CMやMV、ドキュメンタリー撮影を中心に活躍するシネマトグラファーの湯越慶太さんにサンディスクから新たに発売されたSanDisk® PRO-CINEMA CFexpress™ Type Aカードを試してもらい、そのインプレッションや現場でのカードの取り扱いなどについてお話を伺った。
文●永渕雄一郎 取材・構成●編集部・萩原 協力●サンディスク

SanDisk® PRO-CINEMA CFexpress™ Type Aカード
480GB(60,280円) / 960GB(109,780円)※サンディスク公式オンラインストア取扱価格(税込)
プロ向け高性能メモリーカード。PCIe Gen4で最大1,650MB/秒の書き込み、最大1,800MB/秒の読み出し速度を実現。7.5mからの落下や150ニュートン(約15.3kg)の力に耐える曲げ防止性能を持ち、IP57防塵・防滴に対応する。4K/6K/8K撮影に最適で、長時間撮影にも耐えられる。
このカードを挿しっぱなしで使うスタイルも
現実的になってくるんじゃないか
湯越慶太と申します。普段はARRIやソニーのVENICEなどを使い、CM、MV、ドキュメンタリーなどを中心に撮影しているシネマトグラファーとして活動しています。
長尺の作品やマルチカメラ収録などではソニーのFX6をよく使うんですが、160GBのメモリーカードでも40分ほどは撮影できるんです。ただ、現場で物足りなくなるときも当然あるので、本製品のように大容量を1枚で扱えるのはシンプルにありがたいですよね。960GBもあれば、FX6で最大画質にしても約200分撮れるんですよ。例えば、長時間のドキュメンタリーなどを撮る場合、1日に3時間以上カメラを回したとしても、このカード1枚あれば賄えてしまうというのは非常に使いやすいです。
CFexpress Type Aというカード規格自体、堅牢性が高く端子も丈夫ですし、僕個人としてもこれまでにType Aのカードに由来する事故を経験したことがないため、信頼度はとても高いです。本来、大容量のカード1枚だけを使うというのはデータ損失のリスクを考慮するならば、容量の小さなカードを小分けにしてカードチェンジをするスタイルのほうが望ましいと思うんですよ。ただ、カード自体の信頼性がこれだけ高いのであれば、1枚のみを挿しっぱなしで使うというスタイルも現実的になってくるんじゃないかと、今回この製品を使用してみて感じました。特に、Type Aのカードはサイズが小さいため、カードチェンジする際にうっかり手を滑らせてしまったり、急いでいるときに落としてしまうなど、事故が起こる可能性も捨て切れないんですよね。そういった際に、カード自体の耐久性が保証されているというのは安心感に繋がるんじゃないかなと思います。また、Sandisk製品なので、万が一データ損失があった場合にも、付属の復旧ソフトウェアが使えるなどのサポートが充実している点も強みです。
書き込み・読み出し速度についても、かなり早い部類だと思います。試しにα1Ⅱのカメラで、最大サイズの負荷がかかるような設定での高速連写をテストしてみましたが、バッファ抜けも相当早く感じました。スポーツ選手や野鳥などを超高画質で連写する人なんかには、非常に重宝するカードになるんじゃないかと思います。
8K撮影やハイフレームレート撮影、連写でテスト

また、最近のシネマカメラは12K、16K、17Kなど、どんどん高画素になっているため、その分カード側に要求される書き込み速度や負担も上がっています。そういった意味で本製品はとても高いポテンシャルを秘めているんですが、その実力を100%発揮できるカメラ自体が逆にまだ少ないというのが、唯一もったいない点だと思いますね。基本的にソニーのカメラくらいでしか使われていないので、もっと活躍の場が増えればいいなと思います。また、読み出しが早い分、撮影したデータをサムネイル表示する速度も早くなるので、データへのアクセスが非常にスムーズというのも利点に感じました。
再生時のレスポンスは?

大容量・堅牢性・信頼性を網羅した
現場向きなメモリーカード
仕事でメモリーカードを使う際は、基本的に信頼のおけるメーカーのカードを使うようにしています。Sandiskさんは昔から同じブランド名で続けてくださっているので、それだけでも安心感に繋がるんですよね。使用する前段階でどこの製品を買うかを迷ったとき、データ損失などのリスクを考えると、「知っているメーカーの製品である」という事実は購入する際の拠り所としても非常に大きいと思います。

ただ、少しだけ話は逸れてしまうんですが、撮影データに対して誰が責任を持つべきなのかという問題は常にあって。一般的な撮影のワークフローの場合、カメラマンやデータマネージャーなどの撮影チームがカメラを用意し、カードを用意しますよね。そして、撮影終了後に撮影チームとしてカテゴライズされる人たちがカードを持ち帰り、データをコピーしたSSDを制作部に渡すというワークフローがほとんどです。しかし、本来であれば撮影チームが撮影データの管理に対しての責任を持つべきではなく、制作会社のプロデューサーや制作担当が持つべきだと思うんですよね。だって、こんな小さなメモリーカードに何百万とお金をかけた大切なマスターデータが入っているわけじゃないですか。そんな大きなものを、ひとりのカメラマンが抱えるべきじゃないんじゃないかという議論はやっぱり常に巻き起こるので、こういったカードの重要性についての記事は撮影部だけでなく制作部のスタッフにこそ、ぜひ読んでほしいという気持ちはありますね。
総評として、本製品は堅牢性と信頼性を兼ね備えた非常にバランスのいいカードだと思います。派手なスペックを謳うよりも、実用性と安心感を優先した作りになっているのも好印象でした。実際の撮影現場では防水性能も重要な要素ですが、本製品はIP57等級の防塵・防滴なので、その点がしっかりしているのもありがたいですね。1枚あたりの値段を考えると気軽に何枚も買えるものではないですが、ほぼ1TBの容量で109,780円なので、全体的なスペックを考えると個人的には非常に安く感じました。
手持ちのMacBook Proで実測データ転送の速度は?

カードから直接読み出しDaVinciの操作はできる?

●SanDisk® PRO-CINEMA CFexpress™ Type Aカードの製品情報