iPhone 16 Proシリーズもリリースされ、iPhoneの動画性能は進化をしているが、本誌読者にとって一番衝撃だったのはApple Logの登場ではないだろうか?そこから映像制作で使えるようになったと言っても過言ではない。仕事や作品制作でiPhoneを使いこなしているtakumifoneさんがご自身のシステムを紹介する。

講師 takumifone 山﨑拓実

iPhoneographer、ビデオグラファー、ライター、ディレクター、エディター(日本語・英語両対応)。企業のプロモーション映像やミュージックビデオなどをiPhoneで撮影し、iPhoneで撮影したようには見えない映像を制作することが主なお仕事。他にも、iPhoneでいかにシネマカメラのような映像を制作するかのセッティングに関するセミナーや記事執筆なども行なっている。

Webサイト:takumifone.com

Instagram/X:@takumifone






iPhoneはシネマカメラ入門機として最適な存在になった

Apple LogとBlackmagic Cameraの革命

本業としてはギズモード・ジャパンというWEBメディアのライターですが、iPhoneographerを名乗り、企業のプロモーション映像やミュージックビデオをiPhoneで制作しています。最近では本誌を始め、iPhoneでの映像制作についてセミナーや記事執筆することが増えてきました。

そのきっかけは、iPhone 15 Pro/Pro Maxから採用されたApple Log、そしてBlackmagic Cameraアプリだと思います。これをきっかけに急速にクオリティが上がり、映像制作で使えるという機運が高まりました。

それまでもLog撮影できるアプリはありましたが、Logは本来センサーに合わせて開発されるべきもので、アップル純正がやってきたのがポイントです。しかもシネマカメラを出しているブラックマジックデザインとおそらく協業してApple Logに対応したカメラアプリにより、シネマカメラと同等のセッティングが可能になり、Logからのワークフローを組めるようになりました。

iPhoneというと取材カメラ、メイキング用、視聴者目線のカメラ、小型さを生かした特殊な用途といった考えはありますが、映像制作をスタートする入門カメラとしても最適だと思います。





takumifoneさんの作例は以下のWEBサイトから見られる。縦型のInstagramリールだけでなく、通常の横位置の解説動画も。ページ上の画像も動画からの切り出し。








iPhoneのApple Logを一眼と比較してみる

iPhone

iPhone 15 Pro Max 24mm、 5600K、 F1.8  ISO 55




iPhone 15 Pro Max 24mm、 5600K、 F1.8  ISO 5280




iPhone 15 Pro MaxはApple Logで4K ProRes 422HQ、ソニーα7S IIIは、タムロンの28mmレンズでS-Log3で4K収録し、DaVinci Resolve 19で、p.68のようにFilm Look CreatorでRec.709に変換したものを比較した。協力:Yuto’s Film





デジタル一眼

α7S III 28mm、 5600K、 F2.8  ISO 200




α7S III 28mm、  5600K、F2.8   ISO 10000




日中ではα7S IIIと遜色のない描写を見せる

iPhone 15 Pro MaxのApple Logとα7S IIIのS-Log3と比較してみました。当然センサーサイズが違いますので、ボケ感は異なります。iPhoneのほうはパンフォーカス気味で、背景までピントが合っているように見えますが、フルサイズセンサーのα7S IIIのほうは、ややアウトフォーカスになっています。フォーカスを合わせた人物のほうで比較してみると、充分な光量のある環境では、どちらがどちらと当てられないかもしれません。従来のiPhoneの映像であれば輪郭強調が強かったので、ぱっと見て分かったはずですが、Apple LogでLogの階調になっているだけでなく、輪郭強調もOFFになっているため、スマホムービーらしい強調感はありません。

一方で夜間でISO感度を大きく上げる必要がある状況になるとさすがに差が開きます。左の建物の壁などは、iPhoneのほうはかなりざらざらとノイズが出ています。これはフィルムグレインを足して紛れるというレベルではありませんでした。やはり、夜間は従来の映像制作同様にライティングをする必要があるということです。

比較してみて驚いたのは、iPhoneのApple Logとソニーのα7SIIIのS-Log3からRec.709に変換しただけで、かなり近いルックになったことです。後述しますが、DaVinci ResolveのFilm Look Creatorで変換することで近づいているのもしれませんが、さらにカラコレで詰めていけばもっと両者を近づけられそうです。いずれにしても、Film Look Creaotorを使うことで、異なるカメラのLogでも色の調整はやりやすくなるかもしれません。