DJI Avata 2をはじめとする優秀なエントリー機の登場により、盛り上がりを見せるFPVドローンの世界。本講座では、ドローン映像クリエイター兼ディレクターとして活動するRonさんを講師に迎え、通常の空撮ドローンとFPVドローンの違いや、絶景撮影におけるロケ地・カメラワークの決め方、航空法や電波法についての基礎知識など、ドローン撮影における実践的な内容を詳しく解説してもらった。

講師   Ron

ドローン映像クリエイター・映像ディレクター。ドローンで撮影した作品が国内外でタイトルを受賞、近年はドローン撮影だけでなくディレクターとして企画や構成の立案に携わり、チームでひとつの映像作品を生み出すことも多い。ドローンの撮影では躍動感のある映像から繊細な映像まで幅広く手掛け、誰も見たことのない世界の一瞬を捉える。現在は東京を拠点として全国に活動の幅を広げながら、海外にも踏み込んでいる。

Instagram ● https://www.instagram.com/rontworry_drone/

X ● https://twitter.com/RontWorry/







自主制作作品 『AUSTRALIA』

オーストラリアの都市ケアンズにて、FPVドローンで撮影された。広大な風景が魅せる圧倒的スケールの4K映像作品。


自主制作作品 『JAPAN』

FPVドローンを使用し、日本の山々や雪景色、桜や花火など四季折々の日本風景を捉えた4K映像作品。




FPVドローンでの絶景撮影

見慣れた景色でもドローン撮影を行うことでまた違った視点から捉えることができる

映像ディレクターのRonと申します。主にドローンでの映像制作をしていて、撮影だけでなくディレクターとして作品全体の取りまとめなども行なっています。現在は関東の茅ヶ崎に住んでいますが、元々は関西にも住んでいたり、撮影では全国を回ることも多いです。また、今後は海外も視野に入れて活動できればと考えています。

仕事内容の8割ほどはFPVドローンに特化した撮影を行なっています。絶景撮影というと、海外の景色や日本の四季など様々なポイントがありますが、僕らが普段見慣れているような景色もドローンでの撮影を行うことでまた違った視点から捉えることができます。絶景の撮影は過酷な現場が多いですが、そういうところも含めてワクワクする現場で、誰しもが簡単に行くことのできない困難な道だからこそ、その映像には響く何かがあるのではないかと考えています。

今回の記事では、そんなドローンでの絶景撮影をする上での基礎知識や、空撮ドローンとFPVドローンの違い、ロケ地選びや撮影現場でのカメラワークの決め方など、実践的な内容を解説していきます。



FPVドローンとは?

FPVドローンと空撮ドローンの違い

FPVドローンはゴーグルを通してリアルタイムの映像を見ながら操縦できる

FPVとは「First Person View」の略で、FPVドローンとは1人称視点で操縦できるドローンのことを指します。FPVドローン最大の特徴は、ゴーグルを装着してそのゴーグルに映るドローンの映像を見ながら操縦できる点です。これにより、まるで自分がドローンの中に入って飛んでいるかのような感覚を味わうことができます。通常のドローンは、リモコンで操作しながら目視でドローンを確認したりモニターを見ながら操縦しますが、FPVドローンはゴーグルを通してリアルタイムの映像を見ながら直感的に操縦できるのが強みになります。

一方、通常の空撮ドローンは非常に安定した映像を撮影することができます。プロポ(プロポーショナルコントローラー)から手を離してもホバリングで体制を維持してくれたり、安全装置などセンサーの質が高く、障害物があるかどうか、自分が今どこにいるのかなどをドローン自体が判断でき、安全な飛行撮影が可能です。FPVドローンには、基本的にそういった安全装置はなく、操縦者自身が直感的にドローンをコントロールする必要があります。それが難しい部分でもあり、楽しい部分でもあります。

また、バッテリーの容量についても大きく違いがあります。通常の空撮ドローンは20〜60分程度の撮影が可能ですが、FPVドローンは4〜5分程度しか撮影できないものが多いです。山などの過酷な環境での撮影はバッテリーを多く持ち歩けず、アグン山や北アルプスで撮影した際はバッテリーを3本しか持っていけませんでした。ただ、いい映像を撮りたいからこそ「限られた時間内で決めきらなければ」というある種の緊張感やリスクが生まれ、その分撮影を終えたときの感動が非常に大きくなるのはいい点であるとも言えます。



FPVドローンの魅力

FPVドローンは搭載するカメラを自由に選べる点も魅力のひとつ

FPVドローンは急降下や宙返りなど、アクロバティックな飛行が可能で、迫力のある映像を撮ることができます。例えば、映画『トップガン』に出てくるような飛行を再現し、戦闘機のような動きをすることも可能です。

また、屋外だけでなく、屋内での撮影にもFPVドローンは適しています。特に小型のマイクロドローンを使えば、狭い空間でも安全に飛ばすことができますし、搭載するカメラの性能上、空間を広く見せる効果もあるため、狭い場所でも広がりのある映像が撮れるのが魅力です。

また、FPVドローンは搭載するカメラを自由に選べる点も魅力のひとつです。GoProを軽量化して搭載することもできますし、DJIのアクションカメラやInsta360、一眼などを載せることも可能です。これにより、撮影したい映像のスタイルに合わせて最適なカメラを選べるという部分も自由度の高さに繋がるのかなと思います。



FPVドローンの特徴



通常の空撮ドローンの特徴







使用機材の使い分け

ドローンの種類と使用場面

撮りたいスタイルや好み、環境によって機体や設定を変化させる

ドローンの種類と使い分けについてですが、僕はマイクロドローンをはじめ、5インチ、7インチ、シネリフター、DJI空撮機など、計10機のドローン機体を所有しています。基本的には撮りたいスタイルや好み、環境によって機体や設定を変化させ、用途によって使い分けるようにしています。

中でも少し特殊なのは、右画像の『Ninja』というフリースタイルの練習機体で、マイクロドローンのように教室に入っていったり、人の行き交う間を抜けての飛行や、5インチドローンのように急な旋回やトリックも可能です。サイズ的にパワーが足りずアクロバティックな飛行ができない機体が多い中、この機体は小さいながらアクロバティックな飛行もできるため非常に重宝しています。ただ、プロペラガードがないため、どこかにぶつけて傷つけたり、怪我をしてしまうリスクがあるので、開けた場所で飛ばすのがいいですね。

カメラに関しては、機体によって様々な機種を使用していますが、大体はGoProを軽量化したものを載せて撮影しています。シネリフターの場合にはソニーFX30を使用しています。



Ronさんがフリースタイルの練習機として使用している『Ninja Pro2』。


マイクロドローン

使用用途:屋内/屋外から屋内へのワンショット撮影/スポーツ

5インチドローン/7インチドローン

使用用途:絶景/カーレース/アクロバット飛行

シネリフターFPVドローン

使用用途:最高画質での撮影/映画/広い屋外

DJI空撮機

使用用途:絶景/景色/安定感の必要な屋外撮影



自作機の利点

自作機はカスタマイズの自由度が高く自分の好みに合わせた設計が可能

ドローンは市販の物だけでなく、自作することもできます。僕もはんだ付けから始め、パーツを買ってきて組み立てた機体が3機ほどあります。というのも、僕が最初にドローンを始めたときはまだ市販のドローンが少ない時期だったので、海外のクリエイターの映像などを見て「こんな映像をドローンで撮るにはどうすればいいのか」を考えた末、市販のドローンではどうしても難しく、「これは自作するしかない」という考えに至ったのが始まりでした。

自作機はカスタマイズの自由度が高く、自分の好みに合わせた設計が可能です。プロペラを変えるだけで飛行特性が変わったり、バッテリーの容量や出力を調整することで速さやレスポンスも変わるといった、研究できる楽しみがあります。



『DJI Avata 2』の登場

FPVドローンのエントリー機として初心者には間違いない機体

ただ、現在は市販されているドローンも性能が高くなり、自作することは少なくなりました。例えば、最近登場した『DJI Avata 2』は、日本でも電波法の問題をクリアして発売され、FPVドローンのエントリー機としてお勧めの機体です。離着陸が非常に簡単かつ緊急停止ボタンもあり、危険な状況でもボタンを押せばホバリングしてくれたりと、ビギナー向けに入念に作られていることがよくわかります。また、カメラ性能が高く、ゴーグルを通して見る映像も綺麗で、バッテリー容量も最大飛行時間23分と普通の空撮ドローンと同じくらいの容量があります。

初めてFPVをやるという方にとっては間違いない機体なんじゃないかと思います。ただ、それこそ絶景撮影など屋外での風景撮影には非常に優れており重宝しますが、室内での操作に限って言えばマイクロドローンのほうが機体の大きさやカメラワークなども含め自由度が高いと感じる部分はありますね。なので、場面によって使い分けが必要かと思います。




機体を購入する際の注意点

何を撮りたいのかを明確にした上で順を追ってステップアップしていくのがいい

機体を選ぶとき最初にイメージしてほしいのは、「映像目線で考えたときに何を撮りたいのか」ということです。例えば、地面スレスレを撮影する場合や、人の足元を飛び回るような撮影をしたい場合はマイクロドローンが適しているし、スピード感のある車の撮影をしたい場合や、室内などの無機質な空間を広く撮影したい場合は5インチ機のほうが向いています。このように、どんな映像を撮りたいのか、どんなシーンで使用するのかを具体的に考えることで適切な機体を選ぶことができます。

ただ、注意点として最初から5インチ機を購入して使うのは、操縦が難しくリスクが高いので、何を撮りたいのかを明確にした上で、順を追ってステップアップしていくのがいいと思いますね。最初は小さな練習機から始めて、操縦に慣れてきたら5インチ機にするのが無難です。例えば、先のDJI Avata 2のような機体はホバリングもしてくれて、操作性に慣れるための練習機として充分に使えるので初めての方にもお勧めです。

また、FPVドローンを購入する際には、基本的に日本の代理店で買うことをお勧めします。僕が始めた頃は日本にドローンのショップ自体あまりなかったのですが、今では多くのドローン機体を日本で購入できます。日本の代理店で購入すると、サポートを受けやすく何か困ったときに相談しに行ける場所があるというのも大きいですね。



Ronさんがお勧めするドローン販売店

GOLD STONE

関東にあるドローン専門ショップ。最新のドローンや周辺機器を豊富に揃え、初心者からプロまで満足できる。

HP:https://goldstonejapan.cart.fc2.com/


ヘリモンスター

ドローンとRCヘリを取り扱うオンラインショップ。高性能なドローンと豊富なアクセサリーを取り扱う専門店。

HP:https://helimonster.jp/


KigaruDrone

大阪府堺市にあるドローンサロン。マイクロドローンの練習場『フライトベース堺』も展開している。

HP:https://shop.kigarudrone.com/


EP Models

初心者から経験者まで、マイクロドローンについて気軽に相談できるショップ。関西で講習会も実施している。

HP:https://shop.ep-models.com/