ピュアネスなものがあるのではないかと、作品を構築していったと明かした。

今後については、「自分が見たいものを作りたい」と語り、「なんなんだ、この映画と観た後に感じ、そこから自分で考えて発見していくような映画が好きなので、そういうった作品を撮っていけたらいいな」と続けた。

『うねうねとまっすぐ』監督:八代夏歌

あらすじ

田舎に住む天然パーマの高校生まるのお弁当はいつもホットケーキ。そこには密かに抱えている家の問題が関係していた。ある日、都会から直毛男子の素直が転校してくる。さらにまると同じバイト先で働き始め、二人は一緒に帰るようになり……。

○作家推薦:PFF ○制作プロダクション:ポトフ
○出演:大和奈央 小方蒼介 ○2026年/30分/カラー/アメリカンビスタ /©2026 VIPO

©2026 VIPO

登壇した八代監督は、スクリーンで自身が上映されたことについて、「細部までこだわった演出があったので、大きなスクリーンで観ることができてよかったです」と感慨深げに語った。普段から、日常で見つけた面白そうなものやワードを書き残しており、その面白いと思ったものを繋ぎ合わせるようにできた作品だということ。「“恋愛関係”ではなくけれど、ふたりだけの関係性があって、お互いが惹かれあっているような関係を描きたかった」と本作のテーマについて、コメントした。

今後撮っていきたいものとして、まだ私は17~19歳のヤンチャでありながら繊細さをもった“若さ”を撮っていきたいですと明かした。

『巡り巡る果て』監督:鴨林諄宜

あらすじ

関東近郊にある昔ながらのカメラ店。店主の杉原文雄と従業員の深谷稔は、実の親子のような関係を築き支え合ってきた。そんなある日、文雄の息子であり写真家を目指して出て行った杉原貴一が帰ってくる。貴一の存在が稔の居場所を少しずつおびやかしていくことに…。

○作家推薦:福井映画祭実行委員会 ○制作プロダクション:東映シーエム
○出演:平埜生成 楽駆 酒向 芳 ○2026年/30分/カラー/アメリカンビスタ/©2026 VIPO

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「映画ってニセモノだなと、現実の事件やニュースには敵わないと思うことが増えていた」と話す鴨林監督は、本作の制作について、「“外形を見ることで内形を作り出せる”という言葉に触発され、映画制作に向き合っていきました」と明かした。今後どのようなものを撮っていきたいか尋ねられると、「悲劇的な物語に興味があるので、撮っていきたいと思います」とし、「皮膚劇的なお話がなぜそうなってしまったのかということについて、ゆっくりじっくり観察するような作品を撮れたらと思います」と締め括った。

 4作品どれも、監督の撮りたいモチーフやテーマが映像にくっきりと反映された意欲作だ。劇場での公開も決まっており、東京・恵比寿ガーデンシアター、大阪・テアトル梅田にて4月24日(金)~30日(木)、名古屋・ミッドランドスクエアシネマで5月22日(金)~28日(木)の期間にて上映される。

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