日頃は広告・プロモーション映像などを中心に手がける映像作家の鈴木佑介さん。REDやブラックマジックデザイン、デジタル一眼など様々なカメラを使い分け、6K・8K素材での撮影も多いという鈴木さんにRAIDとドッキングステーションを試してもらった。
写真・文●鈴木佑介/構成●編集部/協力●ウエスタンデジタル
映像・動画制作を生業とするすべての「プロフェッショナル」へ捧ぐストレージソリューションの幕開け
去る2021年7月7日ウエスタンデジタルが新ブランドの立ち上げを発表した。それが「SanDisk Professional」だ。生活のなかのほとんどがデジタルコンテンツに溢れ、高速・大容量化が求められるこの時代、映像制作の現場で多く扱われているG-Technologyブランドを引き継ぎ、静止画制作のプロからの信頼が厚いSanDiskブランドとプロフェッショナル向けのメディアソリューションとしての統合を果たした。つまり、静止画・動画をボーダレスに「視覚コンテンツ」を制作するプロフェッショナル向けのブランドだ。
G-Technologyブランドを愛し、この5年、8bayのRAIDストレージはトラブルを起こすことなく、絶大な信頼を寄せている筆者としてもこのSanDisk Professionalには期待せずにいられない。今回は編集システムの要となるRAIDストレージと4bay式のカードリーダーのドッキングステーションPRO-DOCK4をご紹介したい。
「G」の意思を引き継ぐ 高速・大容量のRAIDソリューション
まず最初にご紹介するのは8bay・4bayの大容量ハードウェアRAID「G-RAID SHUTTLE」シリーズだ(RAIDとは複数台のHDDやSSDを並列に繋げるイメージで大容量化させ、速度を上げるもの)。Thunderbolt 3接続とのインターフェイスで、RAID0設定であれば読み書き約2000MB/秒前後の速度を実現するとのこと。筆者の環境はRAID5運用をしているため、読み書き約1200MB/秒となっている。
4Kでの撮影、制作が当たり前になり、6K・8KのRAW素材での撮影も日常化してきたこれからにぴったりの編集ストレージだ。最近映像制作をはじめた若い世代は内蔵のフラッシュストレージやポータブルストレージへの保存でデータのやりくりをしている人が多いようだが、数年映像制作を続けていくと必ずぶつかるのが「ストレージの壁」だ。忙しくなればなるほど複数のプロジェクトを同時進行したり、キャリアを積むほどに使用カメラのレベルがあがり、収録コーデックのデータ圧縮率は低いものとなり、撮影素材の容量が増えていくのは世の常。それは映画やテレビのような仕事だけでなく、従来の「街のビデオ屋」的な仕事においても、である。
普段は広告などのプロモーション映像の制作を行なっている筆者だが、世には出ない街のビデオ屋的な仕事も多々しており、現在はとある裁縫教室の教育ビデオ的なものをここ数年レギュラーで制作させてもらっている。HD完パケながら、撮影は編集時にトリミングズームをする前提でPocket Cinema Camera(BMPCC) 6K2台と4Kの合計3台でマルチカム収録をしている。撮影は7〜10日間。1本90分の完パケ映像を年間で12本制作という内容。さらにそれを毎年更新していくというものだ。撮影は軽いBlackmagic RAWの12:1とはいえ、初年度で撮影素材と編集素材を合わせて12TB超え、2年目の今年はそこに9TBが追加された。そして来年度も撮影するということで30TB近い素材を保存し、また編集でハンドリングしたりする。そうなると編集ストレージが「高速・大容量」であることが重要となる。
単発の広告映像であれば内蔵ストレージや4TB程度のポータブルストレージでどうにかなるが、シリーズものや保管しながら次のプロジェクトで素材を流用する場合は、RAIDストレージでないと追いつかない。そして、先方オフィスに出向いての「立ち会い編集」なども発生するので大きいながらもポータブルなことはとても重要になる(専用ペリカンケースで外に持ち出しが可能)。
複数のHDDのうち1台が壊れても復旧ができるRAID5設定で使用する人も多いと思う。このG-RAID SHUTTLE であればRAID5設定でも書き込み約1284MB/秒、読み出し 約1022MB/秒とかなりの速度が出るため快適さと安心さを同時に享受できる。そういうことからも筆者はG-RAID SHUTTLE に絶対的な信頼を置いている。
また筆者の経験上、自作のRAIDボックスなどでは思いの外、速度が出なかったり、組んだ翌日にHDDが認識しないトラブルが起こることがあるが、G-Technology時代から使用していても同様のトラブルはほとんどない。そこにSanDisk Professionalという名前が刻まれたのは、プロにとって安心感が増したのではないだろうか。
SanDisk Professional
G-RAID SHUTTLE 8
オープン価格(48TBモデル実売57万円前後)
受注生産品※
※G-RAID SHUTTLEには4bayタイプのG-RAID SHUTTLE 4(24TB/48TB/72TB)もラインナップ。8bayタイプには48TBの他、96TB、144TBのモデルがある。さらにSSDタイプのG-RAID SHUTTLE SSD(8TB/16TB/32TB)では最大2800MB/秒の超高速転送速度を実現する。
Thunderbolt 3接続で最大2000MB/秒を実現するRAIDストレージ
▲デスクトップ環境ではもちろん、時にはG-RAID SHUTTLE専用のペリカンケースに入れてクライアントのオフィスに出向いて、立ち会い編集を行うこともある。鈴木さんは複数のHDDのうち1台が壊れても復旧可能なRAID5で使用している。
カードリーダー用4bayドッキングステーション
そしてもうひとつご紹介したいのは「PRO-DOCK4」。今までありそうでなかった、カードリーダーを4つのスロットに搭載できるThunderbolt 3接続のドッキングステーションだ。このPRO-DOCK4はSDカード、microSD、CFカードリーダーがひとつになったマルチカードリーダーをはじめ、REDのMINI-MAG、CFast2.0カード、CFexpress TypeBと近年の映像制作に使われるメディアのリーダー4種を個別利用はもちろん、必要に応じてひとつにまとめることができる。
RED Helium 8K(MINI-MAG)を筆頭にBMPCC 6K(CFa st2.0)や一眼カメラ(SDカード)などを仕事によって使い分ける筆者にとって、大変助かるアイテムだ。目の前のドックに挿すだけ、それぞれのリーダーを出してくる必要がないのは本当に助かる。敢えてリクエストを出すとしたらCFexpress TypeAの登場を願うくらいであろうか。また、取り外しも簡単なので、必要なリーダーだけ用途に応じて持って行ったり、事務所や自宅で複数のメディアをいちいちリーダーを差し替えたりせずにダイレクトに読み込める。オフロード作業の効率を最大限に高めてくれるであろう。
また、PRO-DOCK 4にはThunderbolt 3ポートが2口、USB-Cが2口、USB TypeAが2口、ディスプレイポート1.4が1口、ギガビットイーサネットに入出力の3.5mmオーディオポートも搭載しているので普段ラップトップで制作を行う人にとってもうれしい仕様になっている。
出先はラップトップで、帰宅したら外部モニター接続で。各種カードリーダーをケーブルで接続することもなく、Thunderboltポートの数を気にせずにオフロード作業ができる。PRO-DOCK 4ならシンプルな運用が可能になる。筆者のようなデスクトップユーザーにとっても机周りがスッキリするので良い。G-RAID SHUTTLEと共に、デザインもMac環境にマッチする。質感も実にいいので、ぜひ手にして実感してもらいたい。
SanDisk Professional
PRO-DOCK 4
オープン価格(実売85,800円)
受注生産品(PRO-READERは別売)
多彩なメディアの読み込みに 対応できるドッキングステーション
▲仕事ではRED Hellium 8KやブラックマジックデザインBMPCC 6K/4K、一眼カメラを使い分ける鈴木さん。PRO-DOCK 4は別売の4種類のカードリーダーをひとまとめにし、Thunerbolt 3の高速転送でデータを読み込めるドッキングステーション。収録メディアの異なるマルチカメラの現場などで重宝する。
●各製品の詳細はこちら
https://shop.westerndigital.com/promotions/sandisk-professional/product-launch
●VIDEO SALON2021年12月号より転載