小型・軽量ながらフルサイズ・4K/60p 10bit内部記録を実現するカメラ LUMIX S5が広げるクリエイティブの可能性


LUMIX S5の公式PVを監督・撮影したOsamu Hasegawaさんに、少人数ながらハイクオリティな作品を生み出した現場の裏側や現場で役立ったS5の機能などについてお話を伺った。

映像●Osamu Hasegawa
取材・文●高柳 圭
構成●編集部
協力●パナソニック株式会社

監督・撮影 Osamu Hasegawa
企画・演出、撮影、編集までを一貫して行い、「被写体」や「場」のポテンシャルを最大限引き出せるよう現場での即興的な対話を重視した制作に取り組んでいる。ダイナミックな空間移動ショットとファスト/スロー・モーションを駆使して、空間と時間を縦横無尽に表現する。

 

公式PV『Soul of Tokyo』

『古今和歌集』の歌に着想を得て制作した作品。都会の喧騒を離れ、のどかな自然に触れ、豊かな心を取り戻していく。

URL●http://bit.ly/s5_osamuhasegawa

 

▲パナソニック LUMIX S5 、オープン価格
https://panasonic.jp/dc/products/s_series/s5.html

 

LUMIX S5を使った映像を撮るにあたり最初に思いついたのが、コンパクトな本体やレンズを生かして最小限の機材で撮影をすることでした。映像クリエイターが美しい映像や凝った表現を求める上で、機材のスペックを高めていこうとするほど、機材のボリュームが増えて動きづらくなり、最良だと考える撮り方ができないというジレンマが生まれるケースはよくあります。LUMIX S5の高い機動性やコンパクトなデザインは、4K/60pでの質の高い画像を維持しながら、カメラの動きやアングルにおける自由度を高めることができるものだと思います。

今回の作品『Soul of Tokyo』のストーリーは、この企画が始まった時期が初秋であったため、「古今和歌集」にある秋の始まりの情景を描いた歌をテーマに、「目に見えない秋」を表現するものを構想しました。

撮影場所は東京の都心、檜原村とあきる野市の3カ所で行い、東京のなかにある都市と里山の対比を表現しながら、ひとつのカメラで多彩な秋の風景を捉えることができればと思い撮影に臨みました。

機材が少ないことで身軽になり、少人数のスタッフだからこそ行きやすいロケーションも、撮影場所の選定時に考慮した点です。撮影スタッフはカメラマンとディレクターを兼ねる私とアシスタントの2名、女優さん1名、山のガイドさんが1名という小規模なチームとなっています。特に映像の撮影では場所によって許可取りが必要なことも多いため、少人数であることは申請のしやすさにもつながります。

山での撮影は3日間あり、機材を背負いながらの撮影場所までの移動、荒れた道を走りながらの撮影など、機材が少なく軽いことのメリットを感じるポイントがたくさんありました。

 

小型・軽量だからこそ、少人数で運用でき、多くのロケーションで撮影できた




▲撮影は全編東京で収録。都会パートを1日、田舎パートを3日間で撮りきった。小型・軽量で機動性の高いS5の特性を活かして、沢の上流部や山道など足場の悪いシチュエーションも積極的に採り入れた。本編映像の撮影はHasegawaさんを含めて、ふたりのスタッフで実施。Hasegawaさんは、現場でインスパイアを受けて、撮影プランを変更することも多いため、ミニマルなスタッフ構成でも充分な映像が撮影できるS5は自分のスタイルに合っているという。

 

まず、本体がこれまでのLUMIX Sシリーズに比べて軽量でありながら、フルサイズ6Kセンサーを有する機体という点。さらに10bitと14+ストップのダイナミックレンジにより、カラーグレーディングに高い耐性があるデータを記録できるのがとても大きいと感じます。

レフ板や照明が少なくて済むため、周辺機材が軽量になり、光の環境に合わせてカメラアングルが固定されてしまうといった制限がなくなります。一部、夜景や洞窟のような場所でも撮影しましたが、デュアルネイティブISOや4K/30pや60pの10bit内部記録により、グレーディングで明るく調整してもザラつきの少ない仕上がりになりました。

また、ボディ内手ブレ補正や向上したオートフォーカス機能も有用です。移動しながらの撮影だけでなく、速い動きからビタ止めするといった手法もやりやすく見せ方の幅が広がると感じました。ジンバルに固定して撮影する際は、カメラ本体がカメラマンから離れていることも多いので、人体認識を備えたオートフォーカス機能は重要だと思います。

LUMIX S5を使ってみて個人的に感動したもうひとつのポイントが「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」のズームレンズキットと「LUMIX S 85mm F1.8」のLマウント中望遠単焦点レンズというふたつのレンズです。

これらのレンズの利点は重量です。今や動画撮影に欠かせないジンバルは、カメラ本体とレンズの重さ・重心に合わせてバランス調整をする必要があり、これまではレンズ交換の度にそのバランスを変える場面が多くありました。特に時間に制限のある現場ではレンズ交換とジンバルの調整に対して目に見えないプレッシャーがありとてもストレスでした。

現場のスムーズな進行を優先して、可能な範囲でレンズ交換をせずに撮影するということもあり、カメラマンが思い描く画を撮るための最適なレンズが使えないというケースにも陥りがちでした。しかし、このふたつのレンズは、それぞれコンパクトであり、ほぼ同じ重さと重心バランスに設計されているため、レンズ交換によるジンバルのバランス調整にかかる手間がないというのが大きくて、撮影しながら「マジで神」と心のなかで叫びました(笑)。今後、サイズや操作性を統一したF1.8単焦点シリーズも開発されると聞いたので、とても期待しています。

また、今回の撮影では車の移動映像でシグマ 14-24mm F2.8、滝のスロー映像でライカ TLレンズで撮影しました。Lマウントもレンズの選択肢が増えてきて、さらなる多彩な表現の可能性も感じました。

私はGHシリーズやS1も使っていますが、S5はGHの機動性とフルサイズのS1に比肩するスペックを持つカメラだと思います。個人でも手が届きやすい価格帯も魅力です。これからひとりで撮影とディレクターをこなすビデオグラファーが増えていくなかで、LUMIX S5は撮影の自由度と映像の質を両立し、クリエイターの創造性を広げてくれる存在となるのではないでしょうか。

 

レンズは20-60mmのキットレンズと85mmの単焦点レンズでほぼ全編を撮りきった

LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6

▲キットレンズは広角側が24mmのことが多いが、こちらは20mmで撮れてなおかつ軽量なところが気に入っているという。写真のような山道を駆け抜ける迫力あるマウンテンバイクの映像も20mmだからこそ実現できた。

 

LUMIX S 85mm F1.8

▲フルサイズセンサーと大口径レンズによるボケ味の美しい映像を撮影できる。ゆとりある画素ピッチとデュアルネイティブISOの恩恵で高感度撮影にも強いS5と、このレンズの組み合わせであれば夜間撮影にも積極的に使いたい。

▲20-60mmと85mmはほぼ350gの重量で統一されており、レンズ交換をしてもジンバルのバランス調整が不要。慌ただしい現場で重宝した。今後登場する単焦点F1.8シリーズの24、35、50mmも同様の重量になる予定。

▲明るめの超広角を使いたい場合にはシグマ14-24mm F2.8 DG DN | Art 、4K/60pの1.5倍クロップ画角の際に超広角で撮る際にはライカ スーパー・バリオ・エルマーTL F3.5–4.5/11–23mm ASPH.を使用した。

▲「動画撮影範囲」のメニューでAPS-Cの画角も選ぶことができ、カスタムボタンにも割り当てられる。20-60mmレンズの場合、テレ端が90mmとなり、これ1本で中望遠域までカバーできる。

▲MF操作時は「フォーカスリング制御」をリングの回転速度に関係なく、回転角に対して一定でピントが変化する「リニア」に設定することで、スムーズなフォーカス送りが可能になった。

 

LUMIX S5だからこそ実現できたカメラワーク

DRONE&CRANE SHOT

S5はキットレンズと合わせても1kg程度でジンバルに載せて、さらに一脚に取り付けて撮影できる。写真は山の上の景色から地図を見るふたりへとつながるクレーンショット。上記画像の山道を駆け抜けるマウンテンバイクも高い位置から撮影し、ドローンショットのようなカメラワークを行なった。





 

ROLL SHOT

作品冒頭の映像がロール方向に回転するショットは手持ちで撮影した。後から編集ソフトで速度調整をしたもの。こうしたカメラワークを実現できるのは、強力な手ブレ補正によるものが大きいという。なかでも「手ブレ補正ブースト」では85mmの中望遠の手持ち撮影でも三脚で撮ったかのようなFIX撮影が可能になっている。

 

14ストップ+のダイナミックレンジを持つV-Logと10bitのグレーディング耐性

▲カラーグレーディングはPremiere Proで行なった。最初にLUTを当て、プライマリカラーグレーディング。次に手前の緑や空の青を強調するといったセカンダリカラーグレーディングを施している。S5の10bit素材では空の階調が豊かでバンディングが起こらないことはもちろん、セカンダリの際に部分的に映像を抽出する際にもキレイに抜き出すことができるのもメリットだと感じている。

 

デュアルネイティブISO

▲V-Log撮影時はISO640と4000のベース感度を持つデュアルネイティブISOに対応し、低感度時と高感度時のふたつの回路を自動的に切り替えることで、ノイズを抑え、階調豊かな映像を撮影できる。

 

ジンバル撮影で重宝した頭部認識のAF

▲カメラを構える女性の正面からはじまり回り込んで、背中越しに滝を写すショットの撮影。S5のAFにはS1やS1H同様「顔・瞳・人体」の他、「頭部」検出も備えられ、こうしたシーンでも重宝した。

 

露出平滑化

夕暮れなど光量が大きく変わる時間帯のタイムラプス撮影では露出がバラついて、チラついた映像になってしまうが、「露出平滑化」の機能を使うことで滑らかな露出変化のタイプラスを撮影できる。

 

スロー&クイック

モードダイヤルで切り替えることができ、最大1080/180fps撮影が可能。24fps再生ならば7.5倍スロー撮影が可能。120fpsまではAFが効くので、今後は動きの速い被写体でもトライしたい。

 

 

VIDEOSALON 2021年4月号より転載