BenQから写真用・動画編集用モニターとして新たに登場するSW321C。DITとして映画・TVCMの現場でのデータ保全はもちろん色や適正な露出など映像品質を管理するタキユウスケさんに評価してもらった。

取材・文●青山祐介/協力●ベンキュージャパン株式会社

 

 

 

10bitパネルを備え、HLG・HDR10にも対応する4Kカラーマネジメント液晶モニター

BenQ SW321C
2020年6月上旬発売予定オープン価格(推定25万円前後)

4K対応編集スタジオ用液晶モニター。10bit対応パネルを採用し、従来の8bitに比べ階調豊かな描写が可能。輝度と色のムラを抑えるユニフォーミティ校正の他、周辺光を遮断しグレアを抑えるフードも付属する。HLGやHDR10にも対応。また、PC側で1080解像度に設定すると24p表示も可能になる。さらに正確な色再現を可能にするAQCOLOR技術を採用するほか、PANTONE/CALMAN認証も取得。

 

 

色域はAdobe RGBが99%、Rec.709(sR GB)が100%、DCI-P 3・Display P3は最大
95%をカバーする。

 

1本のケーブルでデータとビデオ信号を送信できるUSB-C端子を搭載。また、ノートパソコンに電源を供給しながら2つの画面で作業できる。

色域を簡単に切り替えられるホットキーパック。ボタンには他のモードや明るさやコントラストなどのOSD設定を割り当てることができる。

 

SW321Cは、ハードウェアキャリブレーションを採用。測色計※は別売(今回はX-rite iDISPLAY PL USを使用)。専用ソフト「Palette Master Element」はWEBで無償ダウンロードできる。

※対応機種はWEBサイトで(https://www.benq.com/ja-jp/monitor/photographer/sw321c.html

 

 

 

色を決めるのは自分自身と自分が使うモニターの関係

普段の仕事ではソニーのマスターモニターを使っているタキさん。「撮影現場ではマスモニを独占したい」といい、マグライナーの傍らに24インチ程度のモニターを置いて、監督やカメラマンに見てもらうようにしている。

 「もしこのモニターを現場で使うなら、そういう用途でしょうか。ただ、輝度の面やはり電源や入力端子という点からすると、SW321Cはスタジオで編集やグレーディングに使うのに向いていますね」

まず、SW321Cの総合評は「値段から考えたときの大きさと描画の品質自体はいい」というタキさん。ビデオグラファーの仕事の出力先として多い、PCやタブレット、スマートフォン向けのWEB制作物には使えそうだという。

ハードウエアキャリブレーションや広色域対応といった、正確な色再現が可能なSW321Cだが、タキさん曰く———

「撮影現場でも色々なメーカーのモニターが置かれていて、監督やクライアントの間でもどれが正しいのか、という議論になる。そんなときには『自分が今日、このモニターが正しいと考えたものを一日中見るようにしてください』と僕はお伝えしています。特に最近は、映像の出力先がテレビ、映画だけでなくPCやタブレット、スマートフォン、さらにはサイネージだったりと多様化している。そうなると何が色の基準なのか、ということになってくる。それだけに、色を決めるのは自分と自分が信じているモニターとの関係でしかなくなってくるんです」

 

オペレーターと監督で作業するモニターとして

SW321Cの色の印象は、「マスモニに比べるとどうしても黒がやや浮いたフィルムルックに見える。そのため、ビデオの生っぽいルックを作るのは、それをよくイメージして作る必要がある」という。ただし、こうしたモニターの特性は千差万別。出力先によってもルックが変わってくるため、「モニターと自分の“キャリブレーション”のようなことができさえすれば、SW321Cは使い手にとってのマスターになる」と語る。

SW321Cの32インチというサイズについては、DaVinci Resolveでプレビュー画面を表示させると、18インチ程度のサイズになって見やすいとタキさん。視野角は一般的なモニターと比べて広いものの、やはり色やコントラストが異なって見えるので編集者と監督が2人ぐらいで正面から作業することに向いているという。

「僕がこのSW321Cを使うとするなら、スタジオに置いて、編集やグレーディングといった用途でしょうか。自分用のグレーディングシステムを組むのにはちょうどいい大きさだと思う。このSW321Cをリファレンスモニターとして使える人であれば、価格や機能という点では買いだと思います」

▲SW321CにDaVinci Resolveの操作画面を表示してみた。この状態でプレビュー画面のサイズを測ってみると18インチ程の大きさで表示できた。UI各部も見やすい大きさで快適にグレーディングを行えるサイズ感だ。

▲表面加工は写真用も想定しているためアンチグレア加工。その影響か斜めから観ると黒が浮いて見えるため、色の判別が難しくなる。編集時にエディターと監督が二人で正面から見るくらいの使い方がよさそう。

 

タキさんのスタジオでのモニターチューニングを紹介

Color Adjustmentのメニューで「Color Mode」はRec.709、「Color Temp」は9300K、「Gamma」は2.4に設定。「Brightness」を若干さげている。タキさんはご自身のスタジオでの編集時、輝度を120nitに設定している。

 

 

タキユウスケ
ソニーPCLにてCMや映画、コンサートのビデオエンジニアを担当。その後、レスパスビジョンにてDITサービスを立ち上げる。2019年より独立し、撮影会社・虎徹を設立。
WEB●https://www.kotetsu.work/

 

 

VIDEOSALON 2020年5月号より転載