2月9日から11日まで、NHK放送センター正面玄関ロビーにおいて、第38回番組技術展が開催された。NHKの番組で実際に使用されたシステムや開発中の製品を紹介するもの。最先端の技術もあるが、現場の技術スタッフが出てきたアイディアを具体化したものが多く、プロアマ問わず、映像を作る人にとって参考になることも多いのではないだろうか。


◆水陸合成カメラ
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 実際に「アインシュタインの眼」という番組で、シンクロナイズドスイミングの水上と水中の映像を同時に撮影するのに使用されたシステム。水中と空中では光の屈折率が異なるため、同じカメラ(レンズ)で撮ると、大きさが異なり、違和感が生まれる。そこで、水中用と水上用の二つのカメラ上下に設置して、同時撮影。現場では、スイッチャー(ローランドV-4)を使って写るサイズを確認して、画角を調整して撮影しておく。収録は小型のHDVカメラで、ハウジングも家庭用。後でHDVの素材を編集で上下合成するというもの。ちょっとしたアイディアでできるので、アマチュアでも真似できそうだ。
◆エコ大紀行のコンパクトな中継システム
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 環境問題をテーマに二人の旅人が世界各地のエコツアーに参加する番組「世界一周!地球に触れるエコ大紀行」。現地からの生中継では、限られた要員で対応するため、コンパクトで機動力のある中継システムを運用した。撮影はハイビジョンワイヤレスカメラ。衛星電話をもちいて、連絡をとりあう。HD-SDI入力対応のパナソニックのスイッチャーを使って2カメとV(収録映像)を切り換えて送出。収録はメモリーのP2システムを活用したという。
◆人の見た目の明るさを色に置き換えるシステム
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 人の顔などは、実際の数値上の明るさではなく、背景によって明るさの印象が変わることが多い。そこで画面全体の中での「明るさ感」をつかむために、明るさを色におきかえて表示するシステムを開発。撮影時(ライティング時)の参考にするというもの。特に時代劇ドラマなどで使用する。
◆シグマのレコーダーに録音機能がつく
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 ロケ用のミキサーと言えば、シグマが定番だが、そのミキサー本体だけで録音できるようにしたデジタルミキサー。実際に製品化も計画されている。記録メディアはCFカード。音声フォーマットは業界標準のBWF-J。ミキサー部は、4入力、2出力。これまではDATなどと組み合わせて使用してきたが、ミキサーだけでレベル管理と録音が可能になる。価格は40万円程度になりそうだという。
◆タイムコード信号を音声に変換して記録して、編集時に活用するシステム
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 最近では、番組制作においても、家庭用のデジタル音声レコーダーやカムコーダーを活用する機会が多くなっているが、タイムコードを持たないために、放送機器で収録された素材との混在編集においては、効率がよくなかった。そこで、放送機器のタイムコードをFSK(高・低2つの音の周波数帯で伝達する方式)に変換し、それを録音させるシステムを開発。民生機や音声レコーダーで冒頭にその音(つまりタイムコード情報)を録音しておくことで、あとで専用ソフトでタイムコードに復元して活用できる。
◆ノンリニア編集用の音声VUメーター
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 ノンリニア編集システムで使用することを想定した音声レベルメーター。HD-SDI入力付きで、エンベデッドオーディオを確認できる。視認性のよい大型のVUメーターと小型のデジタルメーターを採用。小型のスピーカーとヘッドホン端子も搭載する。コンパクトなので、ノンリニア編集システムの卓上にもおける。市販される予定もあるという。
◆最新の高出力LEDを使ったライト
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 新しい照明として注目されているLED。スポットライトを一つのLEDで作ることで、バーンドアによる遮光を実現。プラスチックレンズの採用で、色むらのない光を確保できる。フラッドライトには、赤、緑、青、黄、白のLEDを採用し、多色表現が可能。もちろん細かい調光もできる。従来にくらべて熱が圧倒的に少ないので、スタジオ全体の省エネ化や、設備コスト削減に貢献するという。