インタビュー現場では少人数やワンオペ体制も珍しくなく、いかに画になるライト構成を組めるかが映像の質を高める鍵となる。本記事では、雑誌BRUTUSと連動したインタビュー撮影などを手がけるシネマトグラファーのRyo Ohkawaraさんを講師に招き、照明に対する考え方、自然光を活かした撮影方法など、一般的なオフィスが撮影現場だった場合の作例を交えながら、実践的な照明術を伝授してもらった。
※この記事は有料会員限定のコンテンツです。続きを読む場合はVIDEO SALONプレミアムコンテンツへの会員登録が必要になります。この記事の最下部にあるボタン「続きを読む」をクリックして会員登録をお願いいたします。1記事・250円。またはサブスクプランならば月額1,000円(2024年1月号より月に4-5本を配信)にて全記事を閲覧できます(既にウェビナープランや電子版プラン、ウェビナー+電子版プランにご加入の方は新規の登録は不要です)。
講師 Ryo Ohkawara
1995年、北海道生まれ。札幌・ニューヨークにて写真家に師事した後、独立。シネマカメラによるムービー撮影を主戦場としながら企画・編集・カラーグレーディング等ポジション問わず幅広く携わる。フォトグラファーとしては、スチルライフをメインに活動。2024年、株式会社IAMに参加。DaVinci Resolve Certified Trainerとしても活動している。
Ohkawaraさんが撮影したインタビュー映像
【居住空間学】
SEEALLデザイナー・瀬川誠人のインプットに富んだ多機能な住まい
写真家のアシスタントからシネマトグラファーへ
照明の知識はアシスタント時代に基礎を学び機材に触れながらアップデートしてきた
Ryo Ohkawaraと申します。北海道出身で、写真家のアシスタントとしてキャリアをスタートし、その後はムービーをメインに活動しています。
最初についたカメラマンの師匠がスチル撮影をメインにしながら、テレビ CMの撮影をしていた方だったので、そこからムービーを徐々に始めていった経緯があります。当時は「RED ONE」というシネマカメラが出始めたタイミングで、「EOS 5D Mark II」などでスチルカメラマンも徐々にムービーが撮れるようになってきた時代から今にいたります。2024年にこれまで仕事をしていた仲間と株式会社を立ち上げ、撮影以外にも企画や編集、グレーディングなどを含め、幅広く映像に関わっています。また、ソニーさんの「CREATORS’ CAMP」というイベントなどで講師活動もしています。
照明の知識は、写真家のアシスタントをしているときに叩き込まれた部分が8割です。ムービーと写真ではライトの種類やできることとできないことが違うので、残りの2割は自分で撮るなかでいろいろと新しい機材に触れながら勉強してきました。
作品としては、テレビやWEB CMのような広告映像をメインに、写真を撮ることも多いです。インタビューものでいうと、マガジンハウスさんの映像にここ1年ほど携わらせてもらっていて、そこではミニマムな編成でインタビューの撮影をしています。
今回の記事では、少人数やワンオペの現場でのインタビュー動画におけるライティングや機材の選び方などについて、詳しく解説していきます。
撮影における照明とは?
カメラが重要? レンズが重要?
カメラやレンズも重要だかその場所を照らす明かりのほうが重要
まず、大前提としてどんな照明も太陽に勝つことはできないと僕は考えています。もちろん曇りの日のように、太陽があまり出ていない状態で明るいライトを打った場合は話が別ですが、発色性・光量・硬さ、どれを取っても太陽光をベースとしてすべてが作られていると思っています。
逆に言えば、光さえ良ければいい画は撮れます。つまり、カメラやレンズも重要ですが、それよりもその場所を照らしている明かりのほうが重要なんです。もちろん状況によって、カメラの性能が必要な場面はありますが、そもそも光がなければカメラも目も物を捉えることができません。いい画を撮るためには、その場の光をよくすることや、素敵な光がある場所を見つける能力が必要だと考えています。
ヒントは生活の中にある
「なんかいいな」と思う瞬間がどんな照明で照らされているのかを覚える
そもそも光がなければ映像が映らないため、結果としてライティングが必要になります。ライティングとは、機材を使ったものに限らず、太陽をコントロールすることも手段のひとつです。僕はライティングをする上で、そもそもどんな環境で映したいのかを自分の中で明確化していく必要があると思っています。例えば、まっさらなノートに何か絵を描いてと言われたとき、イメージを伝えられないと何を描いていいかもわからないし、どういう色味にしていいかもわかりませんよね。そういったイメージの部分を持つことがまず重要かなと思います。
どうイメージを膨らませていくかですが、日々いろんな場所に行くとき、「なんかいいな」と思う瞬間がどういう照明で照らされているのかを覚えるよう、助手時代によく言われていました。日中であれば晴れているのか曇りなのか、室内であれば窓はどこにあるのか、大きさはどれくらいで、カーテンがかかっているのか、全開なのか、床の色は何色なのかなど、光に影響しているのものの状態を覚えろと最初に言われたんです。
ヒントは生活の中に転がっていて、それを僕らが持っている機材で再現していくことで「いいな」と思える照明が作れるんじゃないかと考えています。
● 人物撮影の場合
勘違いしやすい照明の特性
ライトと被写体の位置関係
Q…
会議室のような部屋で、カメラと被写体の位置が同じかつ、被写体に当たる光量も同じ場合、A・Bどちらのライトのほうが被写体の影は柔らかくなるか?
A…
一見すると、被写体からライトを離したAのほうが影が柔らかくなると思われがちだが、正解はB。
Aのライトを当てた場合(被写体から190cm)
Bのライトを当てた場合(被写体から60cm)
晴天と曇りの影の出方を比べてみるとわかりやすいのですが、曇りだと雲が太陽の光を受けて広がり、被写体に対しての光源面が大きくなるため影は柔らかいです。逆に、晴天だと太陽がはっきりと出て、その分影も硬くなります。また、太陽光による影が硬い原因は圧倒的に被写体との距離が遠いためです。光と被写体との距離が遠くなるほど遠近法によって光源面が小さくなるため、影も硬くなります。逆だと思ってしまう人が多い理由は、被写体から光源を離すことで室内で反射が起きる場合が多く、狙った面ではない部分にも光が回り柔らかく感じるからです。ただ、光質的には光源面が小さいほど硬くなるので、結果的に光源を離したほうが影は硬くなります。
光源面が大きほうが影は柔らかい
では、同じ距離から大きさの違うライトを被写体に当てた場合はどうなるでしょうか。例えば、ライトについている標準のリフレクターは直径20cm程度ですが、これにソフトボックスを使い発光面を90cm程度に広げた場合、同じ距離からライトを当てると後者のほうが影は柔らかくなります。ソフトボックスをつけているから影が柔らかくなるのではなく、被写体に対しての光源面が大きくなるから影が柔らかくなるということを覚えておきましょう。