飛行に必要な基礎知識

電波法について

ゴーグルに映像を伝送するための電波使用に別途資格が必要になる

電波法はFPVドローンを操作するにあたって、避けては通れない重要な部分です。航空法と並んでドローンの規制に絡んでおり、特に電波の使用に関して制約があります。FPVドローンの映像は伝送なので、ゴーグルやリモコンにリアルタイムで映像を送るために電波を使用しています。その電波の周波数帯によって、申請や許可が必要かどうかが変わります。一般的な空撮ドローンは、日本で許可されている2.4GHz帯や920MHz帯を使用しており、これらの周波数帯を使う場合は特別な申請なしに飛ばすことができます。しかし、FPVドローンの場合、ゴーグルに映像を送るために5GHz帯の電波を使用しており、この周波数帯を使用するために別途資格が必要になります。




航空法について

一定の条件下でドローンを飛行させる場合国土交通省から許可・承認が必要になる

航空法は、FPVや一般のドローンに関わらず、ドローンを持つ全ての人に関わってくる重要な内容になります。基本的に、空港周辺、高度150m以上の空域、防衛施設や原子力施設の上空、重要文化財の上空といった禁止区域で飛ばしてはいけませんといった内容です。

さらに、夜間飛行、目視外飛行、30m未満の飛行、イベント上空飛行、危険物輸送、物件投下といった一定の条件下でドローンを飛行させる場合には、国土交通省から許可・承認をもらう必要があります。

出典:国土交通省WEBより




飛行に必要な資格・免許

全てをいつでも出せる状態にしておくのがドローンを扱う方にとって理想の在り方

2022年6月20日から無人航空機の免許制と機体登録が義務化されました。これによって、100グラム以上の機体にはリモートIDや登録記号を付ける必要があり、それをつけていないと航空法違反になってしまうという内容です。ただし、それより前に登録を行なった機体に関しては、義務化以降も3年間のリモートID免除が認められています。また、通常の市販ドローンにはリモートID対応のものが増えていますが、自作機の場合はリモートIDの機器を自分で購入して取り付ける義務があります。自作機ユーザーにとっては、ちょっとした重さが機体の操作性に影響するため、その辺りを考慮しながら組み立てる必要があります。

リモートIDが必要な理由は、飛ばしてはいけない場所でドローンを飛ばした人がいた場合、そのドローンの持ち主を特定したり、墜落事故の際に誰のドローンかを特定するために必要なのかなと思いますね。これによって自分のリスク回避にもなり安全管理もしやすくなるので、持っているドローンに関しては早めにやっておいたほうがいいと思います。ドローンを仕事で使う場合、登録ID、免許、資格、許可証などの提示を当たり前のように求められたりもするので、全て持っておいていつでも出せる状態にしておくのがドローンを扱う方にとっては理想の在り方なのかなと思います。

また、電波法に関連する資格には、アマチュア無線と陸上特殊無線があります。これらの資格を持つことで無線局の免許を発行してもらえ、開局申請を行うことができ、「○○帯の電波を使いたいです」といった申請を出すことができます。なので、FPVの自作機でこういったことを全てやるとなると、まず該当する国家資格を取った上で、無線局免許を取得し、その免許を元に開局申請をするという流れになります。手間のかかる手続きなどを自分で全てやる必要はないので、行政書士の方に依頼してしまうのもひとつの手かなと思います。



飛行に必要な申請書

申請書を提出することで安心してドローンを飛ばすことができる

過去に僕がどのような場面で申請書を書かなければならなかったのかを振り返ってみると、主に以下の4パターンになります。

まずは、全国包括申請。これを申請すれば、禁止エリア以外の場所なら全国どこへでもドローンを飛ばせるという許可証になります。全国包括申請はDIPS(国土交通省への飛行許可・承認申請をオンラインで行うことができる申請システム)を通じて申請ができます。

次に、土地所有者や観光地の申請。これは重要文化財や神社などの所有者や管理者に対する申請です。そういった場所で撮影するには、管理者にコンタクトを取ってから飛行許可を得る必要があり、それに伴って管理者側が用意した書類を提出することが多いです。加えて、空港・自衛隊申請。空港や自衛隊での飛行についてはかなりシビアなので、あらかじめ用意された形式の書類を提出してから許可をもらうという流れになります。

最後に、警察申請。特に、ドローン飛行で最も多い道路上での飛行については、道路交通法の管轄下になるため警察に申請する必要が生じます。一見、手続きは大変そうに見えますが、書類を出すだけなので慣れてしまえばスムーズに進むようになります。こういった申請書を提出することで、多くの場所で安心してドローンを飛ばすことができるようになります。



ドローン飛行許可申請書の例

『全国包括申請書』を提出することで、航空局より場所を特定しない1年間の無人航空機飛行に係る許可・承認が下りる。ただし、空港など別途申請が必要な場所もある。




機体別飛行に関する手続き一覧

『無人航空機操縦者技能証明』は取得しなくても飛行できるが、取得することで一定の条件下でドローンを飛行させるための申請が一部不要になったり、免許を求められる現場での仕事ができるなど、ドローンを仕事にしている方にとってはメリットも多い。


資格・免許

● 無人航空機操縦者技能証明(航空法)

無人航空機を飛行させるのに必要な技能(知識及び能力)を有することを証明する国家資格制度。一等無人航空機操縦士、二等無人航空機操縦士がある。



● 無線局免許(電波法)

開局申請に必要な免許。自作機の場合は総務省に機体の電波を使う許可申請をする必要がある。



申請

● 撮影場所や方法に応じて申請が必要

例 ・全国包括申請(禁止エリア以外の場所なら全国どこへでもドローンを飛ばせるという許可証)

  ・土地所有者や観光地の申請

  ・空港・自衛隊への申請

  ・警察への申請(道路上での飛行をする場合)

  ・国土交通省への申請(夜間飛行、目視外飛行、30m未満の飛行など、一定の条件下でドローンを飛行させる場合)

● ドローン機体登録制度

  …重量100g以上のドローン機体は、2022年6月20日より機体登録が義務化



電波法に関するフロー

ドローンに搭載されている無線設備が技術基準適合証明(技適)を受けていることが必要。技適マークの付いた無線機器であれば日本国内での使用が可能。


● 第四級アマチュア無線技士の資格

 ・FPVドローンなど、5.8GHz帯の周波数帯ドローンを使う場合

 ・趣味など個人の範囲で使う場合

● 第三級陸上特殊無線技士の資格

 ・産業用ドローンなど、5.7GHz帯の周波数帯ドローンを使う場合

 ・営利目的として仕事で使う場合


● 無線従事者の免許

 ・無線局を開局するために必要

 ・無線技士の資格を取得すると免許を取得できる








ロケ地・カメラワークの決定方法

ロケ地の選び方

ロケ地候補にGoogle Mapでピンを立て 飛行ルートをシミュレーションする

ロケ地選びとカメラワークはドローン撮影において重要なポイントですが、それらを決める前にまずは作品全体のストーリーや映像の目的を考えることが大切です。作品全体がどういうものになるのかを把握し、FPVドローンの映像が間に入るのか、FPVドローンの映像だけで全てを作るのかなど、どんな使い方で作品を仕上げていきたいのかを考えた上で、ロケ地やカメラワークを決めていくことが大事だと思います。

何を伝えたいのかが明確になったら、YouTubeやInstagram、Red(中国のSNS)などでイメージに合うロケ地やリファレンスをリサーチしていきます。中国のSNSをリサーチに使う理由は、人口が多い分アイデアが多いのと、ドローンのシェア率が最も高くドローンに対して最先端を走っている国だからです。

リサーチした結果をもとに、ロケ地候補をGoogle Mapで確認してから、現地へ行って飛行ルートをシミュレーションしたり、電波が届くかどうかなどを確認します。頭の中で考えたことと実際にドローンを飛ばした感覚は大分違うので、入念なシミュレーションをするようにしています。特に、FPVでワンカット撮影する場合は、無駄な動きやカクつきがあるともったいないんですよね。そういった部分を極力滑らかにして、見せたいものを見せるためのルートをシミュレーションした上で、自分の直感とセンスを組み合わせて撮影で飛ばすのが面白いんです。

作品全体のストーリーを考える

作品のストーリー、映像の目的を考え、作品全体をどのように仕上げたいのかを最初に考える。

『SAVE THE CATの法則』は、脚本家の思想やどんなストーリー性の作品が世の中に受け入れられるのかなどが言語化されている希少な書籍。「この本を1冊読むだけでも、だいぶストーリー作りの感覚が掴めるかと思います」とRonさん。



リファレンスを探す

InstagramやYouTubeなどから、自分の気に入った作品やチャレンジしたい作品を保存し、映像に使われている技法や、どのようなロケーション撮影がされているのかなどをリサーチする。

Ronさんがリファレンスとしてよく視聴するELLIS VAN JASON氏のYouTube。FPVドローンで世界中の絶景を撮影している。



Google Mapでロケーション確認

ロケ地候補にGoogle Mapでピンを立て、バーチャル上でロケーションを確認する。



現場でのシミュレーション

現場へ行き、電波が届くのか、どんなルートで飛行させるのかなど入念なシミュレーションを行う。




カメラワークのポイント

FPVドローンを使って自分だけの唯一無二な絶景撮影をしよう

カメラワークの決め方については、5つのポイントを覚えておけばいいかと思います。まずは、見つけたリファレンスがベストなのかを自分に問いかけましょう。それがベストだと自分の中で思い込んでしまうこと自体がもったいないので、そこに自分の感性をプラスして新たなカメラワークに作り変えていくことを考えましょう。

次に、違和感にならない飛行ルートを探すことです。例えば、撮りたい被写体があったとして、それを中心から無理にズラすのも違和感ですし、被写体を撮りたいからといって無理矢理飛行するのも違います。そういった違和感のない飛行ルートを探ることもカメラワークを決める上では大事なことです。

また、自分の感性を活かした遊べるルートを作ったり、アクロバティックな背面飛行や急降下など、自分の得意なことを掛け合わせることでも面白いカメラワークは生まれます。

そして、その場所だからこそできる一工夫のアイデアを取り入れましょう。その場所に行って自分が思いついたことを実際にやってみることで、その現場でしかできないようなカメラワークに繋がります。

FPVドローンは特殊な機体なので、ぜひ本記事で伝えた内容を実践していただいて、自分だけの唯一無二な絶景撮影をしてもらえたらと思います。






ドローンシミュレーター実演

FPVドローンの練習方法

練習を続けるうちにドローンの操縦に慣れてくる

いきなり実機を飛ばすのはハードルが高いという方は、ドローンシミュレーターを使って練習してみましょう。シミュレーターでの練習は、まず真っすぐ飛ばせるようになることが最初の課題です。次に、スティックをどれだけ倒したらどれだけの飛行ができるかといった指の感覚を養い、真っすぐ飛ばせるようになったら左右移動や旋回の感覚を掴みます。これは屋外での実機練習も同じで、例えば木を中心に円を描くように回るなど、被写体が中心から外れないよう旋回の練習をしましょう。こういった練習を続けるうちに操縦にも慣れてくるかと思います。



 『VelociDrone』とは?

VelociDroneは実機を選択できるドローンシミュレーター。Windows / Macどちらにも対応。

HP:https://velocidrone.co.uk/

ここでは、Ronさんが普段から使い慣れている5インチ機体のドローンを選択した。


実際のドローンの動きや反応を忠実に再現する物理エンジンを搭載しており、現実世界の飛行体験に非常に近いシミュレーションが可能。


プロポは普段からドローン飛行に使用しているRADiOMASTERのBOXERシリーズを使用。実機を使うことで操縦の感覚も掴みやすい。





練習する際のポイント

被写体を中心に円を描くように旋回してみよう

ドローンが真っすぐ飛ばせるようになったら旋回や左右移動の感覚を掴もう。木を中心にして綺麗な円を描きながら旋回し続けるのがお勧めの練習方法。左の画像は木が左側にズレてしまっている。右の画像のように常に被写体を中心に入れながら旋回できるように練習しよう。


Ronさんのドローンシミュレーターでの実演は、QRコードの動画から確認ができる。実践的な練習方法やテクニックを披露してくれたので、ぜひチェックしてみよう。