Report◉編集部
協力◉日本サムスン株式会社
▲Samsung Portable SSD X5はThunderbolt 3接続、NVMeインターフェイスのポータブルSSD。容量は500GB、1TB、2TBの3種類。最大 2,800/2,300 MB/秒の読み出し/書き込み速度を実現する。ヒートシンクを内蔵し、可動部分のないボディはマグネシウム合金で強化されている。
ファイルベース時代のいま、脚光を浴びている職種がD.I.T.(デジタルイメージングテクニシャン)だ。動画の大容量のファイルを効率よく扱うことが画質を維持し、ワークフローを効率化させることに直結するとあって、その能力をもった専門職が求められるようになった。デジタル・ガーデンはPCベースでのデジタル編集以降に創業した会社で主にCMのポストプロダクション業務を担ってきた。3年ほど前、CG、編集部門に加えて、デジタルシューティング部門を立ち上げ、現在、D.I.T.が1名、データマネージャーが3名所属している。データマネージャーはD.I.T.を補助する仕事で、データのバックアップと変換をメインに行う。業界で信頼されるD.I.T.になるには技術的に広範な知識と経験が必要で年月を要するので、データマネージャーというスタンスで現場に出すことで、需要に応えつつ、人材を育てている。
▲お話を伺ったのは株式会社デジタル・ガーデン(http://www.dgi.co.jp) Digital Shooting Div.のデータマネージャー、D.I.T.アシスタントの松村薫さん、袮津尚輝さん、板井哲洋さん(写真左から)。
ファイルベース撮影に参入が遅れた分、特色を出すべく、機材として優秀なものを揃えたという。また、現場での作業スピードにこだわり、CMではこれまでHDDベースがメインだったが、できるだけHDDを使わず、RAIDやSSDを積極的に採用してきた。
ひと月ほど前にデジタル・ガーデンが採用したのが、Samsung Portable SSD X5(以下X5)だ。高ビットレートで大容量のファイルを扱うCMの制作現場では、よりハイスピードのストレージが求められていたが、その要望に適うものはなかなか存在しなかった。
現場での撮影時間は短くなる一方で、ARRIのALEXAやREDなど記録レートが大きいカメラが増えている。現場でいかに大容量のデータを短時間でコピーするかが求められていたが、これまでは8ベイのRAID HDDを利用するしかなかった。問題はそのもの自体が重く、電源が必要なこと。スタジオならまだいいが、ロケ先で電源が確実でない場合にはリスクがある。SATA SSDを内蔵したポータブルSSDは単体のHDDに比べれば速いが、まだ満足できるスピードではない。
そんな時に登場したのが最大 2,800MB/秒の読み出し、2,300 MB/秒の書き込みという驚異的なスペックをもつThunderbolt 3接続のポータブルSSD、X5だ。
▲Samsung X5は2TBモデルの4台が稼働中。メディアはあまりに小型なのも現場で困るが、X5はちょうどいいサイズだと言う。商品の箱をそのまま保管に利用している。
▲現場でのデータ管理のベースとなるシステムをカート上に組んでいただいた。MacBook Proと撮影メディアのアダプター、X5を置くとぴったり。
コピーも速いが実はベリファイが速いのが助かる!
ただ、この速度を生かして、ファイルコピーをしようとしても、撮影メディア側がそのスピードにまだ追い付いていないので、実測はスペックほど出てはいない。データマネージャーとしてX5の良さを実感するのは、ベリファイが速いことだと言う。実際にデータをとってみるとそれは証明された(下の表参照)。
ファイルコピーは誰もが日常的に行う作業だが、D.I.T.やデータマネージャーの場合、必ずベリファイが求められる。実はこれに時間がかかっていた。重要な作業なのに他の現場スタッフには何をやっているのか理解してもらえない。しかも当日の撮影データをオフライン用のProResに変換して欲しいというリクエストもある。
そんなときに劇的にベリファイの時間を短縮してくれるX5は本当に助かるツールなのだという。しかもThunderbolt 3のバスパワーでAC電源が要らない。RAID HDDの場合、AC電源駆動であり、さらに突然の電源遮断にそなえてUPS(無停電電源装置)も必要だったが、それがなくても運用できるということで、ただでさえ現場では負担になるD.I.T.用の機材類をよりコンパクトにすることができる。
デジタル・ガーデンでは、2TBのX5を4台導入して運用している。CMならなんとか1台で収まるが、MVの撮影だと1日で1TB、2TBはいくので、 4TBモデルがあれば安心だとスタッフは言う。
2TBモデルで価格は20万円ほど。HDDと同じ容量で比較すれば当然高価だが、スピードには価値がある。働き方改革が叫ばれている昨今。このようなX5とD.I.T.やデータマネージャーの仕事が、作業時間を圧縮して効率化を進めていき、それがクリエイティブな方面により力が注がれるとしたら、それは大きな価値があると言えるだろう。
バックアップの時間を比較検証してみる (TB:Thunderbolt)
▲ファイルコピーとベリファイに使用しているのはSilverStackというソフト。ファイルコピーとベリファイをパラレルで進行させられる。表中のAverageSpeedはそのうちファイルの転送のみにかかった速度の平均値で、AverageSpeed(ファイルのコピー速度)とVerifySpeed(ベリファイ速度)、2つの実行に要した時間がFile CopyTime(実際にかかった時間)となる。結果を見ると、X5を導入することで、コピーとベリファイの時間が大きく短縮できることがわかる。ちなみにMD5とxxHashBEはベリファイの方式で、どちらもハッシュ関数に対する入力の戻り値を同一のものであるかを符合させファイルコピーが正常に終了したかどうかを確認するもの。デジタル・ガーデンではMD5を基本的な方式として採用しているが、時間の制約がある状況などではxxHashBEを使用するなど使い分けをしている。
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