REPORT◎田村雄介 協力◎日本サムスン株式会社、ITGマーケティング株式会社

 

SSDが1枚…SSDが2枚…SSDが3枚…SSDが4枚…SSDが5枚…SSDがいっぱぁあああい!!といった具合で撮影に行く際、PCバッグに詰めたSSDの総容量が10TBを超える人も少なくないのではと思えるほどに普及しまくっているポータブルSSD。特に少人数体制で現場に赴く人達は念には念を入れていろいろなSSDを持って行く人も多いかもしれません。目的は様々、撮影現地でのオフロードを素早くするため、うっかりHDDを持ってきてしまったクライアントに貸し出しするため、Blackmagic Pocket Cinema Camera(BMPCC)シリーズやSIGMA fpシリーズなどで高画質の長回しをするため等々、理由は実に様々。その様々な理由に対応するために求められるのは、高速・安定・高コスパという条件。使用用途が明確な場合には、ひたすら高速であれば良い、とにかく安くてそこそこの転送速度が出れば良い、ということもあるけれど、そうは言っても揃えるからには汎用性の高いものを使いたくなるのが人の性。さらに贅沢を言うと有名ブランドで…となってしまうところに、今、新たに誕生した製品がある。

それが今回ご紹介するSamsung Portable SSD T7 Shield(以下、T7 Shield)だ!

T7 ShieldとT5とのサイズ差はこのくらい。横幅はほぼ同じだが縦に少し長い。

シネレンズ付きのカメラに装着するとこれくらいのサイズ感。ケーブルはUSB3.2 Gen2対応の市販のケーブルを使うことも可能。

日本国内におけるT7 Shieldの展開は、ブルーが1TB、ブラックが2TBというラインナップ。表面はシリコンで覆われており転送時などの熱感もやわらぐ。

 

T7 Shieldは映像業界定番T5の後継か、それ以上なのか?

前段で述べた高速・安定・高コスパという条件を一通りクリアした上で、防塵防水高耐久(IP65という防塵防水性能ではあるがあくまでも常識的な範囲での使用をおすすめします)という付加価値まで引っさげてやってきたのが、BMPCCシリーズやfpシリーズで外部収録メディアとして名機のポジションを築き上げた「 T5」の正統血統になるであろう「 T7 Shield」だ。これは本当にマジのガチで大変良い代物! と言っても一世風靡したT5ほどのインパクトを感じられなかった過去のT7シリーズユーザーからすると、ホントにぃ?と思われても仕方ないところ。

理由としてはT7シリーズは撮影現場段階ではあまり使用されない指紋認証システムがついたり、T5からサイズが変わってしまって若干敬遠されてしまったりなど、色々と不遇なタイミングだったというところがある。確かに今回のT7 ShieldもサイズはT5から変わってしまっているため、既存のT5の専用SSDホルダーにジャストフィットで組み込むことはできなくなってしまっている。しかしそれを補って余りある性能を持って生まれてきてくれたため、今後は撮影現場周りでは積極的にこれを使っていきたい!と思える出来になっている。その良さを少しでもわかっていただけたら幸いでございます。

 

動作スペック、表面温度、連続記録での速度低下をチェックする

いろいろと特徴的なところはあるものの、SSDを買うために必要な最重要情報。即ち動作スペック。まずはそのスピードだが、最大読み出し速度 1,050MB/s、最大書き込み速度 1,000MB/sで、T5(最大転送速度 540MB/s)の2倍近い速度だ。実際に計測してみると、2TB・1TBモデルともにサーマルスロットリングによる速度低下は1時間、2時間程度では全くなく、リード/ライトともに常に900MB/s前後の転送スピードを叩き出し続けた。今回はMacでの検証ということで、2019年のインテル版16インチMacBookProを使用、ケーブルはT7 Shield付属のものを接続、データ転送ソフトはおなじみブラックマジックデザインのDiskSpeedTestを使って、長回しをした大容量のBRAW1ファイル想定で512GBを送り込むという形を取った。非常に良好な結果となった。

 さらに今回は非接触型の温度計を使用して表面温度の計測をしたところ、比較検証に使用したラバーで覆われていない系のSSD、T5、T3、他社製品A、他社製品Bは軒並み45度近辺で動作し、いくつかの製品ではサーマルスロットリングでじわじわと速度低下があったりしたものの、T7 Shieldは54度前後と若干高くなるもののラバーで覆われているせいか、熱い!となることもなく大変ありがたい結果となった。

 以下に画像で各SSDの動作状況をお知らせいたします。

iStat MenusはMacに最初から入っているアクティビティモニタをよりわかりやすく可視化してくれる便利なアプリで、T7 Shield(2TB・1TB) で連続読み出し、連続書き込みをしたときの速度を計測したところ、前述した通り、ともに1時間、2時間程度では速度低下はまったくなく、リード/ライトともに常に900MB/s前後の転送スピードだった。また、参考までにBMPCCが設定できるexFATとOS X Extendedの比較もしたが、exFATのほうがほんの少し速かったことも記載しておく。

T7 Shield(exFAT)

iStat Menusで計測したT7 Shield 2TBのディスクリード・ライトの結果。グラフの上の青色がリードで下の赤色がライト。左が2TB、右が1TB。1TBの初速だけちょっと速いという挙動があるが誤差程度といえる。ともに安定して900MB/sで走る。1時間以上計測しても速度が落ちないことがわかる。

T7 Shield (OS X Extended)

こちらは少し速度の落ちるOS X Extendedでの計測。左が2TB、右1TBだが、こちらも2TBと1TBで少々違う挙動となった。

某モデル

こちら機種名は伏せるがライト時に典型的なサーマルスロットリングが発生している例。いろいろなポータブルSSDで計測したところ、大体表面温度が45℃前後に達した時点でスピードをコントロールして、それ以上の温度上昇を抑えているような挙動だった。

では、BMPCC4Kで何分録れるのか?

実際にポケシネ4KでのT7 Shieldの挙動を見てみよう。

 まず、記録時間は、メディアの容量や記録モード、実際の被写体によって異なるが、内蔵カードのCFast 2.0で普段使っている256GBタイプは、4K DCI Blackmagic RAW 3:1 60pの場合、15分なのに対し、T7 Shieldは1TBで61分、2TBで123分記録できると表示される。実際は被写体によって記録時間は変化するが、一般的にCFastカードは外付けSSDに比べて容量が小さく、GB単価も高いことが多いので、コストパフォーマンスを意識するなら、外部SSD記録はメリットが大きいと言えるだろう。実際にT7 ShieldにBlackmagic RAW  Constant Bitrate 3:1 4K DCI 60pで記録してみたところ、1TB、2TBともにディスクいっぱいまで止まることなく書き込むことができた。

ポケシネ4Kでの記録時間

記録メディア

Blackmagic RAW

4K DCI 3:1 60p

Blackmagic RAW

4K UHD 5:1 59.94p

Blackmagic RAW

4K UHD 12:1 23.98p

ProRes422 4K

UHD 29.97p

CFast 256GB 

15分

27分

166分

57分

T7 Shield 1TB

61分

109分

652分

224分

T7 Shield 2TB

123分

219分

1305分

450分

すべてexFATでフォーマット。Constant Bitrateではあるが記録映像によって変動するのであくまで目安。

 

収録データの転送時間はT5の約半分に!

 転送速度がT5より向上したことが実はここから効いてくる。収録したデータを他のスタッフやクライアント、もしくは編集のために他のSSDにコピーするデータのオフロード作業はどの収録でも行われることだが、その待ち時間が気になっている人も多いはず。特にデータ容量が大きくなるほど問題になってくる。実際に計測してみたところ、T5 2TBでは全データコピーに59分5秒かかったのに対し、T7 Shieldの 2TBは32分40秒と約半分近くまで短縮できることがわかった。またT7 Shield 1TBの転送時間は16分20秒と2TBのちょうど半分で、いかに安定しているかが分かる。

転送元 (a) データ容量(MB) (b) 転送時間 転送速度 (a/b)
T7 Shield(1TB) 951,011 16分20秒 970.4MB/s
T7 Shield(2TB) 1,904,841 32分40秒 971.9MB/s
T5 (2TB) 1,904,842 59分05秒 537.3MB/s

転送環境はタスクを転送だけにしたMacBook ProにT5 / T7 Shieldを接続、転送先はUSB 3.2 Gen 2×2インターフェイス対応の外付けSSD。

まだT7 Shieldの専用ホルダーはないので今はこれがオススメ!

T5が世間に浸透し始めた初期の頃、BMPCC4Kのケージを発売していたリグメーカー各社は、とにかくどこもT5専用のホルダーをリリースしていた記憶が非常に強い。なんせ僕のところにも数種類転がっている状態だ。しかしその後は様々な形のSSDに対応するために汎用のSSDホルダーが多くリリースされていたのが印象的だ。

T7 Shieldを取り付けるSSDホルダーとして、まず最初に紹介したいのがSmallRigの「BHS2343」。最初期からSSDホルダーをリリースし続けているSmallRigの汎用SSDホルダーだ。

 これでもいいのだが、数々のSSDホルダーを自腹で試してきた私がオススメしたいのが、「SmallRig T5/T7 SSD Mount for BMPCC 6K PRO 3272」だ。物自体はよくあるクランプ型のホルダーなのだが、クランプの位置調整とケーブルホルダーの位置合わせがとても良い具合にできる。

「SmallRig T5/T7 SSD Mount for BMPCC 6K PRO 3272」はクランプのハサミ加減もちょうどよく、ボディのシリコンと滑り止めのパッドが噛み合ってかなりしっかり止めてくれる。そして左右両開きのクランプなのでUSB-Cの差し込みに合わせ位置が微調整ができ、しかもケーブルホルダーでも調整できるなかなかの万能っぷり。

その名の通り本来の使い道はBMPCC 6K PROの専用ケージに適用するもので、背面のコールドシューは他のホルダーと違い完全に一体型、かつ専用ケージにハメる抜け止めのボールが付いている。加えてコールドシューを貫通する形でネジ穴があるため、付属のネジを使用してそのまま色々なケージなどに取り付けることも可能という、なかなか工夫された商品となっている。詳しくはSmallRigの商品ページを確認してほしいが、少しだけ注意点もある。この背面のコールドシューは少々通常の規格ものと厚みが違い、挿さるコールドシューと挿さらないコールドシューがある。たとえばSmallRig製品の中だけでも、あるトップハンドルのコールドシューには挿さるが、違うトップハンドルのコールドシューには挿さらなかったり、今回使用しているケージのコールドシューには挿さらないが、他社製のケージのコールドシューに挿さったり。カメラのホットシューでいうとEOSのコールドシューには挿さらない。ということなので、あまり無理にセットアップしないように気をつけたい。

このトップハンドルのコールドシューには挿さるが(写真左)、このケージのコールドシューには挿さらない(右)。

ということで、今回のセットアップはケージ左側面にねじ止めで装着。現場ごとに使いやすい位置にセットアップしよう。

いろいろ紹介してきましたが、個人的な印象としてはT5の性能が全てにおいて底上げされた正統後継機という感触が非常に強まったT7 Shield。外装のラバーも安心感という意味ではとても良いものです。 よもや大事なデータが入ったSSDを雑にバックパックにポイーッとする映像業従事者などいるとは信じたくないけれども、何があるかわからない状況でも安心度がひとつ上がる今時の良いモディファイではないでしょうか。価格も現在市場に残っているT5と同等に近いのもありがたいところ。T1、T3、T5とこのシリーズを愛用し続けていますが、手持ちの一つにT7 Shieldも加わっていくことでしょう!

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