さまざまな映像作品のモーショングラフィックデザインを手がけるスタジオ・EDP graphic works。デザインとディレクションを混ぜ合わせながら映像・空間演出を行なう同スタジオ代表の加藤貴大さんが手がけた2作品の例にしながら、「モーショングラフィックデザインの“翻訳力”」をテーマにモーショングラフィック表現で“パッケージ力”を高めるためのコツなども解説してもらった。
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講師 加藤貴大 Kidai Kato
1989年生まれ、愛知県出身。EDP graphic works代表。ブランディングやインスタレーションを主に、デザインとディレクションを混ぜ合わせながら映像演出を行う。展示映像やサイネージなど、媒体にとらわれることなく空間の演出にも取り組んでいる。
<Award>D&AD Award 2021 Yellow Pencil、Design/Branding/Motion [47 Internship]
Form ● https://www.edp.jp/contact/
X ● https://x.com/edpgraphicworks
EDP graphic works

ブランディング、CI、広告、映画、ドラマ、ミュージックビデオなどのモーショングラフィックデザインを手がけるデザインスタジオ。モーショングラフィックデザイン、アートディレクション、グラフィックデザインなどのデザイン開発を中心に、社員のアーティスト活動なども応援している。また、2024年11月には、20年以上携わってきたモーショングラフィックデザインの地位向上を鑑み、モーションを視覚だけでなく、実体験できる展示「うごきのカタチ – La forme du mouvement」をフランス・パリで開催した。
デザイン主導でさまざまなジャンルの映像を手がける
「モーショングラフィックス」ではなく「モーショングラフィックデザイン」
EDP graphic works(以下、EDP)というモーショングラフィックデザイン会社の加藤貴大です。僕自身はブランディングムービーや空間系のインスタレーションの案件が多めで、会社全体としては広告がメインですがMVもやるし、実写のディレクターもいるので、デザイン主導で映像全般をやっています。
過去の作品はホームページを見ていただければ分かると思いますが、おそらくみなさんが見たことがあるところだと、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』のOP映像や、ひとつ前の『情熱大陸』のOP映像あたりですね。あとは3Dでギンザ・グラフィック・ギャラリーの展示の映像をやっていたり、アパレル系のルックムービーをやっていたり…と、実写・3D問わず多岐にわたって作品を作っています。
会社の規模としては現在40名ほど在籍しているので、モーショングラフィックデザインの会社としては多めかなと思います。会社内に10チーム、そのチームにリーダーを含めて3〜5人がいるという形です。ほかの会社さんの規模は知らないのですが、おそらく国内ではかなり多いほうかな、と。
ただ映像を作っているだけでは会社としてまとまりがなくなるので、会社の指針は定めています。それが「Motion Graphic Design for human life.」というステートメントです。EDPは普段映像を作っているわけですが、なんのために作っているのか、ということをあらかじめ決めておきたかったんです。
僕らは“人々の生活”のために映像を作っています。映像を作ったり、見たりすることで気分が明るくなったり、楽しくなったり、ワクワクしたりしてほしい…そんな想いを込めてこのステートメントを設定して、このゴールを目指して全員で意思疎通しながらやっていますね。
あと、EDPのオフィスは表参道にあるんですが、奥のスペースが打ち合わせや作業ができる場所、手前にはギャラリースペース「ANewFace」を設けていて、ここでの展示をプロデュースする形でギャラリー運営もやっています。
僕たちは自分たちの仕事をモーショングラフィックスではなく、モーショングラフィック“デザイン”と言うようにしています。それはデザインの部分も含めて仕事にしているという意味を込めて、です。
少しややこしいんですが、モーショングラフィックデザインよりもさらに上位概念として、モーションデザインというものがあると思います。それはグラフィックに関わらず、人の動きだったり、空間演出だったりも含んでいて、僕らはモーションデザインのほうにも目を向けていきたい…という想いもあります。
なので、PCやディスプレイの中だけではなく、展示やギャラリーのようなリアル世界での活動の場も作っている最中です。自分たちでも手を広げすぎている気がするんですけど(笑)、いまがんばって模索しているところです。
モーショングラフィックデザインの“翻訳力”
EDP graphic worksが意識していること

“人々の生活”のために映像を作る
EDPが掲げるのが「Motion Graphic Design for human life.」というステートメント。“デザインを動かす”ことで、“人々の心を動かす”ことを使命に、心が動くデザインを日々提案・制作している。また、2次元のグラフィックや映像だけに限定しないモーションデザインも範疇に入れているのも特徴。左写真はEDPのオフィスに併設されたギャラリースペース「ANewFace」で、EDPがこのギャラリーを運営しており、アパレル関連の展示などで利用されている。
モーショングラファーとは翻訳して“画解き”をする人
クライアントとクリエイターの想いを翻訳できる
モーショングラフィックデザインは何に優れているのか、よく考えるんです。僕はモーショングラフィックデザインが力を発揮するポイントは“翻訳力”だと思っていて、これはまだ完全に言語化できていないんですが、要するにクライアントとクリエイターを繋ぐ役割を担っている、ということですね。
何かの案件を動かすとき、クライアントは「こういうことが言いたい」と思っています。訴求ポイントや届けるターゲットのことを考えているわけです。一方、クリエイターは「こういうものが作りたい」と思っています。基本的には自分が作りたいもの、表現したいものを作りたい、と。もちろん両者の間に代理店やプロダクションが入っている場合、どちらかを代弁したり、中立にいたりして複雑化していますが、大雑把に言うと、こんな二極化がある、と。
モーショングラフィックデザインはそんな両者の間に存在しているはずです。映像なので時間軸がある、デザインがある、モーション=動きの種類がある、音楽もある…ということで、いろんな要素が詰まっています。なので、クライアントの「こういうことが言いたい」、クリエイターの「こういうものが作りたい」というボールを渡されたときに対応できる柔軟性があると思うんです。
たとえば、デザインの部分ではクリエイターに寄り添いながら、モーションの部分でクライアントの要望を叶えるようにしよう、という形ですね。すべてが満額回答ではありませんが、どちらの想いも翻訳できる幅がすごく広いのが、モーショングラフィックデザインなのかな、と考えています。

作例解説①
中外鉱業 TVCM『想いをカタチに』篇
ダイナミックなタイポグラフィだった当初の代理店制作の企画コンテ

どこまで“画解き”するかのバランス
モーショングラファーって、すごく簡潔に言うと、翻訳して“画解き”をする人だと考えています。ある想いを受け取って、それを解釈して、視覚化する、ということですね。
このバランスがとても大切で、僕はクライアントとお話しするときに、よく「画解きの具合はこれぐらいでいきますね」と言います。伝えたいメッセージをすべて画解きしてしまうと、いい作品にならないことが多いからです。
たとえば、リンゴを食べている人というお題で、人のピクトグラムを描いてリンゴを齧っている絵を作るのか、もしくはアップルのロゴのように齧られたリンゴの絵だけを提示するのか。これによって画解きのレベルが変わってきます。
すべてを説明的にするのは分かりやすいけど直球すぎる、アイコンだけはインパクトがあるけど抽象的すぎる…いろんな案件でこのせめぎ合いがあるはずですが、このグラデーションのどこを突いて提案するのかが、ポイントになってきますね。