デジタルメディアコンテンツの世界では、短期間で映像制作を行う必要のある現場が多く、緻密な工程管理や、納期に間に合わせるための業務効率化は不可欠な要素と言える。本記事では、コンテンツ制作業務に特化した低コストの統合ワークフローを構築した、DENDEN株式会社の清本俊彦さんを講師に招き、収録から編集までを一気通貫で行える画期的なワークフローの導入方法について解説してもらった。

講師 清本俊彦 Toshihiko Kiyomoto

コンサルタント / エンジニア / プロデューサー

制作会社、コンサルティング会社、広告代理店を経て、2021年にデジタルコンテンツ領域専門のコンサルティング会社「DENDEN株式会社」を設立。株主総会や記者会見、企業イベントの配信から、店舗のデジタルサイネージ、デジタル広告動画の制作まで、幅広いジャンルでデジタルメディア向けの映像制作を手がけている。

WEB ● https://denden.live/







業界特化型コンサルティング会社「DENDEN」とは?

映像業界の働き方改革に繋がる統合ワークフローを提供している

DENDEN株式会社の清本俊彦と申します。私はCMの制作会社やコンサルティング会社、WEB制作会社、広告代理店などいろんなところを転々として、2021年にデジタルコンテンツ領域専門、つまり業界特化型のコンサルティング会社を立ち上げました。例えば、放送局やポスプロにて「新しい技術を導入したいけれど、どうすればいいかわからない」というときに、「こういう機材がいいですよ」「こんなワークフローがいいですよ」といったご提案をさせていただいています。

また、内製化がどうしてもできないというクライアントに対しては、弊社の動画制作サービスをご利用いただいており、映像制作会社としての側面も持っています。最近では、株主総会や企業の記者会見、大型カンファレンスによるウェビナーの大量収録、デジタルサイネージの映像など、さまざまなデジタルコンテンツの動画を制作しています。

そして、2〜3年前から本記事の題材でもあるコンテンツ制作業務を効率化するための統合ワークフローを組んでおり、撮影・編集、事務作業やファイル共有、クリエイターへの報酬支払いなど、さまざまなものが統合された上で運用のできるワークフローを提供しています。

今回の記事では、最新の制作機材とクラウド技術を活用して、収録業務から動画の編集業務までを徹底的に効率化し、さらに低コスト化を実現した上で生産性を向上させ、映像業界の働き方改革に繋がる統合ワークフローを駆使した動画制作術を解説していきます。



DENDENは主に4つの事業領域でクライアントのビジネスとクリエイターの活動を支援している。






コンテンツ制作業界の課題とは?

課題は制作現場の業務量増加

「動画コンテンツ」の需要が増加し続けるとともに制作現場の「業務量」も増加し続ける。


【業界の課題】

❶ 労働集約型の業務で「長時間労働」が常態化し「業界を離れる人」が増える。

❷ 元請業者は営業中心で「制作技術と知見」を「下請業者」に依存している。

❸ 工数積算による見積算定の文化がなく、見積時の費用と実際の工数に不一致が起きる。

❹ デジタル技術の導入が遅れており、アナログな業務と品質に直結しない事務作業が多い。

❺ 労働基準法や下請法、フリーランス新法に抵触するプロジェクト管理を行なっている。




映像業界における非効率な働き方を直すシステムを作ることが重要

現在、動画コンテンツの需要はどんどん上がってきています。ただ、今でこそ生成AIでの制作などが話題ですが、大半の動画コンテンツにはやはり人の力が必要で、どんなに技術が進展していっても人の手で作らなければいけない部分がどうしてもあります。そういった中で現場のやり方が変わらなければ、アナログな作業や働く時間は多いのに、現場はいつまでも編集作業をやっていて、深夜残業してタクシーで帰るというような滑稽なことになってしまいます。とはいえ、新しい技術や打開するための方法論がなければ意味がないわけですよね。なので、弊社としては、働き方改革を行うなどではなく、労働時間が実際に2〜3時間減るような道具を持って行き、本当に現場の時間を減らすような根本的な部分に取り組んでいます。例えば、カット編集やカラコレ、撮影などのクリエイティブな業務以外の部分に、ファイル共有やお客様への修正対応などを含む膨大な事務作業があって、その時間をどうにか大幅削減できないかと思っていたんです。そういった映像業界における非効率な働き方を見直すシステムを作ることがDENDENのミッションにもなっています。

一般的な制作会社の場合、長時間の撮影・収録が終わった後に1TB以上などの容量の大きな素材をアップロードしなければならないケースが多々あります。すると、ファイル共有作業のために誰かしらが長時間待機することとなり、その分の人件費も余計にかかってしまいますよね。もし、この部分をクラウドサービスを活用した最新のファイル共有システムで自動化することができれば、無駄な長時間拘束も解消され、さらに浮いた人件費で映像制作コストも下げられ、作品の本数を増やしたり、リッチな演出などを浮いたコストで実現できるようになります。



●「品質に直結しない事務作業」の稼働時間に対する解決策




解決策❶

サービスの標準化で見積と準備作業を簡素化



解決策❷

収録現場と機材の標準化で制作費を最適化



解決策❸

最新のファイル共有システムで業務を自動化



解決策❹

編集作業の水平分業化で適正単価を実現






クラウドシステムで業務を自動化するには

映像業界向け各社クラウドサービスの比較

DENDENは撮影システムからネットワークストレージまで、全工程にクラウド対応しているブラックマジックデザインのサービスを選択している。




ツールを選定する際の大事なポイント

ツール間の連携ができていなければ無駄な作業時間は結局減らない

クラウドサービスというと、Googleドライブなどの日本や海外のどこかにあるデータセンターに素材を保管して、管理ができるサービスをイメージされる方が多いかと思いますが、撮影システムや収録システムなどもクラウドに対応している場合、撮影に使用したカメラがインターネットに繋がるようになっています。例えば、ブラックマジックデザインのHyperDeckやATOMOSのシステムを使えば、カメラで収録したファイルをリアルタイムでネットワークストレージにアップロードでき、自動でPCと同期させることが可能です。逆に、最新のカメラや高性能なPCを購入し、編集をスムーズに行える環境が整っていても、ツール間の連携ができていなければ、アナログで作業をする無駄な部分の時間は結局減らないんです。弊社では、可能な限り全てのシステムが連動してデータ連携ができたり、録画ボタンをひとつ押すだけで全てが動くようなワークフローを研究し、その運用能力をいかに現場目線で獲得するかということを最も大事にしています。



【最新のクラウド技術や機材を導入しても、連携ができなければ作業時間は変わらない】